序章
またまた新作です!
今回ははばたけ!とは違う、超純粋なアイドル物語になります!
CLUBとともに投稿していくので、どちらもあわせて読んでくれると嬉しいです♪
「本当にバラバラになっちゃうんだね」
空を見上げながら、ぽつりと一人の少年が言う。
引越し屋の人達が忙しそうに荷物を次々に乗せていく。
それを横目で見ながら、別の少年が寂しそうに笑った。
「時間が過ぎるのって早いね」
「僕、迅ちゃんとも歩美とも離れたくないよ~!」
そう呼ばれた二人の少年が、泣きそうになる彼の頭をたたく。
「瑠夏、違うだろ。一生離れ離れになるってわけじゃないんだから」
「そうそう。またすぐこっちに戻ってくるよ」
「そうだけどぉ~」
瑠夏と呼ばれた少年の涙は、やむことなく落ちていった。
迅と歩美は相変わらずだなというように笑う。
向こうから、母親達が別々の車に乗り込みながら自分たちを呼ぶ声が聞こえる。
「じゃあいくな、瑠夏」
「またね、瑠夏君」
「スト~~~~~ップ!!!!!!!!」
何を思ったのか、瑠夏は大きな声で叫んで二人を呼び止めた。
彼はごしごしと涙を拭きながら、二人に言った。
「僕の夢、覚えてるよね? 僕、お兄ちゃんみたいなアイドルになる! 次会ったときに驚かせてやるからな!」
目を真っ赤にさせながらも、その目は決意に満ちていた。
耳がタコになるくらい聞かされていた、彼の夢。
それを聞いて、歩美はふっと笑った。
「ふうん、そこまで言うなら見てみたいもんだな」
「何言ってるの? 三人一緒にアイドルになるんだよ!」
「三人で???」
すっとんきょうな声を二人が上げる。
瑠夏がにっこり笑った。
「三人一緒なら無敵じゃない? 一緒にやった方が楽しいじゃん! どう?」
「アイドルか……ま、悪くはないな」
「うん、それいい。何事も楽しくなくちゃね」
「その意気その意気! あ、そうだ!」
いきなり声を上げた瑠夏は、足早に家の中へかけていく。
しばらくするとある缶を持って戻ってきた。
「これずっと持ったままだったの忘れてた」
そこにはいってあったのは、きれいな蒼色をしたガラスをネックレスにコーティングしたものだった。
「あ、これ。お母さん達と一緒に行った、ガラス工芸場でつくった時のやつだ」
「なんで俺達の分まで瑠夏が持ってたんだっけ?」
「まあ細かいことは気にしない!」
瑠夏はそういいながら、蒼いガラスをのぞきこむ。
二人も自分が作ったのを手に取り、空に掲げて見せた。
「大きくなっても忘れちゃわないように、これを付けて再会しようよ! そしたらアイドルやってる時も気づくでしょ?」
「確かに、それはいい考えかもね」
「瑠夏のことだ。すっかり忘れて、ネックレスなくしたーってことにならないようにな」
「しっつれいだな~歩美は」
そういうと、彼はにっこり笑った。
「アイドルになって、三人一緒に再会しよう!」
瑠夏はそういって歩美と迅に微笑みかけたー
いつか必ず、三人でアイドルに―
そうなることを三人は信じて別れ、数年の月日が流れた―