渡り廊下の記憶 天使美影side1
いつものように、慧に人通りの殆んど無いあの渡り廊下に来てもらうよう頼んだ。大人の吸血鬼は一月に三回ほど血を吸う。毎日飲まなければいけない訳ではないので、血が足りなくなり、欲しいと思った時にだけ血を貰っている。そうでなければ慧が死んでしまう。普通、吸血鬼は女性の血を吸うのだが僕は幼いころから慧の血しか飲んだ事が無かった。慧以外の誰かに血を貰おうと思う事も無く、大人になった今でも貰っているのだが、やはり教師という仕事は不規則だ。毎日顔を合わせていると言っても吸血しているところを誰かに見られるのはさすがに避けたい。その為にこの渡り廊下で血を貰っているが、お互いの都合がつかない事の方が多い。幸い今まで血が不足したために理性が働かなくなったと言う事はないが、いつ血が足りなくなるか分からない。校長は最悪の場合、言ってくれれば血のストックをあげると言っていたが、それは本当に最終手段だ。今まで、何度か慧以外の血を飲んだ事があったが慧の血の味に慣れている自分にとってはどれも不味かった。
暫くすると、慧がやってくる。こうして二人で人気のない所で会う時に、ましてや入学式の日に真っ白な白衣を着た慧の姿は、日本人ではありえない銀髪である僕より目立っているのではないかと少し不安になる。慧とは顔を合わせるのは今日三回目だけれど、今回は血を貰う為である。僕は誰もいない事を確かめると慧の首筋に牙を突き立てた。