第七話
第七話
彼はずっと字を書いていた。
飽きもせずにずっと。
ただ空の色が変わるだけの箱庭に、なにも変化のない日々に、段々と苛立ちが芽生えた。
ただ不意に、裏庭を散策していると、白い人影が丸くなっていた。
確か体が弱いと言っていたな。
「どうかしましたか」
真っ白な顔がこちらを向く。
「椿が落ちている」
足元には真っ白な両手いっぱいに、白椿を乗せていた。
なんだ花を見ていただけか。
想像していた刺激がなく、頭に血が上る。
気が狂いそうだ。
話しかけても面白くない少年と、何もない箱庭。
気持ちが悪いほどの時間が、このまま永遠に流れるのではないかと、背中が冷たくなる。
「私は夕食を作って参ります。寒くならないうちに引き上げてください」
寝込まれては面倒だ。
変化のない時間に、さらに加わるのは勘弁したい。
ああでも、いっそ倒れてくれたなら、それはそれで退屈しのぎになるだろうか。
冷たい空気と共に、少年が横ぎった。
まっすぐな黒髪が、まるで和紙を滑る墨のように流れた。
こうしてみると、真っ白な肌が書道紙のようで、まるで。
まるで。
墨汁の海から、書にしたためた文字が、ひとりでに動いているような。
そんな。
気が付けば、足が止まっていた。
あれ。
俺はさっき何を考えていた。
あの少年が倒れてくれたら、自分の退屈がしのげるなんて。
苛立っていたとはいえ、口に出していないとはいえ、人でなしだ。
軽薄な考えに、自分がとてつもなく醜く感じた。




