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Enptiness  作者: F!rsted・X
1/20

#1〜#4のまとめ

「どうしてエリは...中心を目指しているの...?」


そう問う少年。そして答える少女。




「この世界の真理は、中心にある。でもそれだけじゃない。私の...大切な人が、待っているはずだから...」


そして少女は思い出す。いつからこう思うようになったのだろう、と。


そして、少女は過去を辿り始めた。


























































































「ここは....どこ?」




目を開けると、そこには薄く霧が立ち込める世界が広がっていた。


知らない景色を目の当たりにし様々な疑問が、頭に溜まっていく。


まるで堆積する泥のように。


それに比例して、私の不安も大きくなっていった。




「誰かー...誰かいませんかー...」


混乱する頭をよそに、口は反射的に助けを求める。


辺りを見回すと、先程の助けが届いたのか、謎の人物が近寄ってくる。


???「あ...あの...大丈夫ですか?」




近づいてきた人物は、身長は150cm程の男の子で、若く見えた。


???「あ...あの...大丈夫...ですか...? もしかして...怪我してるとか...?」


私からの返答がないのが気にかかったのか、彼は再び声をかけてくれた。


「いや怪我は...ない。大丈夫」




その答えを聞いて安心したのか、彼は息を漏らす。


「ね。質問していい?」


???「...?....いいよ?」


「それなら......君って、名前なんて言うの?」




彼は意外な質問に少し驚きながら答える。


???「僕?僕の名前は...ユウリ。」


彼は、おどおどしながらも答える。


「ユウリ...ね。ユウリって呼んでもいいかな?」




ユウリ「う...うん」


少しの沈黙の後、私は軽い質問を投げかける。


「ね。ユウリ、この世界に来たのいつ?」


すると、彼は目を閉じ、考え込んでから答えた。




ユウリ「んと...多分...3年前くらいかな」


「3年前!?」


驚いた。こんなに小さな少年が3年もこの世界にいたというのだ。


ユウリ「ほら...これ見て」




そう言うと彼は時計のようなものを出してきた。枠は金色で、少し錆びている部分もあったが、とても神秘的に見えた。


そして真ん中にあるメーターには「107224536」と書かれていた。


ユウリ「分かりづらいけど...これって僕がこの世界に来てからの秒数なの。」




そう言うと、彼は続けて説明する。


ユウリ「1年って31536000秒だから...ざっと3.4年かな。」


その桁の数字の暗算をその速度でできるとは...私よりも遥かに賢いようだ。


ユウリ「あの...あなたの名前も...聞かせて欲しいな。」




「私?私は.....えーと。」


頭には記憶がある。だがモヤがかかったように思い出せない。少し頭痛がする。


ユウリ「..............」


だがここで教えないと相手が困ると思い、嘘でも答えることにした。




「私の名前は...エリ。」


ユウリ「エリ...いい名前だね。......エリちゃん、って呼んでもいいかな...?」


エリ「いいよ。」


そう言うと彼は恥ずかしそうに言う。




ユウリ「え......エリ...ちゃん?」


言い終わると、さらに恥ずかしそうに俯く。


私は彼を見てすこし口角が上がってしまったが、すぐに真剣な顔に戻す。


エリ「あのね。私、気づいたらここにいたの。だから、この世界について教えてくれないかな」


ユウリは少し沈黙した後ゆっくりと話し始めた。


ユウリ「この世界は...『空虚の世界』と言われているんだ。」


エリ「空虚の世界...?」


ユウリ「そう。そして...この世界。とても大きくて、果てが見つかってないんだ。僕たちが.....今いるところも、世界の中心から20,000,000km離れている。それで___」




そして急に、彼はとても恥ずかしそうにした。


エリ「ど...どうしたの?」


ユウリ「え...えとね.......それで........この世界の人たちって....その.....せ....生殖器が.....ないんだ。」




彼は精一杯振り絞って言う。


ユリ「つ....つまり...この世界では人が生まれることはないって事ね。」


ユウリ「そ...そう!...そういうこと...」


彼は少し明るく答えた。




そして彼はコホンと咳き込み、改まって話し始めた。


ユウリ「そして、この世界には、『創造神』がいる。」


真剣な雰囲気に、思わず息を飲む。


ユウリ「名前は........エル。」




その名前を聞いた刹那、私の頭の中の南京錠が、解かれていくように"思い出す"。


エル.....エルは...!!エルは...............!!!


