道は厳しく険しいもの
拓人に指示された役割は、まさかの配達?
瑠夏の運命はいかに!
「まずは……この料理を駿前町の……二丁目にお願いします」
「ねぇ、なるちゃん。まさか……この自転車に乗れってことじゃないよね!?」
目の前に起こっていることが信じられなくて、オレはたまらず叫んだ。
成海拓人―通称なるちゃんに言われ、しぶしぶ店の裏口へと案内されたオレ。
他のみんなが接客とかいう仕事に対し、ただ一人だけ配達……。
まあね、最初から嫌な予感はしましたよ! もちろん!
あの紙にオレの名前がない時点でおかしいもん!
それで? 今度は配達をこんな自転車一台でやれってか!?
オレ一応アイドルなんですけど!?
「……何か……問題でも……?」
それなのにだ!
なるちゃんってば、あたかもこれが普通ですよという顔でオレを見やがる!
くぅぅぅぅ! 悪魔め!
「問題も問題! 大問題! こんな自転車で重いうどんなんか運べないって!」
「……オレはいつも運んでます……問題ないです……」
「そりゃここの息子だったら慣れるもんでしょ! それになるちゃん、若いし!」
「……若い?」
キョトンとした顔で、彼はオレをみる。
なるちゃんはしばらく考えているような表情を見せたが、ああと声を漏らし言った。
「オレ……二十四なんですけど……」
へえへえそうですか、二十四だったら充分若……
ってえええええええ!? 二十四って、年上なんですけどぉぉぉ!?
「い、今までため口ですみませんでした!」
「……別に……オレはそういうの……気にしないタイプなので……」
「いやでも、事務所でも一応先輩だし……今頃かもしんないけど」
「今まで通りで大丈夫です……舞楽達は……うるさいかもしれませんが……」
あ、そうなの? な~んだ、よかった~。
こういう人がいてくれると、正直助かる。
昔から上下関係はどうも苦手だったし、現に年上なブッキーにもため口だしね~。
「とりあえず……これをお願いします……時間内に来ないと……クレーマーが激しい人ばかりなので……急いだ方が……」
「すっ、すぐにいってきます!!!!」
そういってオレは自転車にうどんを入れた箱をのせ、勢いよくペダルをこいだ。
そこからの出来事は、あまり説明したくない。
なんといっても出前先の道が混雑すぎて大変だった。
あまり方向音痴じゃないオレでも迷いそうになるんだから、相当すごかったと思う。
近くに来たと安心したと思いきやの坂道、坂道、坂道!
お前らよくこんなとこに住もうと思ったな、こんちくしょう!
住むならもうちょっと行き来が楽なとこに住めよ!
というかんじで進むにつれ、オレの体力は限界寸前だった。
自転車をこぐたんびに聞こえる皿の音が、気になってしょうがなかった。
割れてないか、こぼれてないか。
出前先についたときは、到着時間を大幅に過ぎていた。
「あなた新人さん? 困るのよね~おいしいうどんが冷めちゃったら元も子もないじゃない!」
「このうどんのびてるんですけど! どうしてくれんの!?」
「君ねぇ、とっくに時間は過ぎてるんだよ? こんなにめちゃくちゃになったうどんを、どう食べろっていうんだい?」
行くところにクレームあり。
嗚呼、なんでオレが悪いことになってるんだろう。
オレはちゃんとやったよ、やり切ったんだよ。
これで霞亭の売り上げ落ちたら、オレのせいになるのかなあ。
それもこれも、全部社長が悪い!
オレは全く悪くない!
「……あ……おかえりなさい……その様子だと……相当やられましたね……」
霞亭に帰るなり、なるちゃんが声をかけてくれた。
こうなるとわかってたんなら、オレに頼まなきゃよかったのに。
なるちゃんは毎日この仕事やってるんだもんなあ、すげぇ。
「……しばらく休憩しては……どうですか? まだ出前の依頼は……ないので……」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
オレはそういって、最初に更衣した場所へと入った。
そこには何かをぎゅっと握って縮こまっていた、要がいた。
「あれ、要じゃん。休憩?」
「あ……瑠夏君。配達、終わったの?」
「行くことクレームだらけで、たまったもんじゃないよ」
オレがぼやきながら座ると、彼ははいとお茶を渡してくれた。
お茶一杯を一気に飲んだオレは、そういえばと話を切り出した。
「要はどう? 注文とるの、うまくいってる?」
「…………うん」
ん? 今の間は何だ?
改めて部屋を見渡し、ここには要しかいないことに気付く。
朔也達はまだやってるってことは……
「もしかして、人見知りすぎてうまくいってない?」
「ひぃぃ!? どうして、それを!」
やっぱり、か。要ってわかりやすいなあ。
まあねえ~注文取りって役割見た時から、大丈夫かと心配してはいたけど。
最近の要は成長してるし、初ライブの時だってうまくいってたからてっきり……
「ライブの時みたいに、距離があるのは大丈夫なんだけど、面と向かって人と話すのは、怖くて……」
「それで休憩してたの?」
「うん……朔也君から、天然石でも持ち歩いてみたらっていわれて」
ああ、それでさっきから何か握ってるわけね。
ただの天然石が役にたつもんだなあ。
「そだ! 朔也達の働きっぷりをお手本にするってのはどう? 何かつかめるかもしれないよ!」
「そう、かな?」
「オレも見てみたいし、一石二鳥ってやつ?」
そういってオレは、強引に要を引っ張って現場に向かったのだった
(続く!)
もうすぐクリスマスですね。
クリスマスと言えばケーキ! チキン! あとはなんでしょう
JOKERは瑠夏が一人はっちゃけてそうですけど、それに乗ってくれるのは
優しい優しい要くらいですね。瑠夏の扱いは、作者同様雑なので
次回、要と! 瑠夏の! 調査隊出動!笑