代金
陽向視点です
「ありがとうございました…!」
「いえいえ!当たり前の事をしただけなので…」
鼻をすすりながら何度も頭を下げる白坂さん。
里奈ちゃんとお別れしてから、少し清々とした顔になった気がする。
二人とも最後にお喋りできてよかった…
「えっと、それで代金の話なんだけど〜…」
「「えっ?!」」
代金?!私達何もしてないのに?!
ただ見守っていただけなのに?!この部長マジでクソだな!!
「あの、それっていくらくらい…?」
「んー…そうだねぇ〜、まだ君小さいしあんまり高いと払えないよねぇ…じゃあ五千円で!」
「高っ!!」
思わず声に出して突っ込んでしまう。
だってまだ中学生一年生なのに五千円って…大人がなさすぎる。
てか、代金なんて貰わないでしょ普通。
「え…そ、そんなに…どうしよう…払えないよ…」
再び涙目になってうろたえる白坂さん。
これは見てられない。
ツカツカと部長に詰め寄り、綺麗な腹パンを決める。
「ぐふぅ?!」とか汚い悲鳴をあげながら床に崩れ落ちる部長を踏んづけ、白坂さんに笑顔で話しかける。
「五千円も払わなくていいからね、タダでいいよ。」
「え…それは流石に…」
「いいのいいの。私達に払うんじゃなくて里奈ちゃんにお花買ってあげな。」
「っはい!ありがとうございました!!」
パアッと花が咲きほころんだように笑ってパタパタと教室を後にする白坂さんを見送る。
なんだかとても清々しい気分だ。
「な、なんで払わせなかったんだ?!」
「ブッ、アッハッハッハッハッハッ!!!最高だな陽向お前!!アハ、アッハッハッハッ!」
私に問い詰める部長と大爆笑する金沢先輩。
「いや、なんでって中一に五千円は高すぎますよ。」
「だってあのお札五千円したんだもん!!お礼としては当たり前でしょ?」
はぁ…だからってあの子に払わせなくても…
フツフツと怒りが込み上げてくる。
自己中心的すぎるこのクソ部長に対して。
「じゃかましいんじゃ!!中一に五千円は大金なんやぞボケェ!!そんなもん払えるか!その腐った頭で考えろやクソ部長!!」
ビリビリと辺り一面に私の声が響き渡る。
部長は拍子抜けした顔をして腰を抜かしている。
金沢先輩も笑うのをやめ、その場にジッと佇んでいる。
あぁ、またやってしまった。
ついカッとなると思っていることを全部言ってしまうのが私の悪い癖。
そのせいで友達なんて出来やしなかった。
せっかく…居場所が出来たと思ったのに…バカだ私。
「…ごめんなさい。取り乱しました。もう今日は帰ります、お疲れ様でした。」
きょとんとその場から動かない先輩たちを置いて教室を去った。
外はもう日が落ちて辺り一面をお日様が朱に染めていた。
最近サボりすぎだよね。
すいません…色々と忙しくて…
許してクレメンス_:(´ཀ`」 ∠):