オンチをなおせ!?
早速レコーディング!
と思いきや、瑠夏のオンチがあきらかに・・・・?!
「あ・い・う・え・お! か・き・く・け・こ! さ・し・す・せ・そ!」
大きな声を上げ、五十音を一つずつ言っていく。
この練習を通算何回しただろうか。
ボイストレーニングという名のオンチ改善練習を始めてはや三日。
迅ちゃんに言われた通り、オレは一人寂し~く個室で練習してます……
オンチにも色々あるらしく、いっちゃんから音階オンチに分類されるといわれた。
音階オンチを治すには、とにかく大きな声を出すことが有効らしい。
腹式呼吸を使っておもいっきし声を使うことで、声をならすのが大切なんだそう。
朔也からの提案で、自分の声を録ったものを聞いたりもした。
ちなみに聞いただけでも害が出てしまうため、なるべく音量は小さくした。
うん、自分でも自覚はしてたけど想像以上だった。
よくこんな声を、あの四人に聞かせることができたな。
小さい頃家で歌ったりしてた時に、親父は気づかなかったのか?
いや、気づいてたらそもそもここにさえいないか。
オンチって治すのどんだけかかるんだろうなあ。
JOKERのリーダーなのに、やめることになっちゃったらどうしよう!
「瑠夏、ちょっといいか?」
そんな中朔也が手招きをして、珍しくオレを誘ってくる。
いつもは一人ほったらかしにする一番の奴が、珍しいもんだ。
「どうだ? 少しは歌、ましになったか?」
「ん~ま~……普通?」
「よし、じゃあ試してみるか。サビの部分だけ歌ってみろ」
そういわれ、しぶしぶサビの部分を小さく歌ってみる。
歌い終わって目を開けると、そこにはいつのまにいたのか涼しい顔をした迅ちゃんと要がいた。
「……ふうん、まあまあだね」
ぐはぁ!
「確かにオンチじゃなくなったけど、微妙にずれてるところがある。まだまだ練習が足りてないね」
ううっ……迅ちゃん、ひどい……
「ま、瑠夏なりに頑張ったんじゃないか? な?」
「うん……うまくなったね、瑠夏君」
うおおお! 心の友よぉぉ!
よし、やる気全開! こうなったら迅ちゃんに認められるように、うまくなってやる!
「おいお前ら、何してんだよ。レコーディング、遅刻すんぞ」
するとブッキーがオレ達を呼びながらも、一人でさっさと行ってしまう。
遅刻? ていうか、レコーディングって何だっけ?
「おい瑠夏、まさかとは思うが……レコーディング知らないのか」
「うん、さっぱり♪」
「そこ笑顔で答えるとこじゃないよ」
ふんだ、わかんないだからしょうがないもん。
「レコーディングは、歌を収録すること。今から一人一人、歌を収録するんだ。そこに行けってさっきマネージャーから言われたんだよ」
おお! ついにオレ達の歌が、CDに!
「オレも一緒行っていい!?」
「君は練習があるでしょ」
「で、でも同じ歌を聞いてたら自然と頭に残るじゃん?」
オレが粘り強くいうと、迅ちゃんは深いため息をつきながら歩いてゆく。
オレはそんな迅ちゃんの後を追うように歩いた。
その後ろを、朔也や要がついてくる。
そういえばオレはともかくとして、迅ちゃん達の歌ってどんなのだろう。
要はオレと同じくらい素人なのに、ちゃんとできるのかな?
というか、レコーディング現場って女子を含めたたくさんの人いなかったっけ。大丈夫かな。
人のことより自分のことを心配しろって朔也に怒られそうだけどね。
その時、だった。
角を曲がってすぐ、歩いてくる人影に気付かなかった。
正面からぶつかり、バランスを崩して座り込む。
思い切りしりもちをついたせいか、ものすごく痛かった。
「いっだ~す、すみません」
ぶつかった人に謝りながら、顔を上げる。
そこにいたのは、上品そうな雰囲気を醸し出した少女がいた。
彼女はオレをさげすむような目で見た後、何も言わずに去って行ってしまった。
歩いている間もその子の雰囲気に、飲まれっぱなしだった。
「なんか感じ悪い子だな。立てるか、瑠夏」
「う、うん」
「あの人、見たことある……多分、うちの会社の人だと思うんだけど……」
要と朔也が言うのを、オレはぼんやりと聞いていた。
きれいな瞳だったと、改めて思う。
見ているとこっちまで吸い込まれそうな、ルビーのように赤い瞳。
これが、芸能人の圧力なのか?
「ちょっと、三人とも。立ち止まってないで、早くいくよ」
迅ちゃんの声が聞こえた時も、あの子の目が離れなかった。
(続く・・・)
先日、バイト先で瑠夏の名字である朝倉さんに
巡り会いました。
アニメでなら同じ名字とはよく出会うんですが、
身近にはなかなかいないので、少し感動しました。
あ、ちなみに話しかけまではしてませんのでご安心を笑
次回、レコーディング開始!