27話
いつもの月曜日と同じように開発部での仕事を終えて探索者部門の部屋に入ると事務机に向かっていた桐野さんが入ってきた俺に気が付いた。
「あっ、おはようございます。人事部長から電話が有りまして連絡が欲しいとの事です」
「おはよう。相模部長が?」
何か連絡を貰うような事なんて有ったっけ。
特にこれといって思い当たる事なんてないんだけど、メールじゃなくてわざわざ電話って事は結構急ぎでって事なんだろう。
俺は立ち上げたパソコンで自分の予定を確認しながら受話器を手に取る。
『はい、人事部の綱木です』
「あっ、探索者部門の羽生です。相模部長に代わって貰えますか?」
『分かりました。少々お待ちください』
どうやらちょうど良いタイミングだったようでそこまで待たずに直ぐに相模部長に繋がる。
『もしもし、相模です。電話してくれてありがとう』
「いえ、それで何か有ったんですか?」
『えっと……、来週なのだけど、協会からの講習会の案内が届いたのよ』
電話口から微かに聞こえるカチカチという音から恐らくメールを確認しているのだろう。
同じように俺もメールの確認や桐野さんから渡された書類に目を通しながら相模部長の言葉に聞き返す。
「講習会ですか?」
『えぇ、今回は企業を対象としたものらしくて今から日程とかの書かれたメールとその添付ファイルを送るから確認して欲しいの』
「あっ、今届きました。って、結構大人数でやるんですね」
開いたファイルに書いて有るのを見るとどうやら他社との意見交換などの交流も有る講習会だというのが分かる。
現状で分かる事としては諸外国も含めた現状の確認などの説明や協会からの補助の強化とその説明などや懇親会も予定されていた。
ただ、気になるのは参加者は実際に探索者資格を持っている者と書かれている事に数日間の予定になっている事だな。しかも、初日以外は時間しか書いてないのが余計に気になってしまう。
『それでそこに書いて有る通りに資格を持った人が対象だから貴方に参加して欲しいのよ。現状ではそこまで忙しくなるような事も無いし、ついでみたいな形にはなるけど、講習会の周りのダンジョンについてやウチの商品が実際にどれくらい使われているかの確認もやって欲しいの』
「それは良いんですが、他のメンバーはどうすれば?」
『他の人たちも来週に関しては日野江ダンジョンじゃなくてこの傍のダンジョンで同じ事をして貰いたいと思っているわ』
「はぁ、それは良いと思いますが……」
『なら、それでお願い。あと、羽生君にはそれ以外にもやって欲しい事が有るから申し込みとかが済んだらまたメールするから確認をお願いします』
「分かりました。では、来週の予定も含めて他のメンバーと話し合って準備していきます」
電話が終わると話していた内容が微かに聞こえていたようでみんなの視線が俺に集まっていた。
取り合えず、そんな周りの様子に気が付いてない素振りで受話器を戻しながらパソコンに目を向けて来週のスケジュールをもう一度確認した。
「進さん、結局なんの電話だったんですか?」
「そうそう、私たちにも関係有るんでしょ?」
話を切り出さない俺に二人が聞いてくる。
まぁ、話さないような内容じゃなくて話さないといけない内容だから答えるというか話すんだけど。
「あぁ、来週の探索とかについてだったよ」
「「「来週?」」」
どうやら気になっていたのは桐野さんもだったらしく、俺の言葉に二人と一緒になって声を上げた。
「なんでも協会から探索者資格持ちを対象とした講習会が来週に有るから参加して欲しいって話。で、開催地的にも数日間の出張になるからその間は二人ともいつもみたいに日野江ダンジョンに潜るんじゃなくて一人ずつ別のダンジョンで市場調査して欲しいらしい」
「へぇー、珍しいですね。指示が来るなんて」
「そうね。でも、内容的には誰でも出来そうだから今後も偶に有りそうな感じね」
どうやら二人も問題なくやってくれそうだ。
「そういう訳だから来週に関してはそのつもりで行くダンジョンとかを決めようか」
「まぁ、一人で深く潜る訳でも無さそうだから結構な候補数は有ると思いますよ」
そう言って桐野さんがずらっと候補になりそうなダンジョン一覧をパソコンに出してくれる。
「本当ですね。これだけ有ると一日毎にダンジョンを変えても良いんじゃないんですか?」
「確かに。そのついでに軽くそのダンジョンの傾向っていうか情報収集もやれば今後にも繋がるしな」
「じゃあ、私と幸太で一日毎に潜るダンジョンを決めましょ」
二人は既に来週の事で頭がいっぱいなのか、和気あいあいと桐野さんを交えてダンジョンについて調べ始めた。
「はぁー、俺も来週の準備しないとダメだな……」
二人をしり目に俺は送ってもらったメールを確認しながら講習会に向けて宿泊施設や交通手段の確認を始めるのだった。
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