すれ違って、つながって
美雪からすべてを知った瑠夏。
彼が書いた詞から、瑠夏は伊吹の場所がわかったといって・・・?
今回の始まりは、瑠夏目線ではないのでご注意くださいませ。
*
『じゃあかくれんぼしようよ! 迅ちゃんが鬼ね~』
『ええ~また~?』
あの日、この場所で二人の少年がはしゃぎまわっていた。
幼い二人―迅と瑠夏は無邪気に遊んでいた。
そんな光景を、歩美は遠目で見ていた。
楽しそうに遊ぶ二人に声もかけられず、ただ木の陰に隠れているだけ。
思うように、友達の作り方が分からない。
家が隣同士とはいえ、彼らに話しかける勇気がない。
自分に、もうちょっと勇気があれば……
『あれ? 君こんなとこで何してんの?』
ふいに話しかけられ、声が裏返ってしまう。
そこには目をくりくりさせてこちらを見ている、瑠夏がいた。
『そんなとこに隠れてたらすぐ見つかっちゃうよ~こっちいこ!』
『いや……俺は……』
『かくれんぼは人数が多いほうが楽しいの! 迅ちゃんにはあとで言っとくから!』
屈託のない笑みに、歩美の緊張がとける。
彼の笑みは今までの不安や怯えを、一瞬にしてなくした。
『僕、朝倉瑠夏! さあ、いくよ~!』
それが、瑠夏との出会いー
「歩美」
聞きなれた声に、ゆっくり振り返る。
走ってきたのだろう、彼の顔には汗がにじんでいた。
ここに来るまでの距離に疲れているだろうに、彼はにっこりといつもの笑みを浮かべた。
「ここだと思った。歩美、好きだって言ってたもんね。嵐が丘から見る夕日」
彼らがいるここー嵐が丘は、昔からある街を一望できる場所だ。
ここからみる夕日は、町一番といっても過言ではない。
瑠夏もよく、小さい頃遊びにいっていた。
もちろん、迅と歩美とともに。
「小さい頃来たときはここに来るのすごい時間かかったけど、今じゃそういうの全然感じないや」
「……」
「ミッキーから話は全部聞いた。ごめんね、歩美。ずっと、つらい思いをさせてて」
瑠夏の言葉に、歩美は何も言わない。
彼は笑みを崩すことなく、彼に言った。
「ブッキーと会った時、歩美に似てるって思ったんだ。まさか本人とは思わなかったよ」
「何しに来た」
「え?」
「ここに、何しに来た」
歩美の言葉は厳しく、ぎろりと睨むように見つめていた。
そんな彼を見ながらもなお、瑠夏は笑顔を浮かべる。
彼の心には、一つの決心があった。
「誤解をときたくて」
「誤解?」
「歩美、子役でアイドルしながらオレを待っててくれたんでしょ? でも、オレはそれを裏切った。ちょうどあの頃、両親が離婚したんだよ」
はあ? と、歩美の声が漏れる。
瑠夏の顔が、初めて曇った。
「ちょうど二人が引っ越した翌年くらいかな。兄さんのことや会社のことでもめるのが多々あったけど、さすがに限界だって母さんが出てったんだ。結局兄さんも親父もオレがアイドルするの反対して、全然させてくれなかったわけ」
初めて聞いた、瑠夏の過去。
言われてみれば、彼の母親の話は聞いたことがない。
幼いころに一緒にいた、あんなにやさしそうな母親が……
「だから、オレも歩美に言えないんだよ。お互いさまってこと」
「朝倉……」
「この詞、歩美が書いたんだよね?」
瑠夏が出したその紙に、はっとする。
動けずにいると、彼は明るい声色で言った。
「歩美の気持ち、ちゃんと伝わったよ。もう一人で抱え込まないで。オレもいるし、JOKERのみんなだっているじゃん!」
「そんなこと、俺だってわかってんだよ! でも! お前らまで裏切ったら、俺は……!」
怖い。
その二文字が言えずに、歩美はぐっと口を引き締める。
小さい頃お金を稼ぐために働けとせがまれた、親戚の両親。
それでも、愛していた両親を殺害され……
「歩美」
瑠夏の声に、ゆっくり顔を上げる。
彼は歩美の方に近寄り、くすりと笑った。
「オレ達は、歩美の味方だよ」
爽やかに吹く風が、彼の心の闇を溶かしていく。
瑠夏が浮かべる笑顔は、昔と何一つ変わらない優しいもの。
そんな彼の笑みを見て歩美は、やっと笑ったのだった……。
(つづく・・・)
今回の騒動での陰の功労者は、美雪といっても過言ではありません。
このお話は作者の中でも一番大好きです。
瑠夏はこういう時はかっこいいんですけどね~普段がこうだったらいいのに・・・なんて
次回、JOKERが一つに!




