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煌と巽と時々JOKER

楽器屋に行くと、そこには煌の優奏が!

様々な場所で偶然出会った二人のことを含め、煌の話を聞くことに・・・

いれたてのコーヒーの湯気が、ゆらゆら揺れている。

彼女ー優奏さんは微笑みながら、ギターの弦を張っていく。

そのしぐさ一つ一つがプロって感じで、手慣れている感じだった。


「私ね、昔バンドやってたの。こういう環境だから、ベースとかの楽器を弾くのが癖になっちゃってて。私についてこれる人はそんなにいなくて、気が付いたら私一人になってた」


それは、オレでもわかる。

初めてライブを目の当たりにしたとき、彼女のベースはすごいと思った。

難しい技術をあんな簡単に、しかも楽しそうに演奏しているのだ。

素人のオレでもすごいと思うんだから、やってた人がついていけないってなるのは当然だろうな。


「高校の時にまゆちゃんと会って、やっと見つけたって思ったの。まゆちゃんすごいんだよ~市松高校の理事長さんの娘さんなんだよ~」


「知ってます。以前、会いました」


「え~そうなの~? すごいでしょ~まゆちゃん。昔から常にトップでなんでも完璧だったから、ぎりぎりまで首を縦に振ってくれなくて。才能あるのにもったいないな~って。たくちゃんにあったのはその頃」


今思えば、理事長の娘ってすごいよなあ。

あの人かなり美人だから、なおさら完璧に見えるのかも。


「たくちゃんの家でバイトしたんだよね?」


「あ、はい」


「あの子ね、生まれてからず~っとそこを継ぐように育てられたの。やりたいこととか全部我慢して。あんなふうに話すのも、そのせいなんじゃないかな」


そういわれて、バイトをしたときのことを思い出す。

ずっときめられた人生送るのって、窮屈じゃない? とオレが言った時の、なるちゃんのつらそうな顔。

こうやって聞いてると、煌の人達って過去に何かしらあった人達ばっかりだな。


「ちょうどその時、かな。巽さんに会ったの」


!?


「どうしたの、瑠夏君。急に立ち上がって」


「巽って……兄さんを知ってるんですか!?」


「うん、しってるよ。兄さんってことは、やっぱりあなた弟さんなんだね」


優奏さんはなつかしいような表情を浮かべながら、ギターの弦を一つ一つ調整していくようにはじいてみせた。


「デビューしたての頃に、うちに来たことがあって。すごく引き込まれちゃったんだ。まゆちゃんとたくちゃんをやる気にさせてくれたのも、巽さんらしいよ」


その話を聞いて、兄さんが改めてすごいことを実感する。

昔からどこに行っても、兄さんの話ばかりだ。

死んで八年になった今でも、忘れられずに残っている。

それほど、すごかったってことなんだから。


「巽って、あの伝説の俳優?」


「迅ちゃんも知ってるの?」


「よくテレビとかで取り上げられてるの、見たことあるから」


「僕も昔お母さん達がほめてるの、聞いたことあります。お母さんがほめる人、初めてだったから……。あれ、瑠夏君のお兄さんなんだね」


音楽に疎い要や、昔の記憶があまりない迅ちゃんまでも知っている。

さすが兄さんだなあ。オレ達、まだまだかないそうにないや。


「あなたが巽さんの弟なら、聞いたことあるかな? 巽さんが実は生きてるんじゃないかって話」


!!!!!????


「それ、どういうことですか!?」


「あれ? 初耳? じゃあただのうわさに過ぎないってことかな~」


「ぜ、ぜひ! ぜひ詳しく聞かせてください!」


オレが身を乗り出して言うと、彼女ははいはいとまたふわりと笑う。

優奏さんは迅ちゃんのバイオリンを布巾のような何かできれいに磨きながら、オレ達に説明してくれた。


「これはあくまでも聞いた話でしかないんだけど、芸能関係者が巽さんに似た人物を見たって人がいるの。ほら、あの人の殺人事件って謎が多いじゃない? 瑠夏君はちゃんと、死体も見てるの?」


そういわれて、ふと昔を思い出す。

あの時―オレをかばって撃たれた兄さんは、病院へ搬送された。

そのあとは医者から死を告げられただけで、オレは直接死体を見ていない。

多分、小さい子供に衝撃のあるものを見せたくなかったからなのだろう。

母さんや親父に止められて、すごく拒んだのを覚えている。


でもそれなら、親父くらい教えてくれてもいいじゃないか。

生きてるなら、あってくれてもいいじゃないか。

これまでの八年間は何だったんだよ……


「ごめんね、嫌なこと思い出させちゃった?」


「い、いえ……そんなことは……」


「トップアーティスト賞ってね、巽さんが初めて賞を取ったステージなんだよ」


え、そうなの?


