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010,観察



 本日は、職業ギルドにてゴーレム使いの教師をしていたドワーフの女性を訪ねてみた。

 職業ギルドの受付で聞いたところ、ちょうど授業の準備のためにギルド内にいるそうなので、タイミングもよかったようだ。

 理由としては、どうにもおかしいオレのゴーレムたちについて助言をもらうためだ。


「――というわけで、どうも私が生成するゴーレムは十センチ以上の大きさにはならないようなのです」

「……こんな小さなゴーレム初めてみました。一体どうやっているんですか?」


 しかし、可愛らしい少女のような見た目の先生――ジートさんもどうやら初めてみたようだ。

 そりゃあ、教科書にだってゴーレムの大きさは変えられないと明記されていたんだから仕方ない。


「それがよくわからないのです。私も一般的な大きさにしてみようと努力したのですが、どうにもこの大きさ以上にはならないようでして」

「不思議ですね……。私のゴーレムは三メートルの大きさ以外では生成できないので……。すみません、さっぱりわかりません」

「先生でもわかりませんか……」

「お役に立てず、すみません……」


 申し訳なさそうに小さな体をさらに縮こませる先生だが、その可愛らしい見た目もあって、端から見たらオレがいじめているように見えるのではないだろうか。


「いえ、アポイントもなしに訪ねてしまって、こちらこそ申し訳ありませんでした」

「そんな! 全然大丈夫ですよ! またわからないことがあったら何でも質問してください! ……その、答えられるかはわかりませんが」


 解決はしていないが、用事も済んだので誰かに見られる前に退散する。

 ジートさんは小さな体で元気に手を振って見送ってくれた。

 見た目だけじゃなくて中身も若々しい人なのかな?


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 帰り際に、職業ギルドの受付でゴーレム使いの公認免許の受験日を聞いておいた。

 ゴーレムは一応生成できて、自由に操れているのだから、教科書に書かれている公認免許取得の条件は満たしている。

 ただ、やはり大きさで待ったがかかる可能性があるので、だめならだめで仕方ない。

 受かったら儲けものの精神で行くことにした。


 さらに、魔法関連の教科書と魔道具技師の教科書も買い取りしておいた。

 魔道具を自作できればオレの目標の達成もしやすくなるかもしれない。

 むしろ、魔道具は必須だと思ったほうがいい。

 なので、やれることはできるだけ試してみる。


 まあ、ぶっちゃけ魔法や魔道具に興味があるってのも大きな理由ではあるけど。


 一先ず大荷物になってしまったので、辻馬車を拾って屋敷に戻り、執事長のモリスたちに手伝ってもらって自室へと運び込む。

 大きな本棚に収まっている本のすべてが教科書というのも、なかなかに勤勉な感じがする。

 ただ、まだ九割以上は空いてるんだけど。


 まずは、魔法の初歩の初歩あたりから読んでいこう。

 目指せモリス超えだ。


 ただ、受付で最初にお勧めされた魔法の教科書はモリスから教わったことが大半をしめていた。

 魔法も基本的には魔力操作ができなければ扱うことができない。

 なので、この本に書かれていることは問題なくできるということでもある。

 伊達に何日も不思議な踊りを踊っていないのさ。


 次の魔法の教科書を手に取り、ぱらぱらと読んでいく。

 教科書にも質の悪い紙が使われているので、日本で売られているような本ではない。

 紙に若干の厚みがあるので、ページ数が多いとどうしても大きく重くなってしまう。

 それでも、羊皮紙やパピルスなんかと比べたらずっとマシだとは思うけど。

 何冊も持って帰ったことでわかるように、教科書一冊自体ではそれほどページ数はない。

 書かれている文字も限界まで詰め込むようなものではないので、読み終わるまで大した時間はかからない。


 ただ、軽く実践しながらだと、一向に先に進まないのは魔法初心者には仕方ないことである。

 モリスが使えた初歩の初歩という魔法。

 実際にやってみると、これがまた難易度が高いこと高いこと。

 技術として確立されていると謳われている割には、何言ってるのかさっぱりわからない。

 文字は読める。

 日本語にしかみえないから。


 だが、意味がわからない。

 明らかに初心者用の教科書に書くことではない内容が書かれている気がする。

 むしろ、この教科書を監修した人物は教える気がないんじゃないだろうか。


 だが、実際に職業ギルドの座学や実技を受講して、魔法使いとして公認免許を取得している人はいるのだ。

 かなり数は少ないみたいだけど。


 一度読んだだけで諦めるのも癪だ。

 まだ夕飯までは時間があるし、ネバーギブアップの精神で頑張ってみよう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今日も職業ギルドに来ている。