冷や汗が止まらず、過呼吸になる。


頭痛が酷くなり、吐き気もしてくる。


苦しい...苦しい......


そして立ちくらみがし、その場に倒れ込む。


そして意識を失った。






































































































































































目を開けると、そこにはユウリがいて、私の顔を心配そうに覗きこんでいた。


頭は...柔らかいものに体重を預けている。


こんなに幼い少年に覗かれているということは、膝枕をされているのだろう。


ユウリ「大丈夫....エリちゃん....?」




ユウリが心配そうに伺ってくる。


ユウリ「大丈夫...じゃないよね。リメンバーシックの症状結構苦しいし...」


エリ「心配かけちゃってごめんね。もうなんともないから平気だよ。」


多分返事をしないと、彼は心配でいっぱいになっていただろう。




そうするとユウリは話し始めた。


ユウリ「いや...これに関しては...僕が悪いんだ。この世界の特徴を教えてなかったから。」


申し訳なさそうだった顔から一変し、彼は真剣な顔になり、話を続けた。




「この世界はね、原因不明の......リメンバーシックっていう病気があるんだ。この病気はこの空虚の世界にいる全員......が持っている病気で、何か大切なものや人物を思い出そうとすると酷い頭痛...や吐き気に襲われるんだ。そして酷い場合は......意識を失う。そして、この症状がでると、1人の人物を忘れてしまうんだ。」




色々な情報が頭に入ってきて、処理がしきれない。


だが不明な点があった。


エリ「ね。ユウリ。」


ユウリ「...?」




エリ「私にリメンバーシックの症状が出たのに、なんで誰も忘れていないの?」


私の質問に対する回答は、案外単純だった。


ユウリ「うーん...まだ僕しか知ってる人いないから...忘れなかったとか?」


彼は首を傾げながら言う。




ユウリ「さ、そろそろ行こうか。」


エリ「どこに行くの?」


膝枕をやめて、彼は足音を鳴らしながら私の先を行く。


ユウリ「図書館だよ。」




と...図書館...?


ユウリ「エリちゃんも...この世界に来たばかりなら、1回くらい行ってみよ...?」


エリ「う...うん...」




そうして私はこの世界について知るため、図書館を目指した。


そして私は新天地へと歩を進めた。


彼の離れゆく背中を眺めながら。


#2 図書館と鎌の少女


周りを見渡してみるが、こんな何も無いところに図書館があるなんて到底信じがたかった。だが、3年もここにいるユウリが言うなら、きっとあるのだろう。


ユウリは足音を鳴らしながら、私の先を行く。


彼の顔はよく見えないが、後ろ姿をみるに、緊張していないように見えた。


慣れているのだろうか。




ユウリ「着いたよ。エリちゃん。」




エリ「ここが...図書館?」




歩くこと20分ほど、私たちは図書館に到着した。


だが、この私には図書館があるようには見えなかった。




エリ「ここであってるの?」




真偽を確かめるために再度質問するが、彼は首を縦に振る。


どうやら本当にここにあるようだ。




ユウリ「みてて...」




するとユウリが地面の破片をとり、何も無い場所に放り投げた。


地面にコツンと当たった瞬間、とてつもない轟音をたて、建物が出てきた。


私の背より随分高い壁が前に現れ、驚きのあまり、声が出ない。




ユウリ「入ろうか」




彼の言われるがまま、私は図書館の扉を開けた。


扉を開けてまっさきに入ってきた感情が「汚い」だった。


本はそこらに散らばっていて、蜘蛛の巣のようなものがはられている天井。


そして血痕。まるで随分昔に戦争があったような内装だった。


ユウリは本棚に向かって歩き出し、本を探し始めた。




ユウリ「あった。この本だよ。」




ユウリはあるひとつの本を私の目の前に差し出す。


被っている埃をはらって題名をみる。


エリ「世界の...中心?」


ページをめくるとそこに書かれているのはこの世界の中心についてだった。




この世界では、常に霧が立ち込めている。


その霧は、中心に行くにつれて濃くなっていく。


その霧は、リメンバーシックの症状度合いを悪くすると言われており、中心は220000rdラードと推定されています。


中心から20000000〜10000000kmは290rd〜24800rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、強い頭痛と吐き気。


中心から10000000〜5000kmは24800rd〜76400rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、心停止。脳への強いショック。と言われています。


中心から5000km〜0mは76400〜220000rdと言われていて、リメンバーシックの症状は、ほぼ確実な死。もしくは消滅と言われています....




