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037,ゴーレムAI



 多少のトラブルもあったが、無事にオークションを終えることができた。

 最初の目的である魔導書も手に入ったし、ラッキーなことに魔法式の本も手に入った。

 オークションは宵闇の時間帯に始まったので、もうすっかり辺りは真っ暗だ。

 揺れる馬車の中は、照明の魔道具に照らされているが、本を読むには少々心もとない。

 だが、そんなことは関係ないとばかりに、落札したばかりの本を黙々と読んでいるふたりがいる。

 酔っても知らないぞ。


 ベテルニクス姉妹はもう一台の馬車に乗っているので、こちらにはいないが、オレの屋敷で一休みしていくそうだ。

 無論、お泊りはすでに断ってあるが、その代わりデザートの試食会をすることになった。

 宮園嬢がリクエストしたプリンやアイスクリームなんかを出す予定だ。

 モーリッドには、屋敷にある冷蔵庫に欠かさず作ってもらっているので、突然の試食会でも問題ない。

 たくさん作っておかないと、ミリー嬢の別腹が満足しないのだから仕方ない。

 大量のデザートを食後に食べているのだから、今度こそは太るのではないかと思ったが、ミリー嬢の体に変化は一切ない。

 彼女は本当に人間なのだろうか。

 たまに、疑いたくなる。


 ちなみに、デザート以外にも魔法式を書いているときにも様々なお菓子をぱくついている。

 それはもう、彼女にとって仕事中にはなくてはならないものになっているようで、お菓子がきれるとペンの動きが鈍るほどだ。

 もしかして何かの中毒とか……。


 まあ、お菓子さえ切らさなければいいので、厨房が常にフル稼働しているうちでは大した問題ではない。

 富裕層でも贅沢品の冷蔵庫もあるしね。

 しかも、ミリー嬢に魔法式を新たに書いてもらった大型バージョンだ。

 美味しい料理を食べられると知るやいなや、あっという間に書き上げてくれたのだから頼もしい。

 この腹ペコ魔人めっ!


「それにしてもソウジ様。このプリンとアイスクリームは、いくらでもお腹に入ってしまいますね」

「あまり食べすぎると、お腹が冷えてしまいますので、ご注意ください」

「……確かに非常に冷たいですので、量を考えたほうがいいですが、その」

「言わんとしていることはわかります。ですが、アレは例外ですから……」


 権力者に弱いミリー嬢にしては珍しく、というか初めてじゃないか? 試食会に参加しているのだが、デザートを美味しそうに頬張っている姿は本当に幸せそうだ。

 皆と比べても明らかに大きな器と、その量を見なければ。

 さすがに落札した魔法書を持ち込んではいない。


 ……別室でデザートを食べている宮園嬢は持ち込んでいるようだが。


 オレの目がないことをいいことにやりたい放題のようだ。

 まあ、さすがにあとで説教だが。

 ちなみに、エドガーからの密告である。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「本日はありがとうございました」

「いいえ、私も楽しかったですから……」

「お姉さまも泊まっていったらよろしいですのに」

「お、オーナ! 私だって泊まりたいですけど、さすがに初めてはふたりきりのほうが……」


 相変わらず積極的なのかヘタレなのかわからないミーナ嬢だが、そういうことは普通に言っちゃうんだよね。

 小声ではあったけど。


 今日はオークションで疲れてしまったのか、宮園嬢はお風呂を出る頃にはうつらうつらしており、ミリー嬢からの申し出もあって使用人寮の一室ですでに寝かしつけてある。

 いつこちらに越してきてもいいように、彼女のために空けてある部屋だ。

 なので、その部屋で寝る分には何の問題もない。

 宮園嬢はそのことを知らないけど。


 ミリー嬢は元々こちらに住んでいるし、宮園嬢も泊まっていく。

 そのことでオーナ嬢がミーナ嬢に発破をかけているが、ヘタレさんにはハードルが高いご様子だ。

 オレにとってはありがたいことだが。

 まあ、本当に泊まっていくとしたら強制睡眠の魔道具を開発済みなので、それですみやかに眠ってもらうつもりだ。


「それでは私たちはこれで失礼させていだきますね。次回の試食会も楽しみにしています」


 完全に尻込みしているミーナ嬢に発破をかけるつもりで、耳元で何かを吹き込んでいたオーナ嬢だったが、ゆでダコ状態になってしまった自身の姉に呆れ、馬車に押し込むと、別れの挨拶を交わす。

