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初めての仕事

陽向時点です

「白坂さん、遅くなってすいません」

「いえ…そんなに待ってないので…」


待ち合わせで言うテンプレな言葉を発しながら白坂さんの立つ場所へと走る部長。

その後ろからダラダラと歩く金沢先輩。あまりにも遅いので後ろから押す。


「チッ…」

「舌打ちしないで下さい。遅いのが悪いんです。」

「…めんどくせぇな」


ぶつくさ文句を言いながらもさっきより早歩きで歩く先輩の後ろをついて行きながら、そっと教室の中を見る。

端っこの机の上にちょこんと腰掛ける小さな女の子の姿が見えた。

…居た。

しかも白坂さんにそっくり…


じーっと見つめていると、視線に気がついたのかこちらを向いてくる女の子。


『おねーさん、私が見えてるの?』


ニコニコと笑顔を浮かべてこちらに駆け寄ってくる。

横で部長が白坂さんに何か説明をしているので声は出せない。コクコクと縦に頷けば、パアッと効果音がつくくらいのいい笑顔でぴょんぴょんはね回る。


『やったぁ!私のこと、見えてるんだね?一人で寂しかったんだ〜…』


キラキラと汚れを知らない眼差しで私を見上げる。

なんだか心が痛くなってくる…


「じゃあ、見てみますので白坂さんは隅の方にいて下さい。」

「は、はい…よろしくお願いします…」


どうやら説明は終わったようで教室内に入る三人の後を慌てて追いかける。

小さな女の子はキョトンとして、私の後をついてくる。


『あ、おねーちゃん!』


どうやら白坂さんの存在に気がついたようでピョコピョコとそちらへ向かう女の子。

目の前で手を振ったり、抱きついたりするが気づく様子はない。

当たり前だ。彼女は霊感がないのだから。


『おねーちゃん…気づいてよ…』


気が付いてくれなくて不貞腐れたのか、後ろの本棚の本を掴んで投げる。

バサバサッ、と音がして本が落ちてくる。


「ひっ…!」

「大丈夫ですよ。私達が守りますから。」


頭を抱えてしゃがみこむ白坂さんに寄り添って、胸ポケットから怪しいお札を取り出す部長。

辺りを見渡した後困ったように眉をひそめ、目を凝らす。

あ、これきっと見えてないんだろうなぁ…


『なんで…なんでおねーちゃんは私を無視するの…?里奈りののことキライ…?』


今にも泣きそうな顔をして服の裾をぎゅっと握り締める女の子。

どうやら里奈りのちゃんと言うみたいだ。

唇を噛み締めて真っ直ぐに白坂さんを見つめる。

その瞳には白坂さんしか映っていなかった。


「悪霊め…成敗してやる!とうっ!!!《悪霊退散》っ!」


微かに見えたのか、今里奈ちゃんが立っている場所にお札を投げる部長。

そのお札は真っ直ぐに飛んで里奈ちゃんのおでこに…


『おねーちゃん…どうしてこっち見てくれないの…?』


表面張力状態だった涙が溢れ、それを拭う為に手の甲でゴシゴシと目をこする里奈ちゃん。

その手によってお札は何処かへと弾かれる。

…運悪っ。


「何っ…弾かれただとっ…?」

「里奈…お願い…やめて…」


困惑する部長の背中に隠れて小さい声で懇願する白坂さん。

その声が届いたのか里奈ちゃんがピタリと止まる。


『私、おねーちゃんとお喋りしたくて…それが心残りで…ここにいるんだけど邪魔、なの?』


傷ついたように目を真ん丸に見開き、そっと手を伸ばす。

その手は空を切り、何も掴まない。

いや、掴めない。

ついに涙腺が決壊したのかボロボロと涙を零す里奈ちゃん。

地面に落ちる途中で光に変わり、キラキラと消える。


『おねーちゃんと…お喋りしたいよぉ…』


グスグスと鼻を鳴らしながらポツリと呟く里奈ちゃん。

どうしたら声を聞かせてあげられる…?


「里、奈…?」

『おねーちゃん…?』


突然、声を上げ部長の後ろから立ち上がり里奈ちゃんの前まで覚束ない足取りで進む白坂さん。

里奈ちゃんの前まで来ると背を合わせるためにしゃがんで、指先で涙をすくってあげている。

突然のことに驚いてポカンと口を開けたまま硬直する里奈ちゃんを強く抱き締める。


「ごめんね…私のせいで幽霊にしちゃって…ごめんね、里奈…!」

『うんん…おねーちゃんは悪くないよ。悪い子は私。でも、もう大丈夫!』


涙ぐみながら抱きしめ合う姉妹。

その間には切っても切れない絆が見えた。


『心残り、無くなったから。おねーちゃん、バイバイ。ありがと!』

「里奈…もう、逝くの?」


少しづつ体が光の粒子となって空へと帰る。

キラキラと教室を包み込む光。その中心には二人の姉妹が抱きしめ合っている。


『うん逝くよ。またね、大好きっ!』

「うん、私も…私も大好きだよ…!里奈…!』


クシャッ、とした笑顔を浮かべて別れを告げ合う二人。


『おねーさん、ありがと』


最後に里奈ちゃんの声が聞こえた。

教室には白坂さんの嗚咽が響き渡っていた。

サボりすぎましたすいません。

いやぁ、ちゃうんっすよ。

合作について考えてたんですよ…


あ、かにょんさんと合作やります!(宣伝)

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