.....は?


正直何が書いてあるか分からなかった。




ユウリ「ど...どう?」




ユリ「う...うん...だいたい...」




嘘だ。わかったことはあまりない。分かったことは、中心に行けば行くほどリメンバーシックの症状が強くなるという事だけだった。




ユウリ「まだ何か....知りたいこと..ある?あるなら...本を探すけど...」




ユウリが本を本棚に入れようとした瞬間、ダンという音とともに扉が開いた。




???「何をしているーーー!?」




2人「!?」




そこに立っていたのは、ユウリより少し大きめくらいの白髪の女性で鎌を背中に背負っている。唐突な出来事に頭が回らない私達をおいて彼女は続ける。




???「なのらないなら!この鎌で!!」




すると彼女が鎌を構える。そしてとてつもない速度で走ってきて鎌を振り上げる。




ユウリ「エリ!しゃがんで!」




見ていない間にユウリは剣を抜いていた。


そして彼女は鎌を横降りする。


キーン...甲高い音がなり、鎌と刄が擦れ合う。


図書館に舞っていた紙が数枚切れる




???「にへへへへ...君面白いねぇ....へへ」




彼女はヨダレを垂らしながら後ろ飛びし、距離を離す。




エリ「なんなのこの子...」




ユウリ「分からない...でもこうなったら戦うしかない....」




???「じゃあ戦い決定だネ....」




するとまた彼女はすごい速度で走ってくる。




???「こんなのはどう?」




彼女は鎌を私たちに向かって投げる。まるでブーメランのように。


あえて大きく弧を描くように投げたのか、しゃがめば当たらなかった。




???「ンでもねぇ..狙いはそっちじゃないんだ。」




彼女はジャンプをする。それは図書館の天井に届きそうな程のジャンプだった。


そして弧を描いていた鎌を空中でキャッチしたのだ。




???「まっぷたつに...切れたらおもしろいねぇ!!!!」




彼女の鎌が私に牙を剥く。




ユウリ「危ない!!!」




ユウリは私を押すと剣で鎌を受け止める。




???「やっぱりきみ....面白いねェ..けどそろそろ決着つけないとね。」




もうユウリには余裕がない。いつ切られても、おかしくない。




???「そろそろ終わりにしよう少年。」




ユウリ「奇遇だね..僕も同じこと考えてたよ...」




???「ヘッ」




すると彼女はナイフを投げる。それは私の方に飛んでくる。




エリ「嫌...!!」




ユウリは剣でナイフを落とす。だが振り切ったあとの剣は隙が多かった。その時彼女は既に鎌を振り上げていた。




???「じゃあね...♡」




鎌の先はユウリの頭を狙っているように見えた。




エリ「やめて!」




???「ンぬ....?」




鎌は頭の数mmで止まる。




ユウリ「う...」




???「へへへ....リメンバーシック.....キたァァァ.....♡」




そう言うと彼女は舌をだしてその場に倒れ込む。


彼女は舌を出したまま息を荒くして顔を赤くする。




???「にへへへへ......」




数分後、彼女は落ち着いたのか、眠ってしまった。


私は彼女のポテンシャルでも驚かされていたが、リメンバーシックを気持ちいいと感じる人はこの人が初めてだった。




ユウリ「この娘起きるまで待ってようか。」




エリ「そうだね...でも私も眠くなっちゃった...」




私はそのまま寝てしまった。








「おきてー!」




誰かの声で私は起きる。


エリ「!?」


私は起きた時、驚いた。


なぜなら彼女の指が私の口の中に入っていたからだ。


私が体を起こすと、同時に指も抜ける。




???「あなたの口の中..暖かかったよ♡」




エリ「や..やめてよ...」




すると彼女はさっきまで入っていた指を今度は自分の口に入れてしゃぶり始めた。


そのとき、ユウリが図書館に入ってきた。




ユウリ「あ...2人ともお目覚め?食べ物持ってきたんだけど...食べる?」




???「えぇ!?食べる食べるーww」




彼女はユウリが持ってきた食料を手に取ると口に入れた。




ユウリ「あ、それは。焼かないと!」




???「いつも食べてるからへーキへーキ」




ユウリ「エリは...このパンとかどう?」




エリ「あ....いただきます....」




彼女は自分が食べたものを飲み込むと話をしだした。




