表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

第十九話

第十九話

 箸を小鉢につける。

 「先生。旦那様より十二月のヒイラギ展に向けて、作品を出してほしいとのことです」


 少年が頷く。

 陶器のような頬は、一定のリズムで咀嚼する。


 一晩共にしても、少年のなにがわかったわけでもなく、只々不変の時が流れていく。


 次の作品でも考えているのだろうか。


 ふと、少年の黒髪に目をやり、上から見下ろす。

 「先生、髪を結びませんか」

 横側にしゃがんだ。

 「結んであげますから」


 やっと少年の首が折れた。

 鎖骨まで掛かる髪を手に取り、手首に巻いていた白の髪留めを括らせる。


 黒髪が墨をかぶったように見えるな。

 朝日に照らされる薄緑の着物と共に、一まとまりになった黒髪は輝いて見えた。



 

 白い砂に色を付けるかの如く、少年の指先は絶え間なく波打つ。

 暇を持て余した虫たちが鳴き声を上げる。


 今回は一枚一枚違う文字を書いているのか、どれをとっても似ているものが見つからなかった。

 一筆、走らせると、また別の筆で続きを描く。

 不意にさわやかな風が、少年が背を向けている縁側から流れた。

 白い髪留めが、少年の髪を取りまとめる。

 「戸を閉めましょうか」

 

 「いや、このままで」

 こちらに目もくれず、その右手は波を打つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