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渡り廊下の記憶 天使美影side2
少しずつ血を吸っていく。一気に吸うと、慧が死んでしまうからだ。それだけに、吸血するだけでも精神的に疲れる。
「……ん……ふぁ……」
「……もうやめろ」
「……うん」
今日もやめるよう言われてやっと吸血をやめる。きっとこの声が無ければ僕は慧が死ぬまで血を吸い続けるだろう。
首筋に突き刺した牙を抜き、ついた後をハンカチで押えてやる。いくら大人とはいえ、さすがに痛いのだろう。何度やっても牙を突き刺した所が痛むのか、時折顔を歪める。
その時、背後から気配がした。
振り返るとそこにいたのは黒い髪の少年。見た事のない顔をしているから、新入生だろうか。今、自分が吸血しているところを見られたのではないか。そう思い、少し不安になった。
少年はそれを聞く様子を見せず、体育館までの道だけ聞くとこの場を離れていった。逆にそれが、見られたのではないか。という不安を大きくして、少し苦しくなった。