19話
色々あり、遅れてしまって申し訳ございませんでした
属性的にも効果が有ったのか傷が癒える事無く弱っていく鬼の様子に私は勝ちを確信した。
何よりやっとの事で使えるようになった魔法は期待していた以上の力を発揮している訳だからもう一体同じ強さのイリーガルが増えたとしても負けるとは思えないし、今更、通常のボスが湧いてきたとしても一振りで終わらせれると思う。
あまり考えれない展開を頭に思い浮かべながらも鬼を切り付けていく私だったが、遂に鬼の方が私の攻撃に耐えれなくなったのか残っていた腕の手首から先を斬り落とすことが出来た。
「行ける!!」
鬼は既に両手を失って、今も痛みに身を捩らせているからそう思ってしまうのも仕方無かった。
実際、今までの鬼の攻撃は両手を使ったもののみだった事を考えると蹴りや噛みつきをしてくる可能性は有っても魔法を使ってきたりする事は無いでしょ。あとは、今まで使わなかったけど再生能力が有って腕が生えてくるってのは流石に考え過ぎでしょうし。
そう思いながら痛みで大暴れしている鬼が変なことを起こさないか警戒しながら最後の一撃を与える為に近づく。
「これで、終わりよ!」
私が近寄ってきたのに気が付いた鬼が噛みつこうとしてきたのに合わせて私はその額に剣を突き立てた。
徐々に力が抜けていき、目も虚ろとなっていく鬼から剣を抜いた私はそのまま蹴り倒して鬼から距離をとる。
「大丈夫か、幸?」
「やっと終わりましたね……」
「えぇ、これで次に進めるわ」
ゆっくりとその姿を塵へと変えていく鬼を眺めながら立っていた私に進と幸太が近寄ってきた。
一応、他に何か問題が起きないかを確認しながら鬼が消えたことを確認していると次の階へと続く扉がその姿を現した。
「忘れ物が無いようなら次に行ってキャンプを張りましょう」
「分かった。良さそうな場所を知っているのか?」
「えぇ、三十一階は全体的にノンアクティブの敵ばかりの森が広がってる階層よ。だからイリーガルが下から来ない限り手出ししなければ安全に過ごせるわ」
「へぇー、そうなんですか」
「結構、休憩しているパーティーもいるのよ」
話しているうちにボス討伐報酬を回収している進たちを確認しながら私は一応周りを警戒していた。勿論、追加でモンスターが出るはずも無く、進たちの作業が終わると扉へと足を進める。
進たちを案内するように進んだ私の目の前に現れた光景は言った通りの風景だった。
広がる緑は今までの洞窟内のような風景とは違って窮屈感を感じさせる事は無く、上を向けば薄暗く夕焼けが広がっているのが見えた。
そんな風景に驚いている進たちを少し笑いながらも私は奥へ奥へと進んでいく。
やっぱりいつ来てもこの階層は平和な時間が流れていて今までの階層が嘘のように感じる。
目の前をゆったりと通過していくモフモフな羊のモンスタースリーシープの姿に武器を構える進たちを宥めながらいつも――前のパーティーで使っていた場所まで案内した。
「ここでキャンプを張りましょう」
「へぇー、こんな場所も有るんだな」
「良い場所でしょ?」
「良い感じで切り開かれてるような感じで近くに川が有る場所なんて取り合いが酷そうな気がするんですが……」
確かに幸太の言う通りここは立地的に考えると良い場所なのは間違いないんだけど、この階層で言えばここに似た場所は数多く存在しているだけにそこまで取り合いが酷くなることは無い。
「他にも似たような場所がいっぱい有ってね、そういった事も少ないのがこの階層の特徴よ」
「そうなんですか。なら、安心して過ごせそうですね」
「はいはい、そろそろ準備を手伝ってくれよ?」
「あっ、はい、今行きます!」
そんな二人の姿を見て私も焚火の準備を始め、ゆったりとした時間の中で三十階を三人で突破した最初の日は過ぎていくのだった。
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