まあなんだ。今日の帰りに俺んち寄ってくれよ、色々話したいことがあるんだ
係員「受験番号231番から249番の学生は、こちらに並んで下さい」
俺たちのクラスには30名ほど学生がいる。半数が呼ばれて、並んで教室を出ていった。
だめだ、処刑場に生かされる死刑囚のようだ。2%の死亡率なのは分かっているが、後遺症だって数%の学生が負っている。下手すると五体満足で戻ってこれないかもしれない。
係員「受験番号250番から270番の学生は、こちらに並んで下さい」
斎藤「おっ! 俺たちの番だないこうぜ義則」
「わかってるよ、もう後悔しねぇ」
俺たちが呼ばれた後、ぞろぞろと並んでグラウンドに向かう。必要なのはなく、そのまま歩いて階段を下りた。
斎藤「なあ義則、俺がもし無事に戻れなかったらさ。小太郎を預かってくれないか?」
「はぁ? なんでこんな時に言うんだよ」
斎藤「死ぬのは別に怖くはないんだけどさ。俺の愛犬は親には懐かないんだよ。前に俺んち来た時に、しっぽ振って喜んでただろ」
「たしかに可愛いし、俺も飼いたいっていってたけどさ。変なフラグ立てるなって」
斎藤「ヒトが生まれて死ぬのって、もしかすると通過点に過ぎないのかなって」
斎藤「俺の前世って、40年前くらいに生まれたゲームデザイナーだって承認されてさ」
斎藤「なんか、来世では自分ひとりでゲーム作りたいから頼むって託されてさ」
「へぇ。だから、ゲームの本とか読み始めてたのか」
斎藤「今まで生きる意味なんて考えてなかったけど、前世承認されたら少し見えてきたんだ」
斎藤「俺の親父たちの世代って、そういう若い時に能力や前世を思い出せるなろう小説が流行ってたって聞いたんだ」
斎藤「羨ましいとも言われたけど、最初から全て知っちゃうとつまらないよな。下手になんとかを達成してくれって押し付けられても人生辛くなるだろ?」
「斎藤。なんか哲学者っぽくなったな」
斎藤「まあなんだ。今日の帰りに俺んち寄ってくれよ、色々話したいことがあるんだ」
「ああわかったよ」
事務員「では斎藤さん、こちら2番へ。佐藤さんはこちら3番へ行ってください」
「じゃあな。次は教室で」
斎藤「ああ」
大きなバスの中に入ると、学生たちがゴーグルのようなものを被り、何人かが終わると奥のドアに消えていった。
事務員「2179398230番、佐藤義則さんですね。これからVR訓練を始めます。ゴーグルをつけてください」