音階講座
曲作り開始!
かと思いきや、瑠夏は音階すら知らない前代未聞の事態に・・・
「基本、音は八段階あるんだ。例えば、この音がド」
えっと、これがドね~
「音階は普通、ドレミファソラシドの音が基本な」
はにゃ? どの次はだに戻るんじゃないの?
「んで、この黒いところを押すとフラットやシャープの音になって……」
あわわわわ……
「瑠夏~ついてきてますか~」
うおおおおおお! わからん! ダメだ!
その日の午後。現在オレは、朔也の指導のもと音階の読み方を教わっている。
彼用に用意された部屋には親父が配慮したのだろう、うちの事務所に置いてあった朔也専用のピアノで簡単に教えてもらってるのだ。
朔也は小さい頃からピアノを習っているから、音楽には詳しいんだよね。
「あのさあ瑠夏、一つ言っていいか?」
「はい、なんでしょう。先生」
「音階は基礎中の基礎なんだ。いってる意味わかるか?」
う~ん、大体は予想がつくかなあ。
「このくらいのレベルは、音楽で習ってるはずなんだけど?」
ぐはっ!
「芸能一家に育っていながらこんなこともわかんないとか、よく今までアイドル出来たよな。マジで」
痛い! 朔也痛い! 言葉の針をオレに刺さないで!
「しょ、しょうがないじゃん。今までやってきたのは、ボランティア活動っぽいものしかなかったし?」
「じゃあお前は学校の授業で、音階をだぢづでどって習ったんだな?」
「すみません……覚えてません……」
「だろうな」
朔也に言われ、改めて自分が何も知らなかったことを思い知る。
歌うことも、踊ることも好きだ。でも楽譜なんてよんだことない。
作曲や作詞なんてめんどくさすぎて、いつも親父や朔也に任せてた。
オレ、ほんとに兄さんと兄弟なのかな~
「ていうか~結局オレら二人でやってんじゃ~ん。あの社長は一緒に曲を作れって言ってなかったっけ?」
「講座とはいえ仕方ないだろ。桜瀬は協力する気はないって言ってるし、天王寺は部屋に鍵かけてるし。迅は親に事情説明しに行って今いないし」
迅ちゃんはともかく、あの二人は協力する気なさそうだな~
あれ? そういえば……
「おとといさ迅ちゃんが、要は素人って言ってたよね」
「まあ、あの調子じゃあだろうな」
「オレ以上に楽譜読めないんじゃね?」
そういうと、朔也は確かにと困ったように顔をしかめる。
あの社長のことだ、オレら二人で作ったとして納得するわけがない。
五人で曲を作る。
だったら……!
「オレ、ちょっと行ってくるわ! 朔也は先に作業してて!」
「え、ちょ……瑠夏!」
そういってオレは、朔也の叫びを聞かずに飛び出した。
「要~要ちゃ~ん。部屋にいるんだよね? オレだよ~瑠夏だよ~」
部屋のドアに向かって叫びながら、オレは彼が出てくるのを待つ。
要はいやいやながらもそうっとドアを開け、話が聞こえるようにはしてくれた。
「話があるんだ。入っていい?」
オレがそういうと、影らしきものが見えバタンとドアを閉めた。
ほほお、部屋には入れたくないってことですか。そうですか。
だったらとりあえず部屋から出さないと!
「じゃあ入れなくていいからさ、せめて話だけ聞いてくれない?」
「………ななななんんですか」
そうっとドアを開けた向こうには、要がこちらを覗いている。
前髪が長すぎるせいか、顔が見えないためどこを見ているのかさえ分からなかった。
「社長からさ、曲作れ~って指令あったじゃん? 一緒に作るのはどうかな~って」
「いいいいい一緒なんて、ととととんでもないです!」
そういって彼は強引にドアを閉めようとする。
負けるものかあああ!
オレはすばやく、閉まろうとしたドアに向かって手を伸ばし抵抗するように引っ張った。
「は、はなしてください!」
「一緒に曲作るくらいいいじゃ~ん! 要、曲とか作ったことないんでしょ!?」
ぴたりと要が動きを止めたのが目に入る。
それを見て、オレはチャンスとばかり彼に言った。
「怖がらなくていいんだよ。せっかく同じ家にいるんだから、一緒に作ったりおしゃべりしたりしようよ」
すると力いっぱい引っ張ってたドアが、急に何もなかったように開く。
そうっと覗き込むように、要が顔を出した。
「あ、要! やっと出てきた!」
「おおお気持ちはうれしいのですが……僕……人と話すのとか、苦手で……」
「そんなの全然気にしないでよ。一緒に曲作ろうぜ!」
オレがそういうと、要はゆっくりながらも部屋の外へと出てきてくれたのだった。
(続く!)
最近、家で一人になると好きなキャラの撮影会をやってます。
テレビを写しているせいか、どうしても画質が良くならないのが悩みです・・・
このことをいったら友達に「休みの日に何やってんの」と言われました、ごもっともですね
次回、要ちゃんのターンです!