表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/33

婚約破棄されたら死にたくなるよね

お世話になります、いとうヒンジです。不死身の令嬢があれこれと奮闘する物語になります。彼女を守る殺し屋はなぜかイケメン揃いで羨ましい限りです。


 よしなに。



「レイ。君との婚約を破棄する」



 突然の話で脈絡もなく大変申し訳ないけれど、どうやら私は婚約破棄されてしまったようだ。


 落ち着くために状況を整理すると……私――レイ・スカーレットは、婚約者――デニス・ワグナーさんに呼び出され、ロエリアの街の外れにあるワグナー家の別宅に単身足を運び、冒頭のセリフを切り出されたのだった。



「……ちょ、ちょっと待ってください、デニスさん。一体どうして……」



「元々君の親が強引に持ち込んだ縁談だ、俺は全く乗り気じゃなかった」



 そんなことは、知り合ってからすぐにわかっていた。彼は婚約が決まった三週間前から一度も私に会ってくれず、連絡は素気ない手紙のやり取りだけ……自分が愛されていないことは、重々承知している。


 でも、だからと言っていきなり婚約破棄の申し出なんて……。



「俺には真に愛する人ができてしまった。だから君と一緒にはなれない」



「そんな……」



 他の女性を愛してしまったから婚約破棄か……理由は単純明快だけど、到底素直に受け入れられるものではない。



「君だって、愛のない結婚をするのは本意じゃないだろう」



「確かにあなたは私を好きではないでしょうけど、私はデニスさんを愛そうと努力していました。手紙は日に二度書き、領主様のご子息に見合う作法を身につけようと勉強もしました」



 そう、彼はここロエリアを治めるワグナー家の次男なのだ。一方私は、父が一代で築いた商家の娘である。多少お金はあれど、地位も名声も遠く及ばない庶民なのだ。



「君の努力は知っている、手紙に書いてあったからね……だからこうして、直接伝えるのが礼儀だと思ったんだ。本当なら、書面だけで婚約破棄することもできたんだぞ」



「……」



 デニスさんの身勝手な言い分に対し、しかし私は反論することなど許されない。元々身分の差がある婚約だ、下の者が何を言っても無駄である。


 それでも。


 それでも私は――この人を愛そうと頑張っていたのに。



「話は終わりだ、レイ……早く家に帰りなさい」



 彼は邪魔者を追い払うようにしっしと手を振り、私を別宅から追い出す。



「夜道には気を付けるんだぞ」



 去り際、彼に似つかわしくない優しい言葉をかけたのは。


 せめてもの罪滅ぼしなのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