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望まぬ再会

拓人に最後の配達と言って渡されたのは、見覚えのある住所?

向かった先にいたのは・・・?

「すみませ~ん、霞亭で~す。出前を持ってきました~」


出前先の家に着くなり、オレは家の前で叫んでみる。

何年も住んでいるのか、お世辞にも外見がいいとは言えなかった。

う~ん。この家、な~んか見覚えある気が……

なかなか出てこないため、聞こえなかったのかなともう一回叫ぼうとしたその時だった。


「お~きたきた、待ちくたびれたぞ。……んん? 瑠夏、なんでここに!?」


「お、親父!?」


いやな予感が的中した瞬間だった。

その家にいたのは言うまでもなく、オレの親父だった。

どこからどう見ても中年のおっさん的な外見は相変わらずで、少しひげが伸びていた。

いや、それより……


「なんでここに親父が住んでんだよ! 金は大丈夫なわけ!?」


「私より金の心配か。よくできた息子だな、まったく」


「質問に答えろよ!」


「安心せい。今は母と一緒に住んでる」


どうりで見たことある家だと思ったら、ここおばあちゃんちか。

成人となった今は、まったく通うことがなくなってしまったから忘れてたよ。


「あ~ちょうどよい、話がしたかったんだ。時間あるなら、上がって一緒に食うか?」


「まあこの後出前ないし……いいけど、ちゃんと代金は払えよな」


「お前はどこぞの借金取りか、まったく。久しぶりにあったというのに」


正直に言おう、オレは親父が大嫌いだ。

小さい頃からとにかくおっちゃん臭くて、やってる事が子供っぽすぎるから。

兄さんがなくなって、会社を継ぐのはお前だと耳がタコになるくらい聞かされた。

おまけに昔いた母親とも離婚、嫌いにならないという方がおかしい。

ま、この後の予定なんもなかったしちょっくら話すのくらいいけどさ。


「初公演、見たぞ。なかなかの出来じゃないか」


「え、見てたの!?」


「テレビ中継されてたからな~息子の晴れ舞台を見ないでどうする」


いわれてみれば、兄さんの出演するテレビを親父は全部見ていた。

いつもオレの横で、頑張ってるなあとぼやきながら。

自分のために見てくれてたんだと思うと、なんだか複雑だなあ。


「それで? どうしてお前が霞亭のバイトをしてるんだ?」


「天王寺会社の社長が、次の公演費は自分達で稼げと」


「さすが敏腕社長なだけに、やることは違うなあ」


「あの社長のおかげで、こっちはいい迷惑だよ」


オレがため息をつきながら言いうのを、親父は運んできたうどんを食いながら聞いている。

すると親父が、そういえばと思い出したように口を開いた。


「そういや昔お前と仲が良かった歩美君と迅君、だったけな。その二人がどうやらここに帰ってきてるらしいぞ」


「え、うそ! 歩美が!?」


思わず身を乗り出し、親父に詰め寄る。

彼はそうなることが分かっていたかのように、平然とうどんを食べ続けた。


「母さんが言ってたことだから、あんまり信用しとらんがな。にしてもお前、なぜ歩美君だけに反応したんだ?」


「あ、実はその……迅ちゃんにはもう会ったというか……」


話していいのか迷ったけど、彼のことを一応話してみる。

親父はふむふむとうなずきながら、オレにぽつりと言った。


「そうか、やはりあの迅君で間違いなかったか」


「間違いなかったかって……親父知ってたの!?」


「両親が事故で亡くなって、記憶喪失になったくらいまではな」


「知ってたんなら教えてくれよ!」


「その迅君がJOKERにいるまではわからんわい」


ああ、もう。むかつくなあ。

この調子なら、歩美の場所も知らなさそうだな。

ま、近くにいるならいつか会えるかもしれないけどさ。

でも迅ちゃんみたいに、歩美の身に何かあったとしたら?

だから、アイドルになっていないのかな?


