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運命で奏でる協奏曲

兄にとっての旧友・律につかまった瑠夏は・・・?

銃口がこちらに向いている。

それを把握するので、オレは精いっぱいだった。

くつくつと笑う律さんの笑み、かちゃりと手がかけられる銃。

何もできない、悔しい思いでいっぱいになったそんな時だった。


「瑠夏!! 無事か!?」


ぶち破られたドアの向こうに、四人の姿が見えたのは。


「みんな! 来てくれたの?!」


「へぇ、ここが分かるとはお友達もなかなかやるねぇ」


まるでここまでは予想していたように、律さんが少し微笑んでいる。

彼の挑発に乗るかのように、迅ちゃんはふんと鼻で笑った。


「僕達をみくびらないでもらえる? 瑠夏の居場所なんて、僕の技術があれば数分で突き止められるんだから」


ほへ~さすが迅ちゃん。

どうやったかは知らないけど、すごいことなんだろうな。多分。


「さて、瑠夏を返してもらうぞ」


「あの紙をちゃんと読んだのかい? あの賞から辞退するっていうなら、彼を生きたまま返してやってもいい」


「はんっ。辞退するって言ったところで、返す気なんてねぇだろうが」


相変わらず歩美は、誰が相手だろうと勇ましく立ち向かう。

オレ的に歩美のほうが敵に見えちゃうんだが……まあそれは置いといて。


「なかなかいい面子だね、JOKERちゃんは。オレの目的は弟だけのつもりだったんだが……全員ってのも悪くはねえよなあ」


何か来る!

そう感じたすぐに、どこから湧いてきたのか何人ものガラが悪い人達が出てきた。

四人を取り囲むかのようにして、あっという間に動きが取れなくなる。

みんなを助けなきゃ! 立ち上がろうとしたオレの目の前に、律さんが現れる。


「仲間を助けたければ、賞を辞退しろ。そしてオレの手で殺されな」


う、うそでしょ!?

この状況、何なの!?

みんなを助けたい。

賞を辞退するくらいなら、誰だってできる。

別に殺されたって平気だ。オレの夢はかなったも同然なんだし?

そんなの、答えは一つに決まってー


「いい加減にしてください!」


はっと我に返り、声がした方向を仰ぎ見る。

歩美達が入ってきた場所に、いっちゃんがいた。

彼女は今にも泣きたいのを我慢しているかのような表情で、いつもと違ってすごく新鮮に思えた。


「なんでも自分のやりたいようにやって……何が楽しいんですか!」


「これは、お前のためでもあるんだぜ? 樹」


「何が私のためですか! 家族を傷つけて、たくさんの人を悲しませているのは兄さんじゃないですか!」


兄さん……? ってことは……


「り、律さんっていっちゃんのお兄さんんんんんん!?」


「……今頃ですか」


「いやいやいや、今頃も何も初耳だから!」


「兄の名字と私の名字を聞けば、一目瞭然な気がするのですが」


なるほど。確かに……ってそうじゃなくて!


「真城さん。あなたは、一体……」


「私は兄を止めるために、あなた方のマネージャーとなりました。それが、巽さんの導きだったので」


迅ちゃんの問いに、顔色変えずにいっちゃんは答える。

巽さんの導き、だって?

オレ達のマネージャーになるのが導きってどういうこと?

っていうか、兄さんって……。


「いっちゃん! もしかして、兄さんは生きて……」


「そうだよ」


誰のものでもない、凛とした声。

聞きなれた、懐かしい懐かしい響き。

カツカツと進む、足音だけが聞こえる。

夕日に照らされた彼の笑みはまるで変らない、あのころのまま……


「正確には、一命をとりとめた。とでもいうべきかな」


「兄さん……?」


「ただいま、瑠夏」


間違いない。兄さんだ。本物が、目の前にいる。

信じられないのは、オレだけじゃない。

襲い掛かろうとしていた不良達が、おびえるように四人から遠ざかっていくのが分かる。

歩美達までも言葉を失い、ただ一人律さんだけが不吉な笑みを浮かべていた。


「すっげー。あの銃撃で生きてるやつとか初めて見たわ。どんだけ不死身なんだよ」


「朝倉家は、ゴキブリ並みの生命力をもつって昔はなさなかったけか」


「ははっ。冗談きっついわあ、だとしたらこの八年は何してたんだよ?」


律さんは笑みを崩すことなく、兄さんを一点に見つめている。

兄さんは昔と変わらない爽やかな笑みを浮かべた。


「正直生きてるときは驚いたよ。それと同時に、僕が生きてると知ったら瑠夏や父さん達にも危害が及ぶと思って一部の人以外には死んだことにしておいてもらった。それからはあてもなくいなくなったお前のかわりに、樹ちゃんのお兄さんがわりをしてただけだよ」


八年前ってことは、いっちゃんは小学生くらい……

兄さんはオレ達のために、わざわざ姿を消して……。


「瑠夏がアイドルになったって聞いて、お前が動かないわけがないと思ってな。樹ちゃんにJOKERのデータをもらいながら、様子をうかがってたんだ。そしたら、案の定ってやつ?」


