マネージャー
曲が完成! したかと思いきや
次の試練が言い渡されて‥‥?
デビューのため、いよいよ動き出す!
『今日の三時からダンス・ボイスレッスンをしてもらいます』
社長から言い放たれたその一言に、オレ達は呆然と立ち尽くしていた。
自分勝手という言葉は、あの社長のためにあるといっても過言ではないだろう。
十日以内に曲を作れと指示した次は、ダンスや歌を完成させろだって?!
無理にもほどがあるだろ! なんて勝手なんだ!
「す、すみません、お母さんが、勝手なことばっかり……」
「要のせいじゃないよ。自分勝手すぎる社長が悪い!」
「確かにそうだが、ここでグダグダ文句言ってるわけにはいかないよな」
「でも、場所とか言われてないよね。どうするの?」
そうなんだよなあ、どうしたものか……
と頭を抱えていると、ピンポンと軽快なチャイムが鳴る。
来客なんて初めてだな、誰だろ。
オレが出るよとだけ言ってインターホンのボタンを押す。
「は~い、どちら様ですか~?」
『はじめまして。私は天王寺会社のもので、あなた方に伝えたいことがあってきました』
天王寺会社と聞いて怪しかったものの、仕方なく家の中へ通す。
どうやら女性のようだった。やんわりとしたショートボブヘアが、動くたびに揺れる。
その女性を迅ちゃん達がいるリビングに案内すると、視線が一気にこちらに向いた。
「瑠夏、お客さんか?」
「ん~よくわかんないけど、天王寺会社の人だって」
「ひぃっ!!!! 女の人!?」
すると何が起こったのか、要は顔を青くし近くにいた迅ちゃんの後ろに隠れた。
「え、ちょ……いきなり何?」
「すすすみません、僕、女の人、苦手で……」
「その反応的にあなたが社長の息子、天王寺要ですね。極度の人見知りなうえに女性恐怖症……データ通りです」
え!? 要、女性恐怖症なの!?
それにプラスするように人見知りな性格って……大変だろうなあ、要。
ていうかこの人、今データ通りがどうって言ってなかった?
何者なんだ、この女性……。
「申し遅れました。私は真城樹と申します。このたび、JOKERのマネージャーを務めることになりました」
マ、マネージャ――!?
みるからにしてわっかそうな人が、オレ達のマネージャー?
天王寺会社ってわけわかんない!
「あなた方のデータはすべて社長から受け取っています。早速ですが、ボイス・ダンスレッスンの場所へご案内します」
そういって無理やり外へオレ達は出される。
外に出ると、一台の車のそばにブッキーがいた。
「ブッキー! その車は?」
「そこの女に使いっぱしりされたんだよ。運転は俺がしてやる」
かくして、オレ達はとある場所へと向かうことになったのだった。
ブッキーが運転する車と樹ちゃん(面倒だからいっちゃんでいいかな)に案内されてやってきたのは、言うまでもなく音楽事務所だった。
看板に「天王寺音楽事務所」と分かりやすいように書いてあるのだから、さすがに苦笑いを浮かべてしまう。
あの社長、ネーミングセンスないんじゃないの。意外な一面発見ってとこかな。
「着きました。では、私についてきてください」
それにしても、いっちゃんはすごくさめざめとしてる女の子だな~。
こんな人がマネージャーって……いいのか悪いのか……。
「さすが天王寺会社所有のところ、でっかいな。迅は来たことあるのか?」
「うん。ここにはレコーディングを始めとした器具がそろってるから、多くの芸能人が使用してるんだ。天王寺会社じゃなくてもね」
ふむふむ。今からオレ達は、本当にアイドルらしいことをするってことになるわけか。
やっと兄さんと同じ舞台に立てるんだ、うれしいな!
「遅くなりました。JOKER五人、連れてまいりました」
「おっ。来たね、真城ちゃん。は~い、新人さん達。WELL COME♪」
そこには髪の毛を茶髪に染めた、いっちゃんとは正反対そうな女性が待っていた。
彼女はオレ達一同を見て、にっこり笑った。
「プロデューサーの天王寺美鈴です。困ったことがあったら、何でも聞いてね」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
「そう固くならないの。お、要じゃん。よくここまでこれたね」
「ひぃっ!!? ご、ごめんなさい!」
ん? 何? 要の知り合い?
