第二話
第二話
「ちょっと変わっているように見えるかもしれないけれど、いい人よ」
後ろを振り向き、俺の目を見る
「想像と、違ったでしょう」
図星を突かれたから、返答に少し戸惑った。
「とても若く見えます」
「ふふ。若いのよ、実際。今年で十九になりますからね」
先生と言っていたのに十九なのか。
「先生のことは、旦那様から何か聞いていますか」
「書道家の方だと聞いています。あと、体が弱いとも」
「ええ、肺を患っていましてね。空気の悪いところに居れないんですよ」
先ほどと同じように淡々と話す様子から、少年のことを告げるのはこれが初めてではないのだろうか。
そうこうしているうちに、二階の角部屋にたどり着く。
始さんが、松の木が描かれたふすまを開ける。
「ちょっと狭いかもしれないけど、遠野さんのお部屋ですよ」
一階と同じような畳の空間に、戸惑った。畳の部屋をあてがわれたのは、友人の家に招かれた時くらいだろうか。
実家にも海外にもなかった緑の空間が、これまで自分がいた世界と違うものだと見せてくる。
「あ、ありがとうございます」
「事前に送ってもらった荷物は、そこの隅においてあります。昨日お掃除をしたんですけれども、なにかあったら私に言ってください。用具庫を教えます」
「はい。あ、あと」
部屋を出る始さんを引き留める。
「名前。海外生活が長かったもので、ファーストネームで呼んでもらえますか」
気恥ずかしい。
ぱっと、始さんの目が丸くなった。
「ええ、わかりました。実之さん」
一人残された空間に、心が落ち着かない。
不意に障子を開けると、真っ白な光が部屋を照らした。
もう初春だというのに、パラパラと雪が降っていた。
そもそも雪を見ることすら、いつ以来だろうか。