???「自己紹介しようか?私の名前はミツキ。」




エリ「エリです。」




ユウリ「ユウリです。よろしくお願いします。」




そう言うとミツキは自分のことについて話し始めた。




ミツキ「私はね。中心から4000kmのミールタウンってとこから来たの。」




そう言うとユウリが食べていたものを少し吹き出す。そしてすぐ飲み込こんだ。




ユウリ「ミールタウン!?そんなとこ....位が高くないと行けないはず....」




もしかしてだけど、この人、すごい人なのかもしれない。変な人ほどすごい人が多いって聞いたこともあるし。




エリ「ねぇ。中心ってどんな感じなの?」




すると、ミツキは顔をしかめて、真剣そうに言った




ミツキ「いまは...少しおかしくなってるんだ。中心にいる人間がちょっと揉めててね。でも、そこまで悪いとこじゃないよ。面白いことが沢山。」




エリ「そうなんですね...私も中心に行ってみたいです」




ミツキ「じゃあ行こうよ。一緒に。」




エリ「え?」




私は軽く言ったつもりだった。




ユウリ「いいですね!行きましょう!」




エリ「え..え..?」




2人はもう行くことが決定したかのように楽しそうに話している。




ミツキ「エリも行くでしょ?こんなとこ、居てもなんもすることないし。」




確かにミツキの言う通りだ。この辺りは何も無い。なら中心に行くのも悪くないかもしれない。




エリ「わ..わかった。行くよ。」




ミツキ「にへへ...決まりね。」




するとミツキが立ち上がってこう言った。




ミツキ「じゃあ明日くらいに出発しようか。準備はしといてよね。」




ミツキはそう言うと図書館の扉を開けた。


そこから入ってくる光は、私たちを照らした。


まるで世界が私たちの冒険を歓迎しているように。


#3 降臨し最強と彼女の志


ミツキと冒険に行く?ことになったのだが、私は、かなり悩んでいた。


確かに冒険に行くのもいい考えだ。だが目的がない。


でも冒険に行かないとすると、この世界でやることが無くなる。


悩んでいると、後ろから声がした。




ユウリ「難しい顔してるけど...大丈夫?」




エリ「え...?私そんな顔してた?」




悩み事はしていたが、まさか顔に出ていたとは...




ユウリ「もし、考え事があるなら、外でも歩きにいったらどうかな...?」




確かに..外に行くのもいいかもしれない。


私はユウリに外に行くことを伝え、図書館の扉を開けた。


鈍い音を立てて扉が開く、眩しい光が私を照らす。


薄くたちこめた霧。少し明るい太陽。無気色の地面。


いつもの景色となんの変わり無かった。


だが、冒険をするとなるとどうだろうか?


この世界も、ゲームのような面白い世界だと思えるだろうか。


自分の足音しか響かないこの世界で?ありえない。


だが...本当にやることがないのだ。


今見えている景色は無気色ばかり。


この世界の景色でいいものなんてない。「綺麗」なんてもってのほかだ。


このままなんの目的もなく冒険に行こうか。


もう考えることが嫌になってくる。頭が痛い。


何も考えずに歩こう。


と思っていた矢先、足音が聞こえてくる。


なにか危ない動物?もしくは人?


視認できないからこその恐怖が私を不安の沼に沈める。


だが、そこまで怖いものでは無かった。




「.......?」




私と同じくらいの身長。水色の髪のポニーテール。


そして全てを見透かされているようなエメラルドグリーンの瞳。


後ろには大きな剣を背負っている。


私は、この姿に少し見覚えがあった。


一体誰?




「誰?」




と問われる




エリ「私は...エリ。」




「あ、そう。私はチベル。」




チベルはそう言うと私に近づいてくる。




チベル「君ってさ。戦える?」




エリ「え...」




突然の問いに戸惑う...なんて暇はなかった。


なぜなら目の前に自分の何倍もある影があったのだから。


グルルルルル....




チベル「あ...この子やばい奴だね。頼んだよ。」




剣を投げやりに渡される。




エリ「私...剣なんか...」




困惑する私を、彼女は睨む。


まるで断るわけないよね?と強要されているようだった。


私はこの目の前にある最悪の物体に目を向ける。


私がこんな奴に勝てるのか?


剣も振ったことの無い私が?


何も出来ない、ユウリに助けられてばっかりの私が...?




