第一話
よく晴れた空。ここはフレリア王国のシートースシティ。海に面したこの地区は海産物がとにかく売りだ。ケリマーと呼ばれる海老の仲間が名産でこの地区、国だけでなく、他国に輸出しているブランドの一つだ。
この地区の大地主であるアイツェール家は養子として遥瀬という子を迎えている。というのも、アイツェール家はなかなか後継に恵まれず、113年続いた歴史を途絶えさせることのないように、養子を迎えたのだ。混血だとか、いろいろ血の問題を挙げればきりがないが女児は生まれており、遥瀬を婿入りさせることを前提として迎える形であるという説明で何とか筋を通している。それにこの国では同じ夫婦の子供同士が結婚できない、なんてことはないため養子に迎えて自分の子供と結婚させるというのは少子化のこのご時世、割と常套手段となっていた。
ある日遥瀬はすでに結婚相手として決められているアイツェール・チェルシャーに呼ばれていた。チェルシャーは遥瀬の顔立ちに一目惚れしており度々自室に呼び出してはクッキーを焼き、紅茶を淹れ、二人きりのお茶会をしている。父母や使いのものには、二人の未来のための話をしますから、などと言っておけばわざわざ二人の時間にまで手出しできないので、二人きりの時間を作るのは容易なのであった。この日は遥瀬にある相談を持ちかけていた。
セントリアの森。それはこの地区で立ち入り禁止に指定されてるほどの危険なダンジョン。ダンジョンというのはこの世界での金儲けの広場、とでも言っておこうか。今だに未確認生物が多く、新種を発見すれば20年は何もせず生きていけるお金が手に入ると言われており、一発逆転をかけて高難度のダンジョンに入る人々は今も少なくない。実際それで成金になった者もいるのが事実だ。しかし、セントリアの森は事情が違った。入っていったものは帰って来ないとすら言われる呪いの森。しかし、それだけ難しいとされてるダンジョン。当然、未発見生物が多いだろうから、帰って来れれば間違いなく死ぬまで何もせずに暮らせる可能性は高いといえる。帰還報告の一つも今までないのだから。
チェルシャーはこの森について遥瀬に相談していた。二人で行ってみないか、と。もちろん無謀な挑戦ではない。チェルシャーはこの国では指折りの魔術の使い手である。そして遥瀬は18歳にして王国騎士団のナンバー5にまで駆け上がってた人物。強化魔術や付与魔術に長けた剣使いで、物理攻撃に魔法で属性付与ができるため実質不利な敵がいないといわれている。欠点は剣の扱いが雑で精度が伴わず、一騎討ちに弱いという弱点がある。また、貯蔵できるマナが少なく、魔術に必要なマナが切れてしまうことが多いらしい。だがチェルシャーは無限のマナの使い手と言われるほどの大魔術の連打を得意としているのでタッグを組めばそう負けないと踏んで話していた。要は簡単に言えば砲台とその護衛がいるといった調子だ。しかし、遥瀬は一つ気がかりなことがあった。
「チェルシャー、確かに俺たちなら負けないとは思うけど一応立ち入り禁止だぞ?お父様とかに見つかったらなんて説明するんだよ。」
「問題ないってば。帰って来て大金を獲得すればこの一家は安定するんですもの。」
「いや、十分もう安定しているような…。」
「相手が欲しいんです。大魔術は魔法使いの中であまり好まれませんから。小技で器用な方が魔法使いとしては上と言われますし…だから実力を見せたくt..」
大目玉を食らうのはごめんなんだけどな、と思っていた遥瀬だが、チェルシャーの瞳はゆるぎない意志を持っていると感じた遥瀬は折れる形で賛成するしかなかった。
「はいはい、わかったよ。でもすぐに行くのはダメ。ちょっと調査してからにしよう。もし魔術が効かない相手だったら手の打ちようがなくなる訳だし。」
