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28話

 軽快な音楽と共に到着を告げる電子音声のアナウンスが流れ始める。


『まもなく終点東京です。中央線……』


 その声にざわつき始める車内で俺は今まで読んでいた資料を片づけて降りる準備を始める。

 ちらりと窓の外に目を向ければ駅が近付いてきているのようで徐々に速度が落ちていくのが通り過ぎる風景から分かった。


「やっと着いたか……」


 気の早い人たちが乗降口に集まり始めているのを見ながらも有る程度準備が出来た俺は凝り固まった身体を軽く動かす。

 既に列は座席数列の辺りまで伸びていて窓の外にはホームの端が見えてくる。


「えっと、次は在来線に乗り換えか……」


 荷物を持ってホームに降りた俺は事前に調べておいたホテルまでのルートを思い出しながら駅の中を歩く。

 ちょうどお昼という事も有ってお腹が空いてきた為に昼食を駅内で済ませる事を決めた俺は良さそうな店を探して周りを見た。

 あっ、そうだ。確か改札内に牛タンの食べれるお店が有った筈だよな。

 ギリギリの所でそんな事を思い出した俺は直ぐにUターンして近くの校内地図を確認する。

 確か奥の方に有った筈なんだよなー。って、有った有った。

 この地図によると地下一階か。他にも飲食店は有るけど、既に頭の中は牛タン一色だから無視無視。

 たどり着けば運良くそこまで行列は無く、直ぐに席に案内される。

 店内に漂ういい香りに空腹感を刺激されながら、席に着いて直ぐに定食を注文する。

 ちょうど案内された席がカウンターで調理風景の見える席という事も有って次々と焼かれ、皿に盛られて運ばれていく様子に自分の分が来るのを今か今かと待ちわびる。

 先に座っていた左隣りの人へと配膳されるのを横目でチラリと見たり、食べ終わって席を立つ右隣の人を見送って数分。ついに俺の分が届く。


「はぁー、美味そう……」


 生唾を飲み込みながら箸を手に取り、まずは小鉢に手を付ける。

 一口、二口食べた後に今度はテールスープを一口飲んで口の中を切り替え、遂にメインの牛タン焼きに手を付けた。

 固すぎず、程よい柔らかさの牛タンの次は麦ごはんを口に含む。……あぁ、これは手が止まらない。

 じっくりと味わいたい気持ちもあるがそんな事は関係ないとパクパクと付け合わせやテールスープを間に挟みながらも食べ続ける。

 一枚、また一枚と減っていく牛タンに悲しみを覚えながらも食べ続け、最後の一枚を名残惜しいが食べきった。

 空っぽになった器と満腹感を味わいながら水を飲んで席を立つ。

 最初に考えていたよりも予算オーバーした昼食代を支払いながらも満足感から今回だけはそんな事に目を瞑る事を決めて俺は店を後にした。




 チェックインを済ませて部屋に入った俺はノートパソコンを出して備え付けのテーブルに置いた。

 起動するまでの間に他に印刷しておいた講習会の案内に目を通す。


「明日は午前十時には会場に着いてないといけないのか」


 メールの受信を告げる音がパソコンから聞こえてきたのを合図にパソコンへと向き直るとメールの確認や明日の移動経路について確認を始める。

 メールは幸たちからの報告と珍しく時田部長からだった。

 なんだろうかと思って中を確認してみるとどうやら他社からの欲しい素材の受け取りと無理でなければという条件付きで潜って欲しいダンジョンの名前が書いて有った。

 まぁ、どちらもそこまで急いだ事でも無く、今回の1週間の出張中ならいつでも良いとの事だった。

 なら、講習会終了後に潜る予定だったダンジョンをこの頼まれた所にすれば良いし、帰る前日に素材の受け取れば良いだろう。

 そんな事を考えながら今度は移動経路を確認していくが、事前にだいたいは決めていたので再確認程度で問題無いだろう。

 表示した内容から恐らくいつも通りの起床時間と出勤時間で問題ない事が分かる。

 まぁ、そこまで訪れる事の無い都市だけに乗り換えの駅やその構内図、駅から会場までの経路はしっかりと確認して迷わないようにするけど。

 取り合えず、そんな事を考えながら確認を終えた俺はそのまま今日の夕食をどうするか考えながら近くの飲食店の情報を見始めるのだった。

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