6/24
第六話
第六話
「お料理のレシピはこれで全部です。古い方から作っていったら、いいのかしらね」
五、六冊の大学ノートが机に置かれる。
紙の浮き沈みから、長い間コツコツと書かれていたのだろうか。
「ありがとうございます」
前に味付けを担当した時に、味噌を入れすぎたことが尾を引きずっていたのか、始さんは調味料の量に口を出すようになった。
残ったガスの匂いが、刺激に満ちた過去を呼び起こす。
「そんな不安そうな顔をしないでくださいな。大丈夫ですよ、きっと」
ノートの一番最後のページに、始さんはすらすらと数字を書いた。
「なにかあったら、ここにかけてくださいね」
軽く会釈をする。
始さんは後数分で、此処を発つ。
何か言わないと。
内心焦る自分を急かすかのように、タクシーのエンジン音が響く。