 あまりやりすぎると逆効果だと思うが、オレにとってはむしろ好都合な状況になっているし、特に何も言わずにそのまま挨拶して別れる。


 屋敷に戻ると、宮園嬢を寝かしつけていたはずのミリー嬢がなぜか待っていた。

 その手には大事そうに今日落札した魔法式の本を抱えている。


「ミドー様! 今日は私のわがままを聞いてくださり、本当にありがとうございました! もっと期待に添えられるように頑張ります!」

「ええ。無理はしないようにお願いしますね。ミリーさんほどの優秀な人材はいないのですから」

「そそそ、そんなことはぁ……。はうぅ……」


 律儀に今日のお礼を言うために待っていたようだ。

 そういえば、宮園嬢からはお礼の言葉は聞いていない気がする。

 あの娘にはミリー嬢の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

 腹ペコ魔人が感染したりしたら困るのでやらないけど。


 もじもじしているミリー嬢を促して、それぞれに部屋へと戻る。

 だが、ミリー嬢はもうちょっと仕事部屋で魔法式の本を読むそうだ。

 うちの照明の魔道具は魔法式を改良してある特別なものだし、夜でも本を読むのには十分な光量だ。

 ただ、根を詰めすぎて体を壊しても困る。

 メイド長のケイシーにあまり遅くなるようであれば注意をするように申し付け、オレは自室へと戻った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 オレのゴーレムたちのために、自室の作業部屋はかなり拡張されている。

 部屋の壁をぶち抜き、隣室すべてと繋げてしまったのだ。

 基本的に屋敷の部屋はほとんど使っていないのでできる芸当だ。

 すべてのドアには厳重に鍵をかけており、窓も潰してあるので外からは中の様子を伺えないようになっている。

 掃除も、清掃の魔道具を一定時間ごとに自動的に発動するように改良して設置してあるので、ある程度問題はない。

 ただ、やはり人の手で清掃したほうが細かいところまで綺麗になるので、たまには作業を停止させて掃除をさせたほうがいいだろう。


 現在、ゴーレムたちは迷宮探索用の魔道具の大量生産班と、屋敷で使っている日常用の魔道具の生産班、ミリー嬢の魔法式を形にする班とその他の班に別れて作業を行わせている。

 それぞれに投入されているゴーレムの数は違うが、今のところ予備の予備まで完備している状態なので、魔道具の数に問題はない。


 一番数が多い、ミリー嬢の魔法式を形にする班では、今現在面白い試みが行われている。

 宮園嬢が教えてくれたゴーレム使い(落ちこぼれ)としての能力を時間をかけて確認し、その結果を形にしている最中だ。


 オレのゴーレムは、ほかのゴーレムよりもどうやら実行可能な命令の範囲が広いらしい。

 たとえば、一般的なゴーレム使いがゴーレムに命令すると、壱のことを壱までしか実行できない。

 だが、オレのゴーレムは現在、壱の命令に対して参までの対応をこなす。

 壱の命令中に起こったトラブルなどを、弐の行動や参の行動で対処できるのだ。

 これは一般的なゴーレム使いのゴーレムでは不可能なことであり、その対処のためにゴーレムから離れず、新しい命令を与えている。

 ほかにも理由はあるが、ゴーレムから離れられない一番大きな原因でもある。

 だが、オレのゴーレムはトラブルをある程度ゴーレム自身で対処ができるため、ずっとついている必要性がない。


 これは以前からもわかっていたことなので、真新しいことではないが、この割と柔軟な対処が可能な能力を詳しく知ることができた。

 人間ほどではないが、オレのゴーレムは思考をしているのだ。

 小さなAIを搭載していると言ってもいい。


 さらに、いくつものゴーレムを繋げる魔法式をミリー嬢に開発させることに成功したので、小さなAIたちは、今や数多くのAIたちの集合体、マザーゴーレムとして自室の作業部屋で稼働している。


 この魔法式をミリー嬢に頼むのに、どうやって説明したらいいのか考えるだけで数日を要したし、さらに理解してもらうまでにはそれなりの日数を要した。

 だが、それだけの価値があるものができたので、オレは大変満足している。


 マザーゴーレムのおかげで、ゴーレムたちのAIを好きなように書き換えることができるようになったのだ。

 容量は小さいままなので、ひとつひとつのAIの処理できる範囲は小さい。

 だが、いくつもゴーレムを繋げることにより、簡単にではあるが目的の行動をプログラミングできるようになったのだ。


 その中でも今一番開発が進んでいるのが――


「まだ若干のタイムラグがあるが、十分に動かせるようになってきたな。やはり五指の処理が一番のネックだったが、及第点だろう」


 金属の骨組みだけの状態ではあるが、人間の腕を模した塊がオレの思考を受けてなめらかに動作している。

 これは、思考を魔力変換して動かすことができる魔導義体の義手だ。

 この世界にも義手や義足といったものは存在するが、基本的には動かせない。

 だが、オレが開発したこの魔導義手はほぼ人間の腕と同じ動作が思考だけで可能だ。

 まだ、少々のタイムラグはあるが、最初に作ったものに比べれば遥かにその速度は上昇している。

 正確性に関しては柔軟なAIのおかげでかなり楽をできた。


 肉体改造に失敗し、障害を負ってしまった少年ふたりのために開発しているものだが、ほかにも色々と技術は応用できるのでこれからもこの研究は続けるだろう。


 リハビリを続けている少年だが、最初と違って最近はあまり成果は上がっていない。

 そのため、魔導義体に切り替える方向で考えているのだ。

 うまくリハビリが進まないことにかなりストレスを感じているそうだし、限界に達する前に導入するつもりだ。


 もう少し我慢していてほしい。



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モチベーションがあがります。

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