「そんな敵は見たことないです!」
「一度でもダンジョンに行ったことがあっての発言かな?」
「それは!!」
遥瀬もそんな敵は見たことない。しかし、もし犠牲になるなら?自分の代わりならいくらでもいる。そう考えたのだ。犠牲が出るなら二人より、自分一人で済んだほうがいいと。
「はい、だからね。俺が確認してくる。大丈夫、すぐ引き返すから。」
「仕方ないですね…。こちらを持って行ってください。もし、帰れなくなった時はこの羽根を呑み込んでください。帰還魔法を込めてありますから。詠唱しなくても発動できるので多分、保険にはいいかと。」
「心配性だね。でも、ありがとう。御守り代わりに大事にさせてもらうよ。」
遥瀬は白色の小さな羽をポケットにしまい、立ち上がった。二人のお茶会は今日も平和に終わった。
翌朝、まだ外が暗い時間に遥瀬は目的のダンジョンの前にいた。万が一にも多くの人に見られると厄介だから。
立ち入り禁止の看板を無視して遥瀬は足を踏み入れた。
一歩踏み入れて目に入った光景は意外なものであった。木がたくさん生い茂った森の中だから中の明るさに対しては暗いイメージを持っていたのだが、いや、それどころか太陽がまだ低く光が入らないというのにほのかに明るい。虫がいる感じではない。道は未舗装で自然のまま、人の手がつけられていないということを強く感じる。見渡す限り広い草っ原で視界は良好だ。それより気になるのはずっと奥に見えてる虹色の輝き。おそらくこの光でこの空間が明るくなっていると推測できるくらいにはまぶしく輝いている。間違いないと遥瀬は確信した。この地区に伝わる宝石だと。
ダンジョン内を見たらすぐに引き返す、様子見、しっかり脳内に刻んでいたが、虹色の魅力的な光に遥瀬は理性を保つことができない。一歩。また一歩と足が進む。視界の左側に少年が映ったことも気に留めずに一歩。おいっ!と呼び止められた声に気づかずまた一歩。さぁ、その手に輝きが届こうとした瞬間、遥瀬の手に虹色の光はなかった。目の前が暗くて強いて言うなら緑だ。草の緑。遥瀬はうつ伏せで倒れたことに瞬時に気がつき身を起こそうと試みるが上からの圧力が尋常ではない。
「誰だ!」
遥瀬はもがきながらおそらく自分を押さえつけてるであろう何かに話しかけた。
「いやぁ、だってボクはちゃんと忠告したよ?なのに無視して進むんだから。この状況に疑問を持つ方が甚だおかしいと思わないか?」
「忠告だって!?」
そう言われて初めて遥瀬は先ほど目の端に移った少年の姿が頭に浮かぶ。いや、あんな小さな少年がまさか。
「おいおい、忘れたとは言わせないよ。つい何分か前だというのに。」
そう、何者かが言うと遥瀬の身体は勝手に持ち上げられ何者かの目の前に立たされた。遥瀬の目には少年がはっきりと映る。
「いや、声は聞こえた!覚えてる!その形容だって一瞬!」
「へぇ、じゃあ止まってくれなかった。無視したってことかな?」
パニックになって墓穴を掘ってしまった。脳細胞をフル回転させて言い訳を考えるが、その余裕を少年は与えない。遥瀬のうなじを何かがすっと触れる。
「ひっ!!」
遥瀬は言葉にできない感触に悲鳴に似た声を上げた。少年の方を見ればなんと言うことだろう。細いつるのようなものを操っているではないか。腕から出ているか、背中からか、その判別はつかない。しかし、その少年がつるを操っていることは確かだ。先ほど体を持ち上げてきたのもこれかと気づいた。
「少し、罰を与えないとね。」
つるは容赦なく遥瀬に襲いかかる。両腕、両足を拘束し宙に大の字の姿にさせたと思えば服をスッと真っ二つにしてしまう。
「な、何を!」
「うんうん。そう言う反応。よだれが出てきちゃうからさ…」
