後悔
桜瀬伊吹の正体は、幼馴染の一人である大園歩美だった。
しかし彼は、冷たく突き放す一方で・・・
「迅君、どうぞ。ココアでよかった?」
「うん。ありがとう」
「頭痛の方はもう大丈夫?」
「大丈夫だよ。ただ……」
「ただ?」
「なんでだろう、僕桜瀬君とどこかで会ってる気がする……」
迅ちゃんが元気なさそうな声でつぶやくのを、オレは黙って聞いていた。
要は彼の気を紛らわそうと、違う話をして笑顔を浮かべている。
膝の上で腕を組みながらボーっとしていると、目の前にジュースの缶が現れた。
顔を上げると、そこには二つの炭酸を持った朔也がいた。
「ほい、おごりな」
「……………サンキュー」
「落ち込むのもわかるけど、らしくないぞ。過ぎたことを悔やんでも仕方ないだろ」
そんなこと、言われてもなあ。
何度も見てきた、ブッキーのあの目。
彼が歩美だとわかった途端、体が凍り付くほど何も言えなかった。
どこまでも漆黒にそまる、彼の瞳。
まるでだれも信用していないような、拒絶する目……
あんな表情をする歩美は見たことないし、あの頃の歩美の面影は全くない。
それでも彼が歩美なのは、納得がいく。
不器用ながらもちゃんと仲間のために少しずつ優しさを示すところ。
最初会った時から、どこかで会ったような感覚はしてたけど……
「大園歩美、だっけ。昔からあんな感じなのか?」
「まさか。歩美は三人の中でも一番のしっかり者だったし、頼れるお兄さんって感じだったよ。それこそ迅ちゃんは一人っ子で歩美がよく面倒を見てたから、本当の兄弟みたいって言われてたよ」
ブッキーは、なぜ言わなかったんだろう。
オレも迅ちゃんも本名でアイドルをやっている以上、気づいててもおかしくない。
オレの知らない間に、歩美に何かあったんだ。
あんな表情を浮かべるほどのことが……
「ねぇ瑠夏、その歩美君って人のことは何も聞いてないの?」
「それが……引っ越したっきり音信不通になっちゃってて」
「きっと、何かあったんだよ。探ってみるか?」
朔也や迅ちゃんが覗き込んでくるのを、オレはあいまいにうなずく。
探すといっても、手掛かりになるものは一つもない。
一緒に暮らしてるとはいえ、彼の口から真実が語られるとは思えない。
第一、実家の住所とか知らないし……
とか何とか考えているうちに、オレの携帯電話が鳴る。
発信源は、知らない番号だった。
誰だろう。
「はいはい、もしもし」
『あ、るーちゃん?』
ん? るーちゃん? るーちゃんって呼び方……
『急にかけてごめんね。美雪だけど』
やっぱりミッキーだった。
でもなんでミッキーがオレの携帯に電話? いきなりどうしたのだろう。
「何かあったの? ていうか、よくオレの番号しってたね」
『天王寺会社に電話して、特別に教えてもらったの。ねぇ、今まだ店の中?』
「そうだけど……」
『歩美が帰ってこなくて……』
ミッキーのその言葉に、オレは言葉を失った。
『あの後すぐに歩美を見失っちゃって。実家に戻ってもいないし、電話かけても出てくれなくて……。どーしよう、るーちゃん!』
電話越しでも、彼女が動揺しているのが分かる。
これは、チャンスなんじゃないか?
実家にいないということは、つまりミッキーは今実家にいる。
そして歩美の帰りを待っている。
それなら……!
「ミッキー、実家の住所教えてくれない? 歩美の話、詳しく聞かせてほしいんだけど」
そういってオレは、彼女からの電話を切る。
何事かと朔也達がオレをのぞき込む。
「歩美がいなくなったらしい。オレ、実家に行ってみる。その間、朔也達は歩美を探して!」
「……分かった。何かわかったら連絡よこせよ」
そういって朔也は要と迅ちゃんを連れて、走り出した。
三人の背中を見ながら、オレは一人決意するように歩き出した。
*
「うん、わかった。じゃあまっとくね」
美雪は携帯を切り、ふうっとため息をつく。
彼らをここに読んだ以上、話さなければならないことがたくさんある。
歩美はどうして、素直にならないのだろう。
ずっと瑠夏を、待っていたはずなのに。
「ちゃんと出来てたかな、演技……」
仏壇の上に置いてある家族写真に写る、歩美の笑顔。
その横に、迅と瑠夏三人で写っているのもある。
いつくらいだろうか、彼の顔から笑顔が消えたのは。
それでも、彼がいれば何かが変わると信じていた。
瑠夏がいれば、歩美も昔に戻ってくれる。
「るーちゃん達に全部話すよ。それが歩美の望みなら……」
彼女は写真に写っている人物に話しかけるように、少し笑って見せた。
(つづく・・・)
五人の中で一番イケメンなのは
私的に絶対伊吹だと思ってます。
人気の高さとか、迅ちゃんとワンツーフィニッシュなんじゃないかな? なんて
すみません、本編とは全く関係ない話しました。
本編がこんななので、どんなに面白い話をしようと
意気込んでもむなしいだけな気がします。
作品が暗いとこっちまで沈むって、こういうことでしょうか
次回、秘密のベールがすべてあきらかに!