チベル「覚悟決めなよ。馬鹿なの?」




仕方ない。やるしかない。


剣を構える。そして怪物に向かって走り出す。


怪物は何も動かない。私はそのまま剣を振った。


すると怪物は致命傷をおったかのように悲鳴をあげた。




エリ「倒したの...?」




チベル「....」




怪物は死んだと思われた。だがまた起き上がったのだ。


そして怪物は高く飛び私に的確な殺意を持って襲いかかろうとする。




エリ「あ..」




チベル「使えない」




そう言うとチベルは私の前に立ち、怪物が着地すると同時に腹にパンチを入れる。


怪物は高く吹き飛び、断末魔をあげた。


腹が裂け、内蔵がとび出ている。とても見れるものではなく、思わず目をそらす。




チベル「あんたさぁ」




俯きながら向かってくる彼女。とてつもない苛立ちが見えていた。




チベル「ふんっ」




そういうと彼女の拳が私のお腹に刺さる。


後方に3mほど飛ぶ。




エリ「う...」




そして起き上がる暇も与えないまま寝ている私に再度拳を放つ。




エリ「い...いたい....」




だが、痛いのは暴力だけではなかった。


何故かリメンバーシックも同時に起こっているのだ。


頭から何かが抜けていく。


何かは分からない。


何を忘れているかすら分からない。


お腹も痛い。


あたまも...い.....たい...


誰か...助け....




チベル「死んでよ。はやく。」




そして彼女はもう一度拳を振ろうとする。


その時、




「なにしてんだ!!!!!!!」




誰かの声だ。




???「お前.....エリを殴りやがって...許さなィ...」




チベル「ミツキか....本当にめんどくさいな。お前は。」




ミツキという名前に、覚えがあった。リメンバーシックで忘れたのは...ミツキだった...?




チベル「お前には落ちぶれたあいつらを殺せと言ったはずだ。お前がトロトロして殺さないから私が直接来てやったのだ。なにか変わっているか見に来たが...何も変わっていない。私譲りの身体能力の上昇はあるようだが、あの程度の怪物を1発で倒せないなんて...ゴミに等しいだろうが。」




ミツキは顔をしかめながら親指を噛んでいる。


相当苛立っているようだ。




チベル「まぁいい、ミツキ。邪魔すると言うならお前も殺す」




ミツキ「受けて立つよ。お前のやり方は嫌いなんだ。」




ミツキはそう言うと豪速球のように走り、チベルの背後をとる。


そして鎌で横振り。これは決まったと思った。


だが、チベルという女は恐ろしい女だった。




チベル「そんな攻撃を"受けてあげる"ほど私も暇じゃないんだ。」




彼女は素手で鎌を掴んでいたのだ。


ミツキは離せない。鎌がないと戦えないからだ。




チベル「離さないならバイバイ...!」




そしてチベルの腹に下突きを入れる。




ミツキ「う...ォえ....」




休む暇もなく顔に上段蹴りが刺さる。


ミツキはたった2回の攻撃でかなり弱っていた。




ミツキ「私は...ここで死んでもいい。"人を守るために動いたヒーロー"として殺してくれ。」




ミツキは...泣いていた。


頬を伝う雫が、彼女の顔をよりカッコよくしていた。




チベル「カッコつけたまま死ぬなんて可哀想だな。望み通り殺してやるよ。」




チベルの拳はミツキの胸一直線に伸びていく。


ミツキはその拳を切り落とす勢いで鎌を振り下ろす。


だが、チベルもそう簡単に勝てる相手では無い。


手を直ぐに引っ込め、今度は左手の拳が飛んでくる。


それは鎌を直撃し、鎌は金属音を立てて床に落ちた。




エリ「あ....だめ....」




ミツキにとって鎌は命よりも大事な存在だった。


そして同時に、これ以上戦えないと悟らせるきっかけでもあった。


そして無慈悲にもチベルの右手が胸に刺さる。


ミツキは何も言わなかった。そのまま倒れ込んだ。だが..


チベルのお腹は切れていた。いや...切ったのだ。


この私が。




チベル「生意気だね...けど嫌いじゃないよ。そういうの。あと...これも君の能力なのかな?」




エリ「.....?」




チベル「リメンバーシックのこと。君がだめといった時からずっとリメンバーシックが起こってるんだ...やるね...君。」




そう言うとチベルは、口角を上げてこういった。




チベル「お前がリメンバーシックで死なないなら、お前の正体を教えてやる。」




私は頷いた。そして、チベルはゆっくりと話し始めた。




チベル「はっきり言う。私は創造神、エルだ。」




う...早速リメンバーシックが起こる。


もう慣れたものだ。




チベル(エル)「お前____...すまない。サティ...だったな。」




...!!サティ...




