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渡り廊下の記憶 沖 美咲side1
入学式当日。僕は、この広い校舎で迷子になった。それも当然の事だろう。この校舎は広い上、まるで迷路のようにややこしい。先程までいた教室から少し歩いただけでもう、元の教室がどこか分からなくなる。それに、僕は単独行動をしているから誰かに頼る、という事が出来ない。気付けば、人通りは全くなく、目の前に見える渡り廊下以外何も無かった。
「……ん……ふぁ……」
「……もうやめろ」
「……うん」
渡り廊下から微かに聞こえる話し声と、血の匂いに少し眉を顰める。明らかに、吸血の時の血を吸う音が今聞こえた。この先に吸血鬼がいる。そう思うと、自分の理性が今にも崩れそうになる。早まった呼吸を落ち着かせるため深く息を吸うと、遠慮がちに話し声のした渡り廊下へと歩いた。