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渡り廊下の記憶 沖 美咲side3
画面に表示された「あの人」の名前。「あの人」から届いたメールを開き、内容に目を通す。……息が詰まった。息が苦しい。冷汗が一気に噴き出してきて、止まらない。
僕はその場から、この学校から逃げるように駆けだした。今から入学式なんて事はどうでもよかった。あの吸血鬼の事だってどうでもよかった。僕の意識は、あのメールを見てから自分の事よりも「あの人」の方に、いや、「あの人」から自分を守る事だけに向いていた。
車が、止まっていた。メールにあった通り学校の校門の前に止まっていた。黒塗りの車。紛れもなく「あの人」の車である。