オレがきょとんとしていると、要のかわりに迅ちゃんがため息交じりで言った。
「君って本当に馬鹿だよね」
「ちょ、バカってひどくない?」
「美鈴さんは天王寺会社社長の娘さんだよ。どういうことか、わかるよね?」
娘……? ってことは……要のお姉さん!?
うひゃあ! 確かに言われてみれば似ている!
「細かい説明は後! さ、あなた達は動きやすい服に着替えて。特訓よ!」
それからの出来事は、正直説明したくない。
アイドルになりたいとは言っていたオレだが、そのためのことは何にもやっていない。
美鈴さんに紹介されたダンスの講師はおかまだわ、更衣中にいきなりいっちゃんは現れるわで最低だった。
ダンスには体を柔らかくすることも大事、とのことで柔軟運動からやらされた。
無論、オレの体が柔らかいわけはなく……
「ふんぐぐぐぐぐ……うおおおおおおおおおおおおおお!」
「瑠夏~足曲がってるぞ~」
「ダハァ! もうダメ!」
「だろうな」
「そんな調子じゃ、いつまでたってもステージには立てないよ」
そういいながら、迅ちゃんは涼しげな顔で立った状態で足に手が届いていた。
なんであれが痛くないのかと、不思議でしょうがない。
パッと後ろを向くと、ブッキーもバレエ選手並みの柔らかさのように見えた。
さ、さすがプロ! やってた人達は違う!
「つうか~朔也だって体固いほうだよね~人に言えなくない?」
「あのなあ。超かったいお前に言われたくない」
「こんなのできるわけないじゃん。要も体固いほう?」
「はぁ、はぁ……は、はい……。僕、運動とか、あんまりしないので」
前々から思ってたけど、要って正真正銘ひきこもり?
人見知りなのは知ってるけど、女性恐怖症もあるんじゃあ学校とかどうしてたんだか。
そう思っている中、おかまの講師が次行くわよ~と指示する。
オレ達が作った曲の振り付けをしたのは、その人のようだった。
一日目、二日目と時間をかけてものにしていく。
その間も、ブッキーは一人だけ別の場所でやっていた。
要は体力的についていけないのか、その場に座り込んでしまうことがよくあった。
オレもオレで楽しいは楽しいんだけど、うまくいかない。
アイドルって、こんなにつらいんだ……とほほ……
「ずいぶん手こずってますね」
休憩時、いっちゃんがそういいながらジュースを手渡してくれた。
全員分あるようで、オレはみんなに回していく。
彼女はあえて要から遠くの場所にしゃがむと、オレに言った。
「そこまでしてアイドルをする意味はあるのですか?」
「あるに決まってんじゃん。今は大変だけど、踊るの楽しいし」
「よくあなた方は、こんな人をリーダーにできましたね」
へ? リーダー? 初耳なんだけど。
どういうことか朔也に聞こうと振り返ると、彼は苦笑を浮かべた。
「実は曲の提出日に、このグループのリーダーを書けって桜瀬に言われたんだ。社長の命令だって。その時に、みんなで話し合った結果」
「話し合ったって……」
「なんだかんだいって、君が一番張り切ってるでしょ?」
「僕達には、無理、なので……」
「こうやってこのグループが形になったのも、瑠夏がいたからこそだろ?」
うれしすぎて、涙が出てきそうにもなった。
どうしてこうこの三人は、オレを感動させることしかしないのだろう。
やっぱり、いいな。仲間って。
オレがリーダー、か。
そう思いながら、笑顔で「そうだね」と返した。
(続く・・・・)
作品のキャラには誕生日を設定してなんぼだと思っているので
もちろん彼ら五人にもあります
しかしかながら明かす機会を見失いつつあります
さぁ、誰が何月でしょうか
当たった人にはJOKERのブロマイドが!!
‥‥ついてきません、えへへ
次回、レッスン開始!