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26話

 会社見学の有った次の日、俺たちはいつもと変わらないダンジョン探索をしていた。


「そう言えば、会社見学にも来てた助けた子って、そのまま選考に進むんですかね?」


「流石にそれは分からないなー。あの後にちょこっと人事の人に会ったけど、特に何か言ってくることは無かったし」


「へぇー、幸太はあの子の事が気になるんだー?」


「そ、そんな事ないですよ!? ただ、新しく加わるなら少しでもまともと言うか……」


 あー、確かにそうだなっと思ったのは俺だけでは無く、幸太を揶揄っていた幸も同じだったようで振り返ったまま頷いていた。

 人が増えるのはそれだけ色々と楽になるから嬉しいんだけど、一緒にダンジョンに潜るならある程度の人柄とか性格は気にしたい。


「そ、そう言えば、アメリカだったかロシアだったかの探索チームが百層に到達しそうってニュースが有りましたね!」


「あぁ、確かアメリカだったと思ったけど、流石精鋭の特殊部隊って感じだな」


「日本も頑張ってるっぽいけど、結局は民間人チームだから仕方ないわよ」


 まぁ、自衛隊関係で何かあるとその中身とか意味とか無視して騒ぐ人たちも多いから仕方ないと思うけど。

 ダンジョンが生まれた当初は自衛隊が先陣切って調べたり、それに合わせて警察も動いたりしてたけど、非難も有って今じゃ探索者ライセンスを取った民間人チームが日本で一番深くまでダンジョンに潜ってるから装備とかを考えると他国よりも遅くて当たり前だよな。


「百層に到達する事で何か変わる事とか出てくると思います?」


「どうだろうな。五十階の時はその辺りからリターンストーンが出るようになったけど」


「でも、何か変化が有っても良いと思うわ。できれば一度たどり着いた階層に入り口からワープできるみたいな」


「あー、分かるかも。帰りに関してはちょっと多用するには厳しいリターンストーンが有るからいいけど、行きはは深くなればなるほどキツイから」


「あれですか。ゲームとかで良くある感じで一定の決められた階層に行けるってのですよね?」


 幸の言いたい事は本当に良く分かる。

 幸太が言うようにゲームとかで有るあんな感じで片道で良いから有ると本当に楽だろう。

 三十一階からは本当に次の階に行くまでに時間がかかるって聞くし、五十階まででも一週間以上かかるらしいからそれよりもってなると……。


「確かに便利にはなると思うけど、そう都合良く変わるか?」


「さぁ? でも、管理者って謎の存在がダンジョンを急に作るぐらいの事が有ったんだから、今更何が起きても不思議じゃないと思うわよ」


「そうですよ! 何より本当にそれが有れば俺たちだってこれから楽になる可能性が有るじゃないですか!!」


 そうなんだけど、それで会社からの無茶振りとかが来るようになると大変になりそうだから嬉しくない。まぁ、絶対にそうなるとは分からないからあれだけど。


「まぁ、あまり期待しないでいるのが一番だろう。期待し過ぎると違った時のがっかりがデカいし」


「それは……、そうですけど」


 あまりにも入れ込んでいるような幸太の様子につい口を出してしまうが、本当にそれぐらいで考えていた方が後で楽なんだよね。

 実際、今までの経験でもそうだったから……。


「それよりもそろそろお昼にしませんか?」


「良いわね。私もお腹空いてきた所だったし」


「分かった。じゃあ、もう少し行くと有るセーフティーエリアで昼飯にしよう」


 そう言うと嬉しそうに歩くスピードが上がった幸太に遅れないよう俺と幸は後を追うのだった。




 という事で取り出したのは、今回のテスト品でも有る提携企業から提供されたダンジョン飯シリーズの揚げ物ジャンルから豚カツとキャベツにご飯、お味噌汁のみそ玉。

 調理用のマナ式コンロに鍋を載せて湯を沸かしと一緒に豚カツの真空パックを入れておく。

 その間にこれまたテスト品の特殊な形をしたマナ式飯盒を出して米を入れて鍋の上に置く。

 この飯盒の良いところは水を必要としない事と我が社のマナ式コンロや関係商品と連結できるように造られている点かな。

 特に連結機能は大体の物と合うようになってるし、連結する事でマナ式の能力が向上するようになってるから通常よりも早く調理できるようになるのは良い事だ。


「揚げ物なんですか、今日は?」


「あぁ、中身自体は提携先が作って入ってる真空パック自体をウチが担当したって感じだな」


 お湯の中で真空パック内で揚がってる様子は不思議というか面白い。

 どうやら幸太もその事に気が付いたようで驚いたような声を出しながらその様子を見始める。

 

「よし、良さそうだな」


「完成ですか?」


「あぁ、幸もできたからなー」


「分かったわ」


 二人が直ぐに食べ始めれるようにささっと盛り付けて差し出すと直ぐに食べ始める。

 その様子を見て俺も自分の分を食べ始めた。


「特に変な味になるとか無くて普通に食べれますね」


「そりゃ、調理法が少し変わってるだけで作ったのはしっかりした食料品メーカーだからな」


 幸太の言う通りに食べてみて何か違和感を感じたり、不味いって事も無いからウチで作った入れ物も今回使った技術も何の問題も無い事が分かった。

 これは会社的にも探索者として考えても良い物が出来たと思う。

 はっきり言ってダンジョンで揚げ物を作ろうと思うのは手間や油の準備に処理を考えたら無い。だからこそ、こういった物が出来るのは良い。


「幸はどう思う?」


「えぇ、普通においしいと思うわよ」


「なら、問題なさそうだな。このまま報告書書いて……、あとは種類を増やして貰えばいいか」


 頷く二人の姿を見ながらも来週の予定について頭を悩ます。

 取り合えず、豚カツ以外だとメンチカツやロースカツ以外にもコロッケ系までは確実に出来るだろう。

 ちょっとどうなるか分からないのが天ぷらで、あとはその場で調理する用の機材開発を提案してみるのも良いかもしれない。

 そんな事を考えながら俺は食べるのを続けた。

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