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第二十二話
第二十二話
「静はなぁ、俺の愛人の息子だったんだ」
顔に布をかけた少年の横に座った。
妾の子だったのか。
「結納する前にできた子でな。本家の方から断るように言われて、手切れ金を渡すことで今の女房と籍を入れたんだ」
なにも言葉を返せなかった。
「旦那様」
「名前で呼べ」
息を大きく吸う。
「沖茄さん」
膝の上に乗っていた拳が、ゆっくりと開かれる。
「実之君。君はこの後宛てがあるのか」
吐いた息が白く昇る。
「いえ、まだ決まっていません」
「なら、この家をもらってくれ。この前出した書も。売って金にしろ」
「はい」
退職金というところか。
客間から騒々しい賑わいが聞こえてきた。
「静の親族はいないからな。葬式はできん」
はぁ。
「差し出がましい事ですが、あの方たちは」
スーツ姿の男の背は、微動だにしなかった。
「俺の取り巻きみたいなものだ」
一気に風が冷たくなる。
「そう、ですか」
大きい溜息を吐いた男は重い腰を上げ、観客のもとへ吸い込まれていった。
さっきとは違う足音だ。
俺はしばらく、空っぽになった少年を見つめるしかなかった。




