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6.初戦ならこんなもんだ

イリアナとレイラの冒険者養成所の同期らしい犯罪者たちを証拠である【録音(レコード)】の魔道具と一緒にオルティアの衛兵へ突き出す。

彼らはそのまま詰め所の奥へと連行されていった。


「ちなみにあいつらってこの後どうなるのかな?」


少し神妙な顔をしたイリアナがぽつりとつぶやく。


「それぞれ怪我をしているから一旦治療を受けることになるだろうな。剣士と斥候の腕は担当する回復術師の腕とやる気によってはくっつけてもらえるかもしれないが、犯罪者扱いだからそのままの可能性もあるな。」


「まぁでもそれは自業自得だもんね?」


「そうだ。気に病むことはない。こっちは殺されそうになったんだからな。」


「多分、戦闘が一方的だったのでそう言う気持ちになっているんでしょうね……」


確かに。

だが、あそこまでする必要があったのかと言えばイエスだ。

どんな油断が命取りになるか分からないものだからな。


「……けがの治療が終わった後は簡易裁判での判決次第だが、強盗殺人は未遂だし、初犯なら強制労働数年ってところかな。」


「逆に数年もすればまた街中で合う可能性があるんですね……」


そう言ってレイラは眉根を寄せる。


「……そうだな。一応、強制労働先での出牢になるからわざわざこの街に来るかは分からんが、確かに復讐を決行する奴らも一定数居るらしい。……それまでにいつ襲撃を受けても良いように少なくとも俺くらいの強さになってもらわなきゃいかんな。」


若干憂鬱になりそうな話だったので、最後はわざと調子を上げて話す。

はっきりとは言わないが、冒険者を続けていれば犯罪者組織の壊滅など逆恨みを受けるような活動内容もこなすことになる。

普段の生活から襲撃に気を付けるようにならなければいけないのだ。

それが見た目麗しい女性ならなおさらだ。


この一週間の間にそういったことも伝えなければならないだろうが、今はまだいいだろう。


「そう言えば、どうやってつけられているのが分かったんですか?」


思い出したようにレイラが聞いてくる。

先の冒険者たちの事か。


「ん~上手く伝えられないんだが、言ってしまえば気配だな。冒険者みたいな生活を続けてるとそう言った感覚が敏感になってくるんだ。人により差が大きいもんだし、全く分からないって人もいるが、俺の場合は視線を感じるって感じだな。」


「視線、ですか?」


「ああ、見られてるって感じるんだ。人と魔物でその粘度が違ったりするし、悪意の有無なんかも濃さで分かったりするな。」


「ほぇー。」


俺の説明にイリアナが感心したように言う。

この子は敬語も無くなってきてるし、打ち解けるのが早いようだ。

同じパーティーメンバーだし勿論それで構わない。


「よし。余計な時間を食ったが気を取り直してゴブリン討伐に行こう。」


そして俺たちは再びスフィカの森へと歩き出した。






スフィカの森に入り数分歩いたところで目的のゴブリンを発見する。

1匹だけで森中をうろついている。


小鬼(ゴブリン)は最低ランクのEランクの魔物だ。

深い緑色の肌を持ち、二足歩行。

身長は120~150cmくらいで力もそんな強くないが、手に武器を持っていることも多い。


(あのゴブリンは手にこん棒を持っているな。イリアナ行ってみるか?レイラは周囲を警戒だ。)


(了解!!やってみる!!)


(しっかり気持ちの整理ができたら仕掛けてくれ。)


俺がそう指示を出すと、イリアナは一度目を瞑って深く深呼吸をする。

そしてゆっくりと目を開く。


(いくよっ!!)


イリアナがその身を隠していた茂みから飛び出す。

腰から剣を抜き、両手で持つと下段に構えて走る。


対するゴブリンもイリアナが茂みから飛び出す音でこちらの存在に気付いてこちらを向いている。

ゲキャゲキャと騒ぎながらこん棒を振り上げている。


イリアナは自分の剣が届くギリギリの距離で急制動をかけるとそこから剣を振り上げる。

反射的にゴブリンが後ろに引いたため初撃は空振りに終わる。

だが、イリアナは振り上げた剣をそのままに、更に一歩踏み込み今度は打ち下ろしの一撃を放つ。

その一撃はゴブリンの顔を浅く切り裂く。


ゴブリンの短い悲鳴と青い血が飛ぶ。

だが絶命させるには至っていない。

今度はゴブリンがこん棒を横薙ぎに振るう。


「っく!?」


イリアナは咄嗟に振り下ろしていた剣を引き上げ、その剣の腹でこん棒の一撃を受ける。

ゴブリンはそのままめちゃくちゃにこん棒を振り回す。

そのままイリアナは足を止めてこん棒の一撃を受け続ける。

その表情には焦りの色が浮かんでいる。


ここまでかな。


俺は茂みから飛び出すとイリアナの元まで駆け、ゴブリンの横っ腹を思いっきり蹴り飛ばす。

ゴブリンは転倒して地面を転がる。

そして起き上がる前に剣を突き刺し絶命させた。


ゴブリンはすぐに黒い靄となって消えると、その場には小さな魔石が残る。


「……まぁ初戦ならこんなもんだろ。」


魔石を拾ってイリアナに向き直ると、正直な感想を口にする。

実際魔物に対して剣を振れたというだけで合格点だ。


「でも、悔しい!!」


イリアナは口をへの字に曲げて俯いていた。


「最初から全部出来たんじゃ俺が雇われた意味がなくなるだろ?さ、反省会だ。」


俺はイリアナにゴブリンの魔石を渡した。

ファンタジーの世界ではゴブリン=雑魚ですが、普通にこんなの居たら怖いですよね。

私なら銃が欲しくなります。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非ブックマークをお願いいたします。

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