「あなた達も出るってことは私達と対決するってこと。私達は負けたくないし、今まで通り全力でやるだけ。同じ会社だからって手加減しないから。あなた達も全力でかかってきて」


調節し終わった楽器二つを渡しながら、優奏さんは微笑んだ。

歩美と迅ちゃんが楽器に手を伸ばし受け取るのを見ながら、はいと大きな声で返事をした。



「へぇ……あんな短時間で磨いて、こんなに光沢が出るんだ」


感心しきったような声を上げながら、迅ちゃんがバイオリンを眺めている。

オレ達は楽器屋を後にし、歩いて十分先にあるシェアハウスに帰っている途中である。

彼女の話を聞いたせいか、時刻はすっかり夕方だった。


「結局遅くなってるじゃねぇか。お前が無駄話させるから」


「無駄話なんかじゃない! 歩美だって聞けて良かったでしょ?」


「他人の過去に首突っ込むような、ばかみたいなことはしねぇよ」


「それってオレがバカみたいじゃん!」


「はいはい、そこまで。瑠夏、おちつけ」


つい感情的になってしまうのは、兄さんのことがあったからだろうか。

どこかで生きている。

それが本当なら、兄さんはどこで何をしているというのだろう。

今度、親父に聞いてみようかな。

前配達して住所知ってるから、行きやすいし。


ふと顔を上げると、いつの間にかみんなの中で一番最後尾になっていた。

目の前にある横断歩道の信号が赤に変わってしまう。


「ちょっと~何もたもたしてるの~?」


「ごめんごめ~ん。四人とも先いっといて~」


「先練習しとくぞ~」


「ほいほ~い」


青になるのを待ちながら、一つあくびをする。

何台も何台も、車がオレの前を通り過ぎていく。

そんな中、一台の車だけがオレのすぐそばにとまる。

ドアが開くと、そこから一人の男性が出てきた。


「あ、やっぱりそうだった♪ HELLO~瑠夏君。おっひさ~」


きれいに染まった金髪に片耳にはピアスが付いており、前髪をピンでとめている。

その男性を見て、数少ないオレの昔の記憶の扉があく。

間違いない。この人……


「律さん、ですよね。確か」


「しってくれてるんだ~うれしいねぇ。話が早くてすむ」


真城律ましろ りつ。元マタン事務所所属、そして兄さんと同期だった旧友。

だけど彼は兄さんがなくなった同時に、姿を消したはず……

それに、こうして直接会うのは初めてじゃ……


「なんでこんなところに? ていうか、オレのことなんで知って……」


「いやあ、瑠夏君にいいお知らせを持ってきてさ」


「いい情報?」


「今から巽に、会わせてやるよ」


彼の言葉を最後に、オレは一瞬にして気を失った。




「1,2,3,4,5,6,7,8! やめ!」


歩美の手拍子と掛け声で、曲が同時に終わる。

キメポーズをした後、三人は疲れたようにその場へ倒れた。

流していたラジカセを止めた後、歩美はタオルとドリンクを一人一人に渡した。


「ステップもできてるし、少しはましになったじゃん」


「歩美君の指導が、いいからだよ」


「正直、君が講師でもいいくらいだね」


「ただ基礎練がきついけどな」


呆れるように朔也が言うと、三人が少し笑顔になる。

時刻は六時過ぎ。

あれから結構な時間がたつが、瑠夏はまだ帰ってこない。

信号に引っかかっただけだというのに、なぜこんなに帰ってくるのが遅いのだろう。


「いくらなんでも遅すぎねぇか、瑠夏の奴」


「寄り道、してるのかな? あの近くコンビにあるし……」


「まあ、瑠夏ならやりそうなことだけど」


「でも今から練習ってわかってて行ったことあったか?」


朔也の問いに、三人は詰まる。

いくらサボることをよく考える瑠夏でも、練習をさぼったことはない。

何かあったのか、不穏な空気が流れる。

朔也が瑠夏に電話しようとした、その時―


「大変です! みなさん!」


突如現れたのは、マネージャーの樹だった。

彼女の表情は、かつてないほど慌てていた。


「瑠夏さんが誘拐されました! これっ……届いた紙です」


小さく震えながら、一枚の紙を朔也に渡す。

その紙をのぞき込むように三人が後ろから見る。

そこには、新聞の切り抜きで作った文字でこう書かれてあった。


『朝倉瑠夏を誘拐した。返してほしくば賞を辞退しろ』


「やられたっ!」


歩美はいらだちを隠せないかのように、持っていたドリンクを投げ捨てる。


「瑠夏が、誘拐された……?」


彼とは逆に、朔也は必死に冷静を保とうとしている。

本当のことかを確認するために、要が部屋を確認しにのぞくがそこには帰ってきた形跡さえなかった。


「だめ! 瑠夏君、部屋にも戻ってきてない!」


「こうしてる場合か!」


歩美はそういって、防寒着を勢いよく羽織る。

それを見ていた樹が、たまらず叫んだ。


「ちょ、まさか探しに行くつもりですか!? どこに行ったかもわからないんですよ!?」


「だからって、じっとしてられるわけにはいかねぇだろ」


「危険すぎます! 賞にでれなかったらどうするんですか!?」


「瑠夏を探したら戻ってくる。マネージャーはここで待ってろ」


歩美はそう叫ぶと、さっさと一人で行ってしまう。

そのあとを足早に朔也達三人もついていく……


「まさかこんなに早く手を打たれるとは……」


ただ一人残された樹は、その誘拐予告の紙をもう一度眺め顔をしかめるばかりだった……。


(つづく)

今日はバレンタインですね。他作品にて、彼らのバレンタイン様子を投稿しているので、

そちらも楽しんで読んでくださるとうれしいです。

一番ほしいのはもちろん伊吹のチョコですね。格が違いますもの。


私個人的には特にあげる人がいないのですが、

公式さんの素晴らしい企画にのって

初めて二次元のかたにチョコを買いました。

妄想もとまらないので、バレンタインは大変ですね


次回、急展開!!!!

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