 だが、本日の目的はゴーレム使いに関してではない。

 目の前では、何人もの未来の魔法使いたちが教師の指導に従って、魔法を発動しようと頑張っている。


 そう、魔法使いの実技の風景を覗きに来たのだ。

 実技自体は職業ギルドの所有するグラウンドで行われている。

 ゴーレム使いの実技に関してもここで行われるようだが、オレはそれらには出ずに試験だけを受けるつもりなので関係ない。

 だって、ゴーレム生成も操作もできてるし。


 グラウンド自体には誰でも入れるが、実技を受講していないものは教師たちに近づいてはならない規則になっている。

 まあ、罰則などない、あってないような規則なので、誰も気にしていないのだけど。


 でも、一応守っているオレは遠目に魔法使いの実技を見学しているだけだ。

 しかしそれで十分だ。

 先程から見学していると、実技の教師が魔法を使うときに彼の体を流れる魔力が一定の動きをみせている。

 生徒たちも惜しいところまでいくものは、教師と似たような魔力の動きをしているのだ。

 なんとなくその動きはどこかで見た覚えがある。

 なんだったかと、思い出そうとしているが、いまいち思い出せない。


 ただ、みただけで出来るほど魔法は甘くない。

 教師の魔力の動きに似せて何度かチャレンジしているが、一向に魔法は発動する気配すらみえないのだ。

 やはりなかなかに難易度が高い。

 初歩の初歩とはいえ、こうも難易度が高いのではモリスが挫折するのも頷ける。


 魔法の実技が終わるまでずっと見学し続けたが、結局一度も魔法は成功することがなかった。

 ちなみに、生徒でひとりだけ魔法の発動に成功したビーストがいた。

 彼女が魔法の発動に成功したときの、驚きと喜びに染まった笑顔は印象的だった。


 早くオレもあんな顔をしてみたいものだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 本日の夕飯もうどんだ。

 出向料理人のモーリッドの試行錯誤は未だに続いている。

 今日で何日連続のうどんかは覚えていないが、一度として同じものは出てきていないのだから大したものだ。


 ただ、夕食限定にしてもらっているので、毎日三食うどん三昧というわけではない。

 さすがにそんなことされたら外で食べる。


 今日のうどんは、チーズをたっぷり乗せて焼いたラザニアモドキのようだ。

 もちろん、チーズの下はうどんだ。

 普通のラザニアが食べたい。


 うどんの下に敷き詰められたベーコンとジャガイモとトマトのおかげで、うどんである意味がまったくない。

 だが、美味しいのは美味しいのでなんか悔しい。


 まずかったことは一度もないとはいえ、うどんを使う必要性をあまり感じさせない料理が多いのも事実だ。

 そろそろうどんから離れさせたほうがいいのだろうか。


 完食後に顔を出したモーリッドも、あまり覇気がなく、明らかに煮詰まっているのがわかる。


「そろそろうどん以外のものに挑戦してみますか?」

「いえ、まだやらせてください。今度こそお館さまの気に入るものを作ってみせます」

「別にうどんにこだわる必要はないんですよ?」

「ですが、せっかくお館さまから伝授されたレシピです。せめてお嬢様に献上できるものを作らねば……」


 どうにも気負ってしまっている感が強いモーリッドだ。

 オレとしてはうどんがだめだったら、違うものでも全然構わない。

 というか、ミーナ嬢へ渡すレシピなら最初の、うどんの麺のレシピだけでいいんじゃないだろうか。

 彼女なら料理ギルドを通してうまくやってくれるだろう。


 ……あー。もしかしてそれをやられたらプライドが許さないのかな? モーリッドは。

 一料理人として、ほかの料理人に負けたくないという。

 先を越される前になんとしてでも納得のいくものを作りたいのだろう。


 うーん。となるとやはり醤油がないのが悔やまれる。

 醤油さえあれば、おそらくモーリッドも納得するうどん料理が簡単に作れてしまう。


 一応魚醤はあるので、火を通して独特の匂いを飛ばしてしまえば使えないこともないよう気がする。

 一度その方向でモーリッドに試作させてみるべきだろうか。

 まだ魚醤は使ってないみたいだし。

 ……あれ? でも火を通したら匂いが強くなる種類もあるんだっけ?



気に入ったら、評価、ブクマ、よろしくおねがいします。

モチベーションがあがります。

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