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2話

 どうしてこうなった……。

 朝の事をすっかり忘れた昼過ぎ、俺の目の前には人事部部長の相模仁美(さがみひとみ)と部長がいた。


「という訳で貴方には第二開発部のテスターも兼ねてダンジョンに入ってほしいのよ」


「そういう事だ。頼めないか、羽生君」


 まさかの話にどう答えたものかと悩んでいると二人は待遇面などを話していなかったと話し始める。


「あっ、基本的に月曜を除く平日はダンジョンに通ってもらって休日は変わらず土日祝よ。それにどれほど下の階層に行くかとかは羽生君に任せるわ」


「それで月曜日は開発室の方に顔を出して持ち込んだ開発物のデータの整理とか報告をやってほしい。それによって改良するかどうかを決めたりするから」


「そうそう、深くまで言って休みの日に地上に戻ってこれないようなら代休を取ってもらう事になるし、月曜日には出来るだけその週の予定を時田部長に伝えて貰うわよ」


 あぁ、この流れからすると既に俺がダンジョンに行くのは確定なんだな。まぁ、仕事っていうなら行くけどさぁ。

 それにもともと会社(ウチ)と契約してた探索者パーティーが全滅までいかないまでも負傷者多数で活動できなくなった代わりらしいし、仕方ない事だよな。


「それから給与的な事だけど、まずこの書類を渡しておくわね」


 そう言って渡されたのは大きく特別契約探索者申請書と書かれた書類だった。

 何枚か有るので軽く目を通してみると探索者協会への企業付き探索者としての登録やダンジョン関係の取得物に関して換金や返還、税金関係の申請書だった。


「まぁ、見て分かると思うけど、それを会社から協会に提出する事で色々と手間の掛かるダンジョン関係の手続きを羽生君の代わりに会社で対応できるようにする物よ」


 だから忘れずに直ぐに提出してねと言ってくる相模部長。


「それとダンジョンでの稼ぎはボーナスにプラスして支給する事になるから通常よりも貰えるわ」


「そうなんですか?」


「えぇ、協会からの支払いは会社で一旦預かってそれから支給されるようになるから」


 頑張れば頑張っただけ貰える訳ね。ただ、それで無理して怪我してたら意味は無さそうだけど。

 それにダンジョンに潜る事になるなら装備とかも気にしないとダメだろうから結局はそのボーナスもそのままそっちに取られるだろうな。まぁ、話の感じだと通常のボーナスも有るっぽいからなんとかなるだろう。


「そうそう、保険も対応したものになるのだけど、その分今までより少し多く引かれる事になるのは覚悟しておいてね」


 そうだった。今のご時世、探索者向け保険が数多く存在する。勿論、企業によっては独自の探索者社員を雇っているところも有るぐらいだからそういった保険も有るのだろう。

 今回はそれに変更する事になったってだけなんだろうけど、掛け金が上がるのは仕方ないだろうな、それだけ危険度が段違いな訳だし、それを承知でダンジョンに潜るんだから。


「取り合えず、ダンジョンに潜るのは来週からで良いから今週は引き継ぎや準備に費やしてね」


 そう言って相模部長は部長に後はお願いしますと言って部屋から出ていった。

 それを見送った部長は今までの様子が嘘のように申し訳なさそうにしながら俺を見た。


「すまないね、羽生君。実は昨日の幹部会議中に緊急の連絡が来て契約パーティーの事が分かったんだ」


「それで、泊まり込みに?」


「あぁ、実は上層部だけで計画していた探索者を用意しないとダメな企画が有ってな、それも近日中に実行予定だった物なんだ。それで代わりを探そうにも既に夜の時点でそんな事も出来ず、今日の朝の段階で協会等にも問い合わせたらしいが代わりになりそうな探索者は既に他社と契約済みかダンジョン内で戻ってこれない状況だったんだ」


「で、ちょうど悩んでいたところに俺が出社してきたと……」


 頷く部長によるとそれとは別に前々から社内で探索者を育成していくという話も有ったらしく、今回の事も踏まえてそれを念頭に入れての俺への話になったとか。


「勿論、今後も社員とは別に契約探索者は作る予定で社員の方は資材確保やテスターとしての意味合いが強くしていく予定だ」


「じゃあ、最下層を目指さないといけないって事は無いんですね?」


「まぁ、無理して怪我されて業務が滞った方が問題だからね」


「わかりました。どうせ、俺に関しては強制っぽいですし、探索者としてダンジョンに行くことにします」


「すまないね。でも、本当に大丈夫なのかい?」


 不安そうに聞いてくる部長。

 まぁ、仕方ないだろう。確かにライセンスを持っていると言ってもダンジョンに潜っているようには見えないからね、俺は。


「えぇ、これでも地元のダンジョンでパーティー組んでなら三十階辺りまで、ソロでも十五階までは安定して潜ってましたし、こっちに来てからも休みを利用してダンジョンに潜る事はありましたから」


 もっとも運動不足解消の意味合いを持ってですがと笑いながら言うと部長はなんとも言えない顔をした。


「そ、そうか。まぁ、君の事だから無理はしないだろうから大丈夫なんだろう」


「そろそろ戻りましょうか、部長」


「そうだな。早く戻って皆に知らせないと来週から大変だからな」


 今後の予定を考え始めたのか、思考顔になりながらも扉から出ていこうとする部長の後に続いて俺も部屋から出た。

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