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人魚な王子  作者: 人魚な王子
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第14章 第1話

 翌日、いつものように朝一番に学校に来た僕は、何となく奏の席に座った。

どれもこれも全部同じ机と椅子だけど、ここにいつも奏が座っているのかと思うと、僕のものとは違う椅子のような気がする。

そのまま机の上で眠っていたら、奏の声で起こされた。


「邪魔。どいて」


 その声にまたドキリとする。

奏の方から、声をかけてくれてよかった。

そうじゃなかったら僕は、どうしていいのか分からなかったかもしれない。


「ねぇ。もう一度確認するけど、奏は僕のこと好き?」

「好きなわけないでしょ。もう嫌いになった」

「……。そうだよね。知ってた」


 のろのろと立ち上がる。

体が重い。

筋トレとランニングで走らされすぎた、次の日みたいだ。

この重みは、人魚の僕が陸に上がってひなたぼっこしてる時と同じ重みだ。

やっぱり僕の体にかけられた魔法が、弱くなってるのかもしれない。

もう時間がないことを、知らせてくれている。


 立ち上がりはしたけど、そこから動けなくて、じっと彼女を見下ろす。

奏は肘で僕を押しのけた。

いずみには勝てるようになったのに、奏には押し退けられる。

きっと奏はいずみよりいっぱい筋トレしてるから、だから僕はまだ勝てないんだ。


「早く自分の席に着きなよ。先生来るよ」

「うん」


 すっかり人が増え、ざわつく教室の中を進む。

こういう時は、いつも岸田くんが色々教えてくれてたのに、その岸田くんは、今は僕と目を合わせてもくれない。

そういえば、奏は岸田くんと仲直りしろって言ってたっけ。

いずみはもういいって言ってたけど。

僕にはそんなことを言われて、どうしていいのか分からない。

仲直りのために謝る? 

それとも、もういいの?


 教室にいる間、奏は僕の方を見ないようにしていたみたいだけど、時々はチラチラこっちを見ていることくらい、僕だって気づいてる。

やっと放課後になった。

プールには行きたくないけど、きっと奏は行くだろうし岸田くんも行く。

あんまり行きたくはないけど、行かないと奏とも話せない。

ようやく束縛から外された教室は、とても風の通りがよくなるはずなのに、今日は濁ったままだ。

気がつけば二人はとっくに教室から姿を消していて、奏を誘って一緒に行こうと思っていたのに、少し残念な気分になる。

あまり気の進まない僕が、もたもたと片付けをしていたら、廊下からいずみがのぞきこんだ。


「宮野くん。ちょっと来て」

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