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3.『黎明の光』

正午の鐘が鳴る。

迷宮都市オルティアでは朝8時、正午、午後4時の3度鐘が鳴る。

朝8時は1回、正午は2回、午後4時は3回鐘の音が鳴る仕組みだ。

商店なんかはこの鐘の音を基準に運営されているところもあったりする。

主に冒険者向けで無い商店だが。


俺は無事にしばらくの間の宿を確保し、すでに冒険者ギルドの中の打ち合わせスペースに腰を下ろしている。

これから依頼人に会う訳だが、相手が新人冒険者という事もあって特に気負う事もない。


鐘の音が鳴り終わり、少しするとギルド内に入ってくる人影が見えたので何気なく視線を向ける。

そこにはまだあどけなさの残る顔立ちの2人の女性がいた。

恰好を見るに冒険者のようだが、女性2人組と言うのは珍しい。

どうしても職業柄魔物や犯罪者との戦闘があるため前衛職がパーティには必須なのだが、元々の筋力に劣る女性の前衛職の割合は極端に少ない。

なので大体のパーティには男性の前衛職がいるものなのだ。

まぁ、女性のみのパーティと言うのもないわけではないのだが……


まぁ他人をじろじろ見るのはマナー違反だろう。

俺は手元の情報誌に視線を落とす。


「オルカさん、彼女たちです。」


声をかけられたのはそのすぐ後だった。

顔を上げると、ミリカさんと先ほどの女性冒険者が立っていた。

どうやら依頼主だったらしい。

俺は若干の戸惑いを覚えながら席を立つ。


「オルカだ。よろしく頼む。」


出来るだけ平静を装って挨拶するが少しぶっきらぼうになってしまった。


「剣士のイリアナです!!よろしくお願いします!!」


そう元気に言って頭を下げたのは少し青みがかったショートヘアの女の子。


「弓手のレイラです。よろしくお願いします。」


少し硬い声と表情で挨拶をしたのは肩にかかるくらいのブロンドの髪の女の子。


間近で見ると二人ともかなり可愛らしい容姿をしている。

これなら引率に手を上げる冒険者なんていくらでもいるだろうに。


「だからですよ。彼女たちは養成所を出た後に同期の男性冒険者に執拗に迫られるトラブルに巻き込まれてるんです。」


ミリカさんが俺の表情から疑問を読み取ったようで先んじて説明してくれる。

確かに容姿の良い女性冒険者はそう言ったトラブルにも巻き込まれやすいんだろう。

つまりは男性不信になっているといったところか?


「……そういう話はたまに聞くが、そうか。じゃあ引率も女性冒険者のほうがいいんじゃないですか?」


俺は当たり前の疑問をミリカさんに投げかける。


「彼女たちの第一希望も女性先輩冒険者ということだったんですが、居ないんですよ……ソロで活動してる女性冒険者なんて……」


「まぁ、確かに俺も心当たりはないですね。」


「そこでオルカさんです!!残念ながら女性ではありませんが、確かな実力を持ち、かつ礼節をわきまえてて下心で動くタイプではないので安心です!!」


それは若干残念な男だと言われているような気がしないでもないが……


ここで俺はイリアナとレイラの二人に向き合う。


「トラブルを起こす気はないが、俺も男だ。それでも良ければ力になろう。採用、不採用は決めてくれ。」


「私は問題ないと思います……よろしくお願いします。」


「あたしも!!お兄さんだけだったからね~ギルドに入ったとき一瞥だけして視線外したの。他の男の人なんて嘗め回すように見るんだよ?」


そう言ってレイラは微笑み、イリアナはニシシと笑う。


俺としては不採用となってもおかしくないと思っていたが、意外とあっさり採用されたようだ。

しかし女性ってそういった視線に敏感なんだな。

気を付けないと。


「わかった。じゃあさっそくだが依頼を受けようか。まだ近場の依頼なら十分処理できる時間だ。」


「それでしたらこの依頼をどうぞ。スフィカの森のゴブリンの間引き依頼です。魔石10個の納品が達成条件です。」


ミリカさんがおそらく事前にキープしてくれていたであろう依頼票を見せてくる。

スフィカの森は迷宮都市オルティアの南門を出てすぐのところにある森だ。

流石ミリカさん、初心者向けのいい依頼をキープしてくれていたな。


「良いんじゃないですか?最初が人型だと抵抗あるやつもいるが、遅かれ早かれだしな。2人ともこれでいいか?」


俺が依頼票を見て2人に尋ねる。

2人とも覚悟はできているようで、力強く首肯する。


「あ、あとパーティ申請もお願いします。」


ミリカさんはついでと言わんばかりにパーティ登録用紙を3枚(・・)取り出す。


ん?


「これ、俺も登録するんですか?」


真剣に書類に目を通している2人の邪魔にならないように2人に聞こえないよう小声でミリカさんに質問する。

俺の質問に当然と言わんばかりにミリカさんが頷く。


「仲間殺し等の禁則事項や不当な処遇を避けるための意味合いもありますので、引率でも加入扱いにしています。」


なるほど、引率が仲間でないという扱いにすると、俺に悪意があればトラブルを起こすこともできてしまうということか。

例えばこの2人を殺害しても隣町のギルドへ行けば俺はソロ冒険者扱いになっているから不自然なところがないとかそんな感じか。


「わかりました。」


俺はパーティ加入申請に筆を走らせる。


「パーティ名は何にしますか?」


ミリカさんが2人に確認を入れる。


「『黎明の光』でお願いします!!レイラと考えました!!」


答えたのはイリアナだ。

黎明というのは明け方という意味だったか?


「わかりました。リーダーは誰にします?」


「オルカさんで!!」「オルカさんがいいです。」


なんで!?

黎明れいめいと言うのは夜明けの事を意味します。

この名に込められたイリアナとレイラの想いはまたいずれ何処かで書きたいと思います。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非ブックマークをお願いいたします。

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