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5.後衛職1人なんて怖くねぇ

俺達の前には3人の冒険者の姿があった。

装備を見るに剣士、斥候、魔術師の組み合わせだ。


街中からつけられている事には気付いていたが、何が目的だ?

俺がそれを問いただそうとする前に


「二コラ……」


俺冒険者の顔を見てレイラがつぶやいた。


「……知り合いか?」


視線は冒険者に固定したまま尋ねる。


「さっきギルドで話してた養成所の同期だよ!!ほんとしつこい!!」


レイラの代わりに答えたイリアナは怒っているようだった。

だが、相手の冒険者はそんなこと構わないと言った雰囲気を出している。


「レイラ、イリアナ、もう一度言うぞ?俺達のパーティに入れよ。良い思いさせてやるからよ。」


先頭に立つ剣士がそう言い、後ろの斥候と魔術師が笑う。


嫌な雰囲気の奴らだ。

今の一言だけで仲間として2人を見ていないことがはっきりとわかる。

話し合いで解決できればいいと思っていたが、これは一度お灸を据えた方がいいかもしれない。


「私たちはもうパーティを組んでいます。そちらの提案はお断りしますので帰って下さい。」


相手の言葉の意図も理解できているだろうに、レイラは勤めて冷静に答える。


「知ってるよ。そこの魔術師とだろ?……ちょうどいい。俺たちがそいつをボコって強さを見せつければ気持ちも変わるだろうさ。それでもダメな場合は、……3人仲良く行方不明になってもらおうか?やっと街から出てくれたんだからな。街中ではそういう訳にもいかなかったがここは違うぜ?」


俺は短くため息をつく。


これだけ堂々と犯罪宣言されるとは……。

養成所を出た奴はトラブル率が低いと言ったが前言撤回だ。

さっきの補助魔術に関する話と言い、養成所のレベルが落ちているとしか思えん。

帰ったら本当に抗議しよう。


それとこいつらは、残念ながら一線を越える発言をしたことに対する責任を取ってもらわねばならんな。


俺は懐から小さな箱型の魔道具を取り出す。

魔道具とは魔石のエネルギーを元に様々な魔術的効果を発揮する道具の総称だ。


「これは【録音(レコード)】の魔道具だ。これを提示すれば今の発言だけでお前たちを罰することが出来る。」


これで己の発言を悔いてくれればあるいは……と思っていたのだが、そう伝えても冒険者たちの表情は変わらない。


「そんなもの力づくで奪えばいいだけの話だろうが!!高ランクだろうが後衛職1人なんて怖くねぇんだよ!!」


そう言って剣士と斥候が突っ込んでくる。

こうもあっさりと武力に訴えて来るとは……随分と舐められたものだ。


剣と弓を構えたイリアナとレイラを手で制して前へと出る。


「【沈黙(サイレス)】【筋力低下(パワーダウン)】【敏捷低下(アジリティダウン)】【重量増加(ヘヴィ)】」」


冒険者の動きを見定め適切な能力低下(デバフ)を行使する。

突っ込んでくる剣士と斥候は急に動きが悪くなり、重装の剣士は急に重くなった装具に立っていられなくなり片膝をつく。

後ろで杖を掲げて何かの魔術を行使しようとしていた魔術師は魔術発動のキーとなる言葉(ワード)を発せず混乱している。


俺はまだふらつきながらも立っている軽装の斥候の元へと駆ける。

そして腰から剣を抜き、短剣を握っている右腕をたたき切った。


斥候は血が噴き出す右腕を押さえ叫ぶが【沈黙(サイレス)】のせいで声は出ない。


「なんだ?こちらを害しようとしておいて、殺される覚悟はできてなかったのか?」


ガシャンと大きな音がしてそちらを向くと、剣士が鎧を脱ぎ捨てていた。

重くなった剣を両手で必死に持ち上げている。


「…………!!!!」


何か叫びながら震える腕で剣を持ち上げ、俺に突貫してくる。

そして俺に向けてまっすぐにその剣を振り下ろした。


動きが直線的すぎるし、剣筋もブレブレだ。

これでは例え切られたとしても骨にまでは達しないだろう。


俺は振り下ろされる剣を半身で躱し、斥候にしたのと同じようにその腕を切り飛ばした。


剣士はその痛みに声にならない声を上げ、地面に転がる。


「すごい……あっという間に……」


レイラから感嘆の声が漏れる。

俺からすれば大して修練も積んでいないチンピラまがいの冒険者が相手ならこんなもんだろうという感覚だ。


あと1人と思い魔術師を見ると、魔術師は2人を見捨てて逃げ出していた。


敏捷低下(アジリティダウン)】がかかっているので走ればすぐに追いつけるだろうが、どうせ何もできやしないし、証拠はしっかり押さえてある。


放っておこうと決めたその直後、後方から矢が放たれた。

そしてその矢は魔術師の足に当たり、その逃避行を阻害する。


「逃がしはしません。」


驚いて振り向いた俺に、矢を放ったままの姿勢のレイラがそう言い放つ。

その瞳には人を傷つけた動揺のようなものは一切見られない。


実戦も未経験の女の子が人に矢を射るのを躊躇わないのかよ……


戦闘のステップを何段階も飛ばしている。

覚悟の決まり方が尋常じゃない。


俺は若干の戦慄を覚えながらも転がる冒険者たちを縛り上げていくのだった。

いざと言う時の腹の座り方と言うのは女性の方がはっきりしているイメージがあります。

偏見ですが。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非ブックマークをお願いいたします。

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