本番当日
迅に隠された秘密を知り、少しずつ距離を縮めていく
瑠夏達。いよいよデビューのための公演の日が、
幕を開ける!
何だか、いいにおいがする。
そう感じたのは、目覚ましが軽快に鳴り響いた時だった。
時計を見るとちょうど八時を回った時間帯だ。
外から誰かが話している声が、うっすらと聞こえてくる。
恐る恐るドアを開けると、そこには……
「よぅ、相変わらずの寝坊だな。朝倉」
「うぎゃあ! ブッキー! びっくりしたぁ!」
ドアを開けたすぐ向こうに、ブッキーがいた。
長い髪をゴムで一つに束ねており、手には包丁を……って……
「ブッキーなんで包丁持ってるの!? 怖いんですけど!!」
「何回起こしても起きないっていうから、ショック療法をやろうと思ってな」
「ショックどころか死んじゃうから! ていうか、迅ちゃん達も止めてよ!」
オレがそう嘆くと、涼しげな顔をして朝食を食べながら迅ちゃんが言った。
「仕方ないでしょ。目覚まし何回鳴らしても起きないんだから」
「俺達より桜瀬の方が、迫力あって起きるだろ?」
「僕はやめた方がいいって言ったんだけど……ごめんね、瑠夏君」
きぃぃぃぃ! 許さん! 要以外、グーパンチで殴ってやる!
「さっさと食べな。朝食冷めるだろ」
ブッキーはそう言い捨て、台所へ去っていく。
今日は彼が当番だったのだろうか、フレンチトーストとスープがテーブルに置いてある。
「お、今日はフレンチトーストだ~♪ んでこのスープは何?」
「見ればわかるだろ、コンソメスープだ」
「え~スープっつったらコーンスープでしょ~ オレコンソメ苦手なんだけど」
「文句言うくらいなら食うな。作ってやっただけいいと思え」
ぶっきらぼうにそう言い放った彼は、くくっていたゴムを取りながら足早に去っていく。
なんだかんだ言ってちゃんと当番をこなすところは、いい人なんだけどなあ。
まったくあの人はよくわからない人だ、はあ。
「にしてもお前、ちゃんと理解しているんだよな?」
「ん、何が?」
「今日が公演だってこと、もう忘れたのか?」
あまりの衝撃に、ごほごほと咳こんでしまう。
そうだ! すぅぅぅっかり忘れてた!
迅ちゃんが倒れるという事件から約一週間、オレ達はついにその日を迎えたのだ!
その日が今日、確か午後から始まるって言ってたっけな。
だから珍しく、ブッキーが起こしに来たのかな?
いつもだったらほっとくもんね~リーダーが遅刻とかは避けたかったのかも。
「朝ご飯食べ終わったらここに集合してって。真城さんから連絡来てたよ」
「あれ、いっちゃん一緒にはいかないんだ?」
「要がいるからね。それに、あっちの準備で忙しいらしいよ」
あっち、というと公演会場のことかな?
公演といえば、あの煌とかいうグループの人達にも会うのか。いやだなあ。
「ごちそうさまでしたっと! さて、行くか!」
「行くかって瑠夏、寝間着でか?」
「あ、着替えるの忘れてた」
「君って本当にどうしようもないバカだよね」
「それが瑠夏君らしさ、だけどね」
「うるさいなあ。ほらほらいくよ、三人とも!」
オレは足早に着替えながら、その場にいた三人と一緒に動き出した。
(続く!)
さていつになったら歌うんでしょうね。
はよ公演しろよと思っているのは、私だけじゃないはず。
次回、メンバーのある一人に変化が!