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桜瀬伊吹

伊吹が歩美だった真実を受け入れられない瑠夏。

そんな時、妹である美雪から彼がいなくなったと聞き・・・?

店から約十五分足らず。オレは彼女達が住んでいるマンションの部屋へとやってきた。

ミッキーに案内されあがった部屋は、家具だけが置いてあるシンプルな部屋だった。


「ごめんね。ちょっと狭いけど」


「お、お邪魔しま~す」


「今お茶入れてくるね。ま、適当に座っててよ」


そういわれてダイニングテーブルのところに腰かける。

テーブルの近くに、ミッキーの携帯らしきものが充電器に置かれている。

そういやオレ、ブッキーのアドレス知らねぇや。

迅ちゃん達のはかろうじて知ってるけど、教えてもらおうにもすぐ断られるんだよね~。


「ほい、おまたせ」


「あ、ありがとう。それで、まだ歩美は帰ってこないの?」


「機嫌悪かったから、多分相当遅くなると思う。まったく、心配してるこっちの身にもなってほしいよ」


ミッキーの口調から、彼がいなくなるのが初めてじゃないことはわかる。

ただ驚くことに女の子が暮らしてるとは思えないほど殺風景で、生活できるものくらいしか置いてないイメージがあった。

見たことないけど、ブッキーの家もこんな感じなのかな。


「あれ、他のみんなは?」


「歩美を探しに行ってもらってる。ミッキーはここで歩美と暮らしているの?」


「うん。二人暮らしなんだ~」


「二人って……ご両親は一緒じゃないの?」


オレが聞くと、彼女はふと悲しい表情を浮かべる。

いつも笑顔しか見たことなかったから、そんな彼女の表情がチクリと心がいたかった。


「小学校くらいの頃、火災でなくなっちゃったんだよね。二人とも」


!?


「幸い僕と歩美はけがなくてさ、二人はあっという間に息を引き取っちゃった。それで親戚の人に預けられたの」


親が亡くなっているって……

迅ちゃんの両親も、歩美の両親ともオレは仲良くやっていた。

あんな優しい人達がなくなったなんて、信じられない……


「親戚の人がいるなら、どうして二人だけで住んでるの? 何かもめごと?」


「これは後から分かったことなんだけどね、警察によるとお母さん達の首もとに何かで縛られたような跡があったんだって。事件の可能性があるからって調べてたら、親戚の家でお母さんがつけてたネックレスのかけらが見つかって」


そ、それってもしかして……


「お母さん達を殺したのは、まぎれもなく僕達を引き取った人だった」


何そのドラマ的展開! ある意味すごいんですけど!?

殺人犯と一緒に住んでたミッキー達、すっげ―!

ってそうじゃなくて!


「それ、ミッキー達はいつ気づいたの!?」


「僕は警察から聞いて初めて知ったけど、歩美は前から知ってたみたいで……。ネックレスを見つけたのも、歩美だし」


歩美が……?


「それから、かな。歩美があんなふうになったのも、人を信じなくなったのも」


「人を、信じない……?」


「るーちゃんも迅ちゃんも引越し以来、全然連絡くれないから」


自分がした過ちに気付き、ちくりと胸が痛む。

そうだ、歩美達が引っ越したあの日は……。


「歩美ね、ずっと信じて待ってたんだよ? るーちゃん達と約束した、三人でアイドルになるって。だから子供の頃からずっとアイドルしてるんだよ? なのに君達は……」


言われてみれば、昔にそう言う話を聞いたことがある。

大人顔負けの演技力で人を圧倒し、素晴らしい作詞能力で話題になった子供のアイドル。

あの頃は色々ありすぎて、テレビどころじゃなかったから全然知らなかった。

迅ちゃんにしても、歩美にしてもアイドルになることは忘れてなかったんだ。

もともとはオレの夢だったのに。

オレが、約束したのに。


「証拠のネックレスって、今も残ってるの?」


「えっと、多分歩美の机の引き出しに……入る?」


ミッキーに言われオレはそうっと歩美の部屋を覗いてみる。

彼の部屋は、リビング以上にものがなかった。

机と冬用のコートなどの服しか置いてなくて、部屋という感じがしない。

ミッキーは彼の机のタンスから小さな箱を取り出すと、オレに渡した。


「これが証拠品。歩美が警察に形見として持っててもいいですかって聞いて、特別にもたせてもらってるの」


箱の中に丁寧にしまわれた、パールの真珠。

少し色があせていたが、輝きはかすかに残っていた。


「警察はこれで殺害に及んだって判断してる。首に跡があったから、火災に見せかけた殺人だって」


正直、聞きたくなかった。

人が死ぬのは、大嫌いだから。

兄さんが死んでからというもの、そういうのはあまり好きではない。

迅ちゃんといい、どうして二人だけに不幸が訪れるのだろう。


ちらりと歩美の机の上を見て、はっとした。

書き散らされた紙に、ペン。

一枚の紙だけが物で押さえつけられていて、そこには彼の字が書かれていた。


「ミッキー、これは?」


「ああ、それ? 暇つぶしに書いただけだって。歩美、JOKERになってからもここによく帰ってきて一人でなんかやってる。僕料理できないから、いつも昼は僕と過ごしてるんだ」


桜瀬伊吹としての行動の意味が、分かった瞬間だった。

いつも夜遅くに帰ってきてたのは、ミッキーの世話のためだったのか。

人を信じていない、と言っていたのにやっぱり家族だけは大事なのかな。


でも歩美……ブッキーはちゃんとオレ達と、仲良くしようとしていた。

少しだけど、歩美の気持ちがわかる気がする。

孤独を好んでいるわけがない。

彼は今もきっと……


「ミッキー。オレ、歩美の場所わかった気がする。歩美を、オレに任せてくれないかな?」


ミッキーにそう言った後紙をたたみポケットに入れ、朔也達に電話をかけたのだった……。


(つづく・・・)

五人の中で、一番に過去がつらいのが伊吹になります。

この小説のメインはやはり主人公である瑠夏がいて、

彼と約束した幼馴染の二人なので

どうしても要と朔也が薄くなりがちですね。

私はみんな主役だと思ってますよ、はい。


次回、瑠夏が向かった先は・・・?

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