表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/52

ボイスレッスン


「それでは、ボイストレーニングを始めますよ。均等に広がってくださいまし」


眼鏡をかけたきっちりしてそうなおばさん講師が、オレ達に言う。

ダンスの次は、ボイストレーニングかあ。

いよいよあの曲にオレ達の歌が入るんだな~うひょぉ、わくわくしてきた!


「それではまずこの音から順に音を取っていきますよ」


と先生がならした三つの音は、ドとミとソだった。

迅ちゃんが言ってたコードってやつの一種みたいなんだけど、細かいことは忘れたなあ。

でも! ダンスが完璧になったんだ! ここでくじけるわけにはいかない!


「さ、いきますよ! さん、はい」


はあ~っと勢いよく息を吸う。


「ちょっ、やめろ瑠夏!」


朔也がとめる声が聞こえたのは、その時だった。


「ボエ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


オレは歌った。気が済むまで。

久々にこういうことを成し遂げたせいか、達成感さえあった。

ふっふっふ、どうだ! これがオレの実力……


「……あれ?」


目を開けると、そこには倒れこんでいる四人の姿があった。

ピアノの方を見ると、かけていたメガネが割れている先生がいる。

他にも窓が割れていたり、飛んでいたであろう小鳥が屋根の上で気絶している。


「え、何? どったの、みんな」


「どったのじゃないでしょ……! 何してるの、君は……!」


ひえぇぇぇぇぇ! 迅ちゃん、怖い! そんな顔しないで!


「だからやめろって止めたんだ。バカ瑠夏」


あ、やっぱり朔也の声がしてたのか。全然気づかなかった。


「朝倉ぁ……お前、ここをぶっ壊すつもりかぁ……? いい度胸してんな」


うお! こっちは迅ちゃん以上の迫力!

ブッキーって怒るとこんな怖いの!? 恐ろしい子!


「もう君のせいで耳がおかしくなりそうだよ! 要なんて気絶してるからね!」


あ、本当だ。要の頭上に天使が飛んでる。

って、そうじゃなくて!


「これ、オレがやったの!?」


「当たり前でしょ!? 何あの声!」


「何って、ただ歌っただけ……」


「あんな破壊力を持ってめちゃくちゃ下手なやつが歌!?」


迅ちゃんの様子と、ブッキーがむける怒りの視線を見てオレは思った。

ははあ、これはまさしく高校の時と同じことが起こってる……ということはつまり……


「オレもしかして……オンチがまだ治ってないってこと?」


「治ってないどころか健在だ。バリバリ」


あちゃー、またやっちゃった。


「オンチ?」


「んーいや、悪気はないんだけどね。オレ、かなり歌声すごいんだわ」


というのもすべて学生時代の出来事で気づいたこと。

それまでは誰も、何も知らなかった。

小学の時、学習発表会か何かの時の練習で教師や同級生達を失神させた記録を持つ。

それからも器物破損の疑いや、校長先生の命をも危ない目に合わせたという重要危険人物とさえされていた。

それを知った親父から、お前はもう二度と歌うなと口止めされたほどだった。


「す、すごい、ね……瑠夏君……って」


「すごいレベルじゃないでしょ。これ」


「悪いな。説明するのすっかり忘れてた」


「どのみち、やることは一つしかねぇよな」


ブッキーがぎろりとオレをにらむ。

みんなが、オレを一斉に見つめている。

え? 何? オレの顔に何かついてる?


「瑠夏。今から個室で一人、その声をどうにかしてくる特訓して。オンチが治らない限り、君はJOKERとしてやれないから」


う、うっそーーーーーーーん!


(続く!)

音階は知らない、歌は超絶オンチ・・・

瑠夏、お前アイドル向いてないだろと思っているのは、私だけじゃないはず。


次回、オンチ特訓です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