「な~るほど。我が妹ながらやってくれるじゃん」


「外に警察が来てる。観念して捕まるんだな」


「……ちっ。どこまでも想定外な野郎だぜ」


悔しそうには、見えなかった。

律さんの笑みはどことなく楽しんでいるようにも見えて、何人もの不良達とともに外へ出ていく。

律さんにゆっくりとだが、いっちゃんがついていく。

何かに縛られてたように動かなかった体の緊張が解け、がくりと座り込んでしまう。


「瑠夏!」


一番に駆けつけてくれたのは、朔也だった。

それに続くように、要と迅ちゃんが近づいてくる。


「大丈夫? 瑠夏君」


「まったくお前ってやつは! 本当世話のかかるやつだな!」


「僕達がどれだけ心配したかわかってるの!?」


「いやあ、面目ない。って、今心配したって言った? 迅ちゃん、心配してくれたの?」


「た、ただの聞き間違いじゃない?」


「え~意地張らなくてもいいじゃ~ん」


「瑠夏!」


顔を真っ赤にして迅ちゃんが意地になっていう。

そんな彼を、ほほえましいように要達が見ている。

三人より少し遅れて、歩美が歩いてやってくる。

彼は、いつもどおりの微笑を浮かべた。


「おかえり、瑠夏」


「えへへ。ただいま」


四人の微笑みをみながら、ふと思い出し兄さんの方を仰ぎ見る。

兄さんはこちらへ歩み寄り、静かに笑って見せた。


「歩美君、迅君、要君、朔也君。瑠夏を探してくれて、ありがと」


「兄さん……」


「瑠夏もずいぶん見ない間に、大きくなったもんだな」


「兄さんが変わらなすぎなんだよ……八年間も死んだことにしやがって」


「ははっ、悪い悪い」


ああ、やっぱり兄さんだ。

昔と何一つ変わらない、この笑みは。


「歩美君も迅君も、すごく大人っぽくなったね。最初伊槻ちゃんから情報もらった時は、驚いちゃった」


「またお会いできて、光栄です。巽さん」


「こちらこそ。あ、迅君は僕のことも忘れてるんだっけ?」


「いえ……覚えてます……昔、よく遊んでくれましたよね……」


迅ちゃんの言葉に、えっと言葉が詰まる。

驚いたオレ達は顔を見合わせることしかできない。

迅ちゃんと声をかけようとすると、彼の目にはたくさんの涙がたまっていた。


「思い出したよ。君が言ってた幼馴染が僕のことで、君達二人が僕にとってかけがえのない存在だったってことも……」


「え? それって、記憶が戻ったってこと!?」


「うん」


ってことはだ、両親が亡くなった悲しい記憶まで戻っちゃったってこと!?

まさかオレが余計なこと言ったから、思い出さなくていい奴まで思い出させちゃったの!?

あわわわわ!


「うすうす気づいていたんだ。あのお母さんが、本当の母じゃないこと。瑠夏と歩美の話、巽さんを見てやっと思い出した。両親が死んだことは確かに悲しいけど、今はかわりにJOKERがいる。僕はそれだけで十分なんだ」


「迅ちゃん……!」


すごい進歩だ。

迅ちゃんも少しずつだけど、変わろうとしてたってことなんだ。

だからこうして、記憶が戻ってもいつものままでいる。

オレ、こんなにうれしいことはないよ!


「とか何とか言ってるとこ悪いけど、明日は倍以上の練習だぞ。覚悟しとけよ」


「え?」


「まさか忘れたとか言わねぇよな? トップアーティスト賞まであと一週間だぞ」


え? 何が?

トップアーティスト? 一週間……?


「あああああああああ! 忘れてた!」


「はあ!?」


「そうだった、オレら今から練習やんないといけないんだよね!? なんか今までの衝撃でダンスとかほとんど忘れた!」


「馬鹿か、お前は!」


「今から一からやってちゃ間に合わないでしょ!」


「ほんっとお前は世話がかかるよなあ!」


「てっへへ~」


怒り狂う三人とほほ笑む兄さんや要達に、オレは静かに笑って見せた。


「まさかあなたが、自分から警察へ向かうとは思っていませんでした」


内心感心しているような、そうでもないような声を上げた樹は彼の顔を見た。

たくさんの警察が周囲で何かを話しているのを聞きながら、律はふっと笑った。


「まさか、最初からこうなることが分かっていたのですか?」


「巽が生きてるって噂なら、何年か前に聞いたことはあったしな。オレのこと一番止めたがってたお前が何もしてこないわけがないとは思っていたが」


「兄さん……」


工場内から出てきたJOKER達に警察が詰め寄るのが見える。

おそらく事情聴取に付き合わされるのがオチだろう。巽の姿は見えなかった。


「しっかし見事だね~ 、あいつらは。よくできた仲間だ」


「あれでも、最初はちぐはぐで私も手に負えなかったんですけどね」


「朝倉家の血筋は伊達じゃないってことだろ」


何人もの警察に、瑠夏が苦笑いしながら応答しているのが見える。

偉そうな態度で警察の問いにさえ答えない迅に、警察の迫力におびえてばかりいる要。

瑠夏と同じように苦笑いで応答する朔也と、警察の言うことに見向きもしないまま無言の歩美……。


みんな個性はバラバラで、とても仲良くなるようには思えない。

それでも彼らの中心には、瑠夏がいる。

巽と瓜二つな笑みを見ながら、律はまた笑った。


「やれやれ。オレの人生、いつまでもつのかねぇ」


「……ちゃんと事情を話せばすぐに釈放してくれます」


「巽のことがあったんだ。処刑されてもおかしくはないだろ?」


「私に任せてください。それくらい、簡単にできます。だから、ちゃんと家に帰ってきてください。待ってますから」


今までにない樹の笑顔に、律は驚きすぐに笑みを浮かべたのだった。


(つづく・・・・・)

ゴキブリってすごい生命力らしいですよ、皆さん。


今回の見どころは何と言ってもお兄さんの復活ですよね。

実は最初から生きている提で作品は進んでいたんですよ・・・ふふふ。

迅ちゃんの記憶については最後まで悩んだのですが

やっぱり戻しても迅ちゃんは迅ちゃん、ってことで。


次回、トップアーティスト賞開幕!

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