チベル「サティ。お前はこの創造神の後継ぎとして生んだ。正直、とても期待していた。容姿も完璧にした。性格も完璧にした。そして...能力も、強くした。だた____お前は裏切ったのだ。リメンバーシックの耐性が低く、600rdでも吐血するレベル...能力に身体能力の上昇を入れたが一向に剣術はよくならない武力も強くない。そして、私は中心の民から疑いを向けられたのだ。」




エリ(サティ)「ど...どんな?」




チベル「中心の民は私のことを要らないものしか生み出さない『役たたずの神そうぞうしん』と言ったのだ。更には、落ちぶれの後継ぎを殺せと。だが、私はそうしなかった。お前の今まで記憶を消し、20000000km遠く離れた場所に飛ばした。それで終わると、私自身も思っていたのだ。だが___このこともバレたのだ。中心に。上の神に言われたのだ。あと100年で私が死ぬか後継ぎを殺して優秀な後継ぎを新しく生み出せと。じゃないと空虚の世界ごと消すと言われたのだ。そして私は中心の中の戦力トップランカー10名をお前の元に送ったのだ。その中の一人が...ミツキだ。」




その時ミツキに目をやる。


ミツキは可憐な顔をして眠っているように見えた。もしくは___


考え事をしているあいだも、チベルが話を続ける




チベル「だが20年経ってもお前は死ななかった。だから私が直接来たのだ。私は本当に殺すつもりで殴った。だが____


お前は生まれた頃と違った。臆病だったお前が、神に反逆の意志を見せたのだ。正直驚いたよ。」




そう言いながらチベルはちかよってくる。




チベル「お前を殺すのは、まだ待とうと思う。だがしっかりトップランカーはお前の命を狩りに来る。それまで死なずに生きて中心に来れば...お前を創造神にする。」




そう言うとチベルは私の頬にキスをした。




エル「愛しているぞ。最愛の娘よ。」


































































































































































































































































































































































目が覚めると、そこはいつも見ていた図書館と、心配そうに覗き込む2人の姿があった。???とミツキだ。




ミツキ「ンぬ?起きたのか」




???「大丈夫?エリちゃん。」




ミツキは頭に包帯を巻いている。そして鎌は少し欠けていた。




ミツキ「おい少年。こいつ多分リメンバーシックでお前の事忘れてるぞ。」




???「ほんと?エリちゃん。僕はユウリだよ。」




パズルがハマったようにユウリと分かるようになる。




エリ「ミツキ。少しユウリと二人で話してきてもいいかな?」




そう問うとミツキは、




ミツキ「えっちか?えっちなやつなのか?にへへへへ...」




とひとりで妄想し始めたのでそのままほっておくことにした。


図書館を出ると既に日は落ちており、ひんやりしていた。


そして私は口を開く




ユリ「私。世界の中心に行く」




少し間を置いて答えがかえってくる。




ユウリ「どうしてエリは...中心を目指すの...?」




そう問う少年。そして答える少女。






「この世界の真理は、中心にある。でも、それだけじゃない。私の...大切な人が、待っているはずだから...」


(エル....きっと私はそこまで行くよ。私諦めないから)














空は星だらけだった。


いつか落ちてしまうその姿はまるで、私たちのようだった。


#4 私たちにさす希望の光


創造神(エル)と出会い、私は中心に行くことを約束した。


だが...生憎ミツキが戦闘の時、頭を負傷していた。


そのため、包帯が外れるまでは、図書館で情報収集をすることにした。




私が知った情報を、ある程度まとめようと思う。


まず、この世界に生まれた人は、それぞれ能力を持っていること。


能力は、自分自身では分からない。


私の能力は、エルが言っていた身体能力の上昇...と..リメンバーシックの発動だろうか?


