プロローグ
吸血鬼なんて居なくなってしまえばいいのに。吸血鬼なんて、ただ誰かを不幸にするだけの存在だ。
そう思ったのはいつの事だったか。親に捨てられたこの苦しみを憎しみを忘