和解
嵐が丘に一人いた伊吹・・・・歩美に
想いをぶつけあった瑠夏。
長年すれ違っていた想いがつながり・・・
「よぉし、じゃあ一緒に帰るか! 歩美!」
オレが景気よく叫ぶと、彼は迷惑そうに顔をしかめる。
久しぶりだな、この顔見るの。
オレの言葉が彼にどう伝わったのかはわからないが、彼の顔はいつも以上にすっきりしているようにも見えた。
「帰るかって、どこに」
「決まってるじゃん、シェアハウス」
「今頃帰ったところで、あいつらが俺を受け入れるとは思わねぇけどな」
「いいから帰るの~!」
歩美を半強制的に連れ出し、オレ達は走った。
数分かけて、朔也達が待つシェアハウスへと足を踏み入れる。
「たっだいま~~~~~~~!」
「帰宅予定時間三十分オーバー。いつまで待たせるの、瑠夏」
うわ! 迅ちゃんってば、お母さんみたい!
迅ちゃんのほかに、要や朔也がこちらをのぞかせている。
歩美はその光景を見て、顔を合わせづらいのかふっと目線をそらした。
「おかえり、桜瀬君。瑠夏君」
「二人で何話し込んでたんだよ。もう夜だぞ」
「いやあ、走って帰る時間を計算に入れてなくて……」
「君ってつくづくバカだよね。ま、いいけどさ」
迅ちゃんはそういうと、歩美に話しかけた。
「事情は瑠夏から聞いたけど、だからって人を信じないのはよくないと思うよ。美雪さんのような優しい人だっているんだから」
おお! 迅ちゃんが、まともなことを言っている!
とても高校生が言う言葉じゃない!
「まさか、高校生相手に……しかもお前に説教されるとは思ってなかった」
「ちょ、どういう意味!?」
「そんままの意味だよ。そういうとこ、昔と全然変わってねぇな」
迅ちゃんはわけがわからないという風に、歩美を見ている。
歩美は最初から、あのころの迅ちゃんだって知ってたのかな。
記憶がなくなっていることも、全部。
だとしたらいつ知ったんだろう。話した覚えはないんだけどなあ。
「桜瀬君、ごめんね。僕達……」
「同情すんな。つらい思いをしたのはお前らだって一緒だろうが。そうやって辛気臭い顔されると、居心地が悪くてしょうがねぇ」
いつもの彼の顔に戻った気がして、ほっと安堵の息が出る。
オレは隣にいる朔也に笑みを返すと、彼はうんとうなずいた。
「あのさ、俺からみんなに提案なんだけど」
「何? 朔也」
「悪いとは思ったんだけど……瑠夏から桜瀬が書いた詞、勝手に見させてもらったんだ」
「人の部屋に勝手に入んなよ……」
「何枚か持ってきた中にいいものがあったんだよ。どうだ、みんな。この曲、完成させてみる気はないか?」
朔也が選んだその詞を見て、歩美は顔をしかめる。
さすが朔也は仕事が早いなあ。
迅ちゃんと要が、うれしそうに顔をほころばす。
彼らの顔を一望した後、歩美ははあっとため息をついた。
「どうせ、嫌だっつってもやるつもりなんだろ」
「さっすが歩美、ノリがいい!」
「先にいっとくが朝倉、仕事中に本名で呼ぶのだけはやめろ。ここでしか呼べねぇからな」
彼に言われ、は~いと返事する。
あ! 名前といえば!
「じゃあかわりに、オレのことも呼び捨てで呼んでよ! 昔みたいにさ!」
「はあ? なんでそうなるんだよ」
「これは歩美だけの問題じゃなくて、そこで知らんふりしてる迅ちゃん達もだからね!」
オレが言うと、言われた本人である三人ははっとしたような表情を浮かべた。
中でも迅ちゃんが一番わかりやすく、彼の顔が少し赤く染まっていたような気がした。
「ちょ! なんで僕達が関係してくるの!?」
「なんでって同じ仲間だからに決まってるじゃん。この機会に名前呼びに変えたらって話」
「そ、そんな急に……!」
「確かに、瑠夏の言う通りだよな」
一番に承諾してくれたのは、朔也だった。
やっぱり持つべきものは親友だと改めて思う。
彼はにこりと笑うと、歩美に言った。
「ここでは歩美って呼ばせてもらうよ。いいよな?」
「……勝手にしな」
「ほい、じゃあ要もレッツチャレンジ!」
「え!? えっと、歩美、君?」
もじもじとしながら、要が控えめに言う。
その姿が何ともかわいらしくて、もうたまらなかった。
さあ! それに続け! 迅ちゃん!
オレがぱっと見ると、彼は顔を真っ赤にして叫んだ。
「いちいち名前を呼び合う必要ないでしょ! 僕には僕のタイミングっていうのがあるんだから!」
「迅ちゃん、顔真っ赤~!」
「うるさい!」
まったく、かわいいもんだな。
これでようやく形になったってところかな。
「瑠夏達が帰ってくる前に、曲をつけてみたんだ。聞いてみてくれ」
そういって、新たな曲作りが始まろうとしていた。
(つづく・・・)
余談ですが、迅ちゃんは呼び方に関してめちゃくちゃ照れる子です。
そんな迅ちゃんですが、晴れて今日誕生日を迎えました! おめでとう!
書き下ろしとして他作品にあげていますが、久しぶりすぎてキャラがブレブレでした。えへへ
それにしても伊吹の変わりようですよ。
かっこよすぎでしょ、ちくしょう。
私はこっちのほうが好きです。伊吹推しとしてはたまんないですね。
次回、みんなで作った二曲目とは?