少年が操るつるは遥瀬の色白な肌を這いずるようにうねりながら上半身から下半身まで全身に満遍なく触れていく。べたべたしていないつるに触れられるのは人の手でやさしく触られている感触であった。どんなに嫌がっていても感触から触発されるものは隠しきれないということなのか、言うなれば身体は正直、とでもいうのか。遥瀬の気持ちを全く反映してくれない身体は脳内に快感だけを少しずつ伝えていく。徐々に理性が奪われていく感覚だ。こうなってしまうと魔法の詠唱すらできなくなってしまう。腕も脚も動かせない遥瀬は身をよじりながらつるが身体に触れるのを避けようとするが、全く意味をなさない上、無理に力を入れることでかえって体力を使う羽目になってしまっていた。
「あは、苦しいの?心地よくて、もどかしい感じかなー?」
「違う!断じて!」
こんなちいさな少年を前に全裸で拘束されて身動きもできない上に好き勝手弄られるなんて。屈辱以外の言葉で表せまい。一発で切り殺せるのに!理性が働かなくなり感情的になった遥瀬は当初の目的を忘れ、相手の強さの判断すらまともにできていなかった。そして、下腹部の男性特有のものは意思とは裏腹に快楽に反応していた。そのことがますます屈辱感を増幅させていくが、その肝心な部位に少年は全く触れてこない。おさめてしまいたいが、断続的に肌から伝わる快感が、もどかしい快楽地獄がそれを許さない。
「若いっていいねぇ。元気って感じがすごく伝わってくるよ。」
その言葉を合図にしたかのように、つるは遥瀬の下腹部に触れ始める。散々焦らされてようやく触れられるというのは、触れられて嫌と言う気持ちがあるのに、我慢できない声が漏れる。口を抑えたくても手は拘束されてしまっている。唇を噛みしめようとすれば、少年の操るつるが口を閉じさせないように無理矢理開いてくる。
「もっともっと、その声を聞かせてよ。」
じっくりとした少年の攻めは遥瀬を苦しめるには十分すぎた。2時間以上にわたる焦らしは脳をおかしくするにはあまりにも多すぎる時間だったのだ。
散々じらされた遥瀬はすっかり少年のペースに飲み込まれ、ただ懇願をしていた。理性が飛んでひたすらにその快楽に身を任せ、はじめはつるから逃れようと動いてた身体は逆に、触れてほしいというようにつるを求めてうねらせていた。
「あーあ。本当人間って、弱いなぁ。苦しそうだから、そろそろフィニッシュといこうか。」
つるを自由自在に操る少年はその一言を吐くとこれまでの何倍の比ではない速さでつるを動かし始めた。理性を忘れ強く求めていたような、限界点を超える快楽が遥瀬に襲いかかり、遥瀬はただ喘ぐのに精一杯であっという間に達してしまう。それだけ焦らされていたのだから、当然と言えるだろう。
そして少年は薄笑いを浮かべながら意識のとんだ遥瀬を森の奥に引きずり込んでいく。
「まだまだいっぱい養分になってもらおうね。次のエサが来るまでは耐えて欲しいし。そうそう、助けは来ないと思った方がいいよ。快楽は人間を蝕み、そして人間は逃れられない。その上自ら求めるものなんだ。そしてね、どんな魔力やトリックを使おうが男性と女性では向かうダンジョンが変わる仕組みになっている。尚且つ、ボクは男の子専門だ。女性は左の道にしか進めないし男性は右の道にしか進めない。それがここのルールだから。異性が仲間でも意味はない。でもね、ボクが飽きたら君を、いや、遥瀬を解放してあげる。もう200年もここに居座ったしそろそろ潮時だからね。」
そう言いながらついでのように遥瀬が胸ポケットに入れ、大切にしていた羽を破いた服から引き抜き壊した。
少年は気絶してる遥瀬の唇に自らの唇を重ね、高笑いしながら森の奥へと消えていった。




