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第二十一話

第二十一話

 「先生、朝餉ですよ」

 障子を開け、部屋に光を入れる。

 微動だにしない少年を揺さぶる。

 

 指先からヒヤリと、冷たさが伝わる。

 とても、とても冷たかった。


 細雪が庭に降る今日、少年が眠るように死んでいった。





 何時間か経って、何台もの車がやってきた。

 一斉にドアが開き、駆け足で屋敷に入ってきた。

 「あっ、あのっ」

 血走る眼に押されながら、後ろに追いやられた。

 喪服姿の男女が、我よ我よと居間を突き進む。

 開かれた襖を頼りに、彼らを探す。


 中途半端に開かれた、先生が置かれている部屋を覗く。

 ただ薄暗い空間があるだけで、誰一人として居なかった。


 変だな、先生のもとに行ったんじゃないのか。


 隣室よりがさがさと音がする。

 妙に思い、襖を開ける。


 そこには、タンスや作業机を漁る彼らがいた。

 「ちょっとなにしてるんですかっ」

 一人の方を掴み、引き離す。


 「ねえどこにあるのよっ。金はっ」

 鬼のような形相で、腕にしがみつかれた。


 ああ。

 そうなのか。


 彼らには少年の価値がわからないのか。


 唖然としていると、奥から嬉々とした声が響いた。

 皆漁っていた手を辞め、ゾンビのような足取りで、声のもとに向かう。


 背を向けるようにして、少年の部屋の襖を閉める。

 

 団子になっている人達を見降ろす。

 円を囲むようにして何かを触っていたが、何をしているのかさっぱりだ。

 「おいっ。何をしているんだ」

 客間の方から怒鳴り声がした。


 群がる人らが騒ぐのをやめる。

 ドスドスと音を立てながら、ひげの生えた男が入ってきた。

 俺に少年を会わせた男だ。


 「お前たち、みっともないぞっ。資産は分けることになっていただろうに」

 張った声が耳に入る。

 すぐに群がる円を解き、少しよじれた通帳や印鑑を掴みあげる。


 「君、静はどこだ」

 まっすぐな瞳は俺をとらえていた。

 「隣です」


 軽く会釈をし、背を向けていた部屋の襖を開けた。


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