「どうした、瑠夏」


「え? いや、なんでもない」


「うどんおいしかったぞ。また出前頼むな」


「自分の足で、直接店で食べろ」


そういって、自然と笑みがこぼれた。

会社が倒産したとはいえ、ちゃんと元気にやってたと思うと安心する。

親父がテレビにくぎ付けになるようなアイドルに、オレもなれるかな。


と、その時だった。

オレの携帯が、軽快になった。

発信者が朔也だということに驚き、急いで携帯を耳に当てた。


「もしもし、朔也? どったの」


『大変だ、瑠夏! 要が、店からいなくなって……!』


しんじられなくて、頭が真っ白になった。



それは、さかのぼること一時間前―。

ちょうど瑠夏が、出前へといった時だった。

拓人を含めたJOKERの面々は、いつも通り店を切り盛りしていた。

なかでも要は、ぎこちない身でありながらもちゃんと接客ができるようになっていた。


「だいぶ慣れてきたな、要」


「うん。みんなの、おかげだよ」


「僕達は何もしてないよ。まったく、君の成長ぶりには感心するよ」


迅がため息交じりで言うのを、朔也は苦笑いで見つめる。

そんな光景を見て、要もくすりとほほ笑んだ。

店のドアが開いたのにいち早く気づいた要は、接客をしようと走り出す。


「いらっしゃいま……」


店の中に入ってきたのは、女性だった。

ツインテール状に縛った髪と、きれいに整備された制服。

それは誰をも魅了する、美少女だった。

すれ違う人、誰もが一度は振り向くような……


「渡辺さん………」


か細く放たれたその一言が要のものだと気付いたのは、朔也だった。

彼の目の前にいる女性は、独特な雰囲気を醸し出している。


「要、知り合いか?」


「いや、あの……」


「ここは俺に任せて、要はあっちを頼む」


耳元でささやきながら、朔也はいらっしゃいませと接客を開始する。

すれ違い際、彼女はぎろりと要をにらんだ。

小刻みに震える手に気付いた迅が、そっと駆け寄る。


「大丈夫?」


「……うん」


「やっぱり女性の接客は難しいみたいだね。それで、彼女は君の知り合い?」


「………昔の、同級生……だよ」


そういう要の顔は暗く、彼女はいなくなってるというのに震えが収まっていなかった。


「要、ちょっといいか」


同時に、接客を終えた朔也が戻ってきた。


「さっきの客が、要を出せって聞かなくて。いけるか?」


「た、多分、大丈夫」


「無理しなくてもいいんだよ。君、女性恐怖症でしょ?」


「僕、行くよ」


そう決意した彼の声は、まるで覇気がなかった。

まだ自分達と関わるのも怖がっていた、あのころと同じように……。

要は重い足取りの中、少女のもとへ歩いていく。

やっとのことで近くに来たというのに、少女はメニューから目を離さずにいた。


「あ、あの……何か、ご用……ですか」


「声が小さくて、聞き取れないんだけど」


「す、すみませ……」


「こんなとこで会うなんて、運命ってすごいね」


にやりと笑った少女の行動は、信じられないものだった。

彼女は自分のそばにあった水を、要にぶっかけたのだ!

それを見ていた朔也達が、たまらずその場に駆け込む。


「お客様! 何を……!」


「ごめんなさい、手が滑っちゃって。でもあなたが悪いのよ。この裏切り者」


猜疑心に包まれたその瞳は、決して迷いがなく要を一心にとらえていた。

すごく小さな、小さな悲鳴をあげた。

それが要の声だと気付いたものは、おそらく近くにいた朔也達でもわからなかっただろう。

次の瞬間、要は店の外へ走り出した。

そしてあっという間に、彼は姿を消したのである……。


(つづく・・・)

一話以来の登場、お父さんです。

そんなことより皆さんは要ぇぇぇ! 状態ですよね、知ってます。

いい子すぎる要が、私は心配でたまりません。


次回、年末年始のため更新をお休みします

こんな時になんだよ!と思うかもしれませんが

ご了承くださいませ


かわりに遊部を‥‥なんて、冗談ですよ

1月4日ごろ更新再開です! 皆様よいお年を!

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