この解答用紙に書いて、提出してください。時間は20分です
臨死体験ボタンを押した俺は、特殊ガスを吸って一瞬で気を失った。
苦しいとか痛いとかはなく、ただ眠気と共に体の自由が利かなくなった。
VRゴーグルで見た景色を思い出しながら、生還したい強い気持ちを思い出しながら、ただ暗闇の中、集中した。
ふと、小さな声が聞こえる。
試験官「時間、20秒、1、2、3…。心拍数ナシ」
聞き覚えのある試験管の声、俺が意識を取り戻すと、横たわっている俺と試験官がすっと現れた。
まるで夢の中のような感覚だ。呼吸している感じはないのに苦しくはない。痛みや感情がまるでなく、ただ3Dゲームを遊んでいる感じだ。
(あっ! 試験で上の番号記憶しないと!!)
前に言われたことを思い出して、からだを上に持ち上げようとする。しかし、鎖でつながれているかのように眠っている俺から離れられない。
(え? なにこれ出られない! ってかどうなってんだよこの世界!!)
なんとか上にあがろうと藻掻くが、焦るほど自分の体に吸引されるかのように戻される。
試験官「時間、50、1、2、3…」
(あれ? やけにゆっくり時間が流れている。こっちの世界では通常の秒より多く動けるのか)
次第にクリアに見えていた視界が黒ずんでくる。何か嫌な予感がする。
試験官「59,60! 蘇生!」
ドクン!
寝ている俺が胸が弾かれたように動く。その瞬間、俺は寝ている体に引き込まれて意識を失った。
試験官「蘇生完了。試験終了です」
「え、あ…。 終わりですか」
試験官「はい。左のドアを出て、解答用紙を受け取ってください。はい、次の方…」
体を起こし、そのまま車を出る。出た先には誘導があり、小さな教室に入る。
試験官2「はい、佐藤さんですね。この解答用紙に書いて、提出してください。時間は20分です」
受け取った解答用紙には、いつもやっている試験問題のような感じだった。