僕の告白
「……僕さ、天使と吸血鬼の混血なんだよね」
静かに告げられたその言葉に、衝撃を覚える。人間と吸血鬼の混血はよく聞く話だが、天使と吸血鬼の混血は聞いた事が無い。天使と吸血鬼、その間に生まれた先生がどれほどつらい思いをしたのかも分かる気がする。
「吸血鬼からは天使と言われて、天使からは吸血鬼って言われて……正直、僕自身が何なのか分かんなかったんだ」
「……」
さっきまでの言い合いが嘘みたいで、ここで聞こえる音は先生のつらそうな声だけだった。
「……僕だってそうかもしれないですね」
「え?」
僕の視界に映る先生は、不思議そうな顔をしていた。これを話せるのは、あの子以外、先生だけだろう。
「僕も、先生と同じ混血の吸血鬼ですよ……」
「……そっか……でも、やっぱりね」
「僕だってそう思ってた、どうしてそう言われるのか不思議だった……僕の所為で、両親は死んだ」
さっきまで、寂しそうにほほ笑んだ先生を見ていた僕の視界がどんどんぼやけてきて、もう先生の表情が読み取れない。頬を何かが伝う感触がして、自分が涙を流している事を知った。
「全部、僕に話して下さい」
天使先生の優しいその声が、さらに追い打ちを掛けて、もう、涙の止め方なんて分からなかった。
「両親が……殺された。僕が知ってるのはっこれくらいです……もう、顔も覚えてない」
「……」
「それからすぐ、「あの人」に拾われた……」
「……やっぱりそうでしたか」
「?」
「君の両親が殺された事件、僕知ってますよ」
「何で……」
「あの後、君が「あの人」と言っている方に引き取られた。それも知ってます」
「……」
「だって、引き取ってくれって言ったの僕なんですから」
「何言ってるんですか……」
「さすがに覚えてないかあ……」
「覚えてないって」
「君に……君の両親が死んだと言う事を伝えたのも、犯人は吸血鬼だと言ったのも、全て僕ですから」
「ついに言いましたか」
僕の声でも、先生の声でもない声が渡り廊下に響いた。