リメンバーシックの発動条件は不明のままだ。




そして、この世界の強さは


I,II,III,IV,V,Xで表されることもわかった。


どの基準で決められるのか、それも分からない。


振り返ってみたが、分からないことが多い。


どうしても、この密室空間ではインプットできる情報が限られているのだ。




____数日後。


ミツキの頭の傷は完治し、包帯が外れていた。


私が朝早くに起きた時、彼女は外で鎌の素振りをしていた。


空を切る音が、振る度に木霊(こだま)する。


彼女はかなり真剣そうな目つきで遠くを見つめていた。




1時間ほどすると、彼女は汗だらけになり、鎌を背中に収めた。


汗で濡れた顔は、なにか美しく見えた。




ミツキ「いたのか。」




彼女は、息を切らしながら私に話しかける。


私が頷くと、返事をすることなく私の隣に座る。


彼女と2人切りになったことはなく、なにか新鮮だった。


時々彼女の顔を伺うが、遠くをずっと眺めていた。




しばらくすると、立ち上がりそのまま図書館の方へ歩き出す。


それを見て私も背中を追う。


彼女は落ち着いた様子で進む。


彼女が進む度、キシ...キシ...と金属音がする。まるで時計の針のように。




そして図書館の前に着いた。


重々しい扉を開ける。


そこには少年が1人。




ユウリ「朝早くからお疲れ様....ミツキちゃん。」




そう言うと、続けて、




ユウリ「今日は...エリちゃんも居ないから...心配したよ。」




普段は、ユウリより早く起きたことがなかった。


心配されて当然だろう。




ユウリ「ほらみんな。朝食は作っておいたから...食べよ?」




今日の料理は、すり潰した木の実と砂糖を混ぜた物をパンに乗せて焼いたものだった。


ミツキが手を合したあと、勢い良くかぶりつく。


サクっという音がした後、ミツキが幸せそうな顔をする。


それを見て、私もかぶりつく。




美味しい。口に入れて咀嚼する度、木の実の旨みが舌に伝わる。


私も幸せそうな顔になる。


ユウリはそれを見て、微笑んでいる。


ミツキは身を乗り出し、




ミツキ「ユウリ!!このパン美味いな!!よく動けそうだ!!!」




ユウリは少し困った顔をしながら、ありがとうと返事する。


全員が食べ終わると、ミツキが話を切り出す。




ミツキ「私のケガが完治したもんだから、今日から中心に行く冒険に行く。」




私とユウリは何故か拍手をする。




ミツキ「君たちも存じている通り、この世界に生まれたものは"能力"を持っているね?それを共有してから冒険をした方が言うと思うんだ。」




確かにそうだ。だが...


エリ「能力は自分自身では分からない____」


ボソッと呟く。




ミツキ「そう。だが、分かる方法がある。それは____」




ミツキ「私の能力だ!!!!!!!!!」




私とユウリは顔を見合わせる。


彼女は話を続ける。




ミツキ「私の能力は、髪の毛や、細胞。なんでもいい。相手の物を口から摂取することで能力がわかるのだ!」




エリ「つまり、私の髪の毛を食べたら私の能力がわかるって事ね。」




ミツキはそう、と言うと私の髪の毛を1本抜いた。


するとそれを長い舌の上に乗せ、口に含む。


ゴクッといい、喉仏が動く。


ミツキは、驚いた表情で私に話しかけた。




ミツキ「お...お前の能力は....『身体能力の上昇に加え、想いの強さが、リメンバーシックとして、相手に伝わる』..らしい。お前...強くね?」




ユウリ「すごいね...リメンバーシックの能力なんて..滅多に見ないよ。」




じゃ今度はお前な、と言うとユウリの髪の毛を抜く。


そして摂取した。




ミツキ「少年の能力は....『外敵傷害を受けそうになった時、感覚がある状態で時間の進みが遅くなる』...お前ら...強くないか?能力だけでもIIレベルじゃないじゃないか。」




ミツキは少し苛立った様子で、頬を膨らます。


____まぁ.......し....当然か....




ユウリ「うん?ミツキちゃん。何か言ったかな...?」




するとミツキはユウリを無視し、鎌を背負った。


そしてこう言った。




ミツキ「さ。冒険に行こうか」




私たちは強く頷いた。










私は図書館の中をもう一度眺めた。


もうここともお別れ。


悲しいような、寂しいような感情が私にのしかかる。


だが、ここにいる訳にも行かない。


エルが....私を待っているのだ。


____さぁ。行こうか。


彼女の声で、私たちは強く、1歩踏み出した。


その1歩は、地獄への1歩か、もしくは天国への1歩、どちらになるのだろうか。

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