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第六話

第六話

 「お料理のレシピはこれで全部です。古い方から作っていったら、いいのかしらね」

 五、六冊の大学ノートが机に置かれる。

 紙の浮き沈みから、長い間コツコツと書かれていたのだろうか。

 「ありがとうございます」


 前に味付けを担当した時に、味噌を入れすぎたことが尾を引きずっていたのか、始さんは調味料の量に口を出すようになった。

 残ったガスの匂いが、刺激に満ちた過去を呼び起こす。


 「そんな不安そうな顔をしないでくださいな。大丈夫ですよ、きっと」

 ノートの一番最後のページに、始さんはすらすらと数字を書いた。

 「なにかあったら、ここにかけてくださいね」

 軽く会釈をする。


 始さんは後数分で、此処を発つ。

 何か言わないと。

 内心焦る自分を急かすかのように、タクシーのエンジン音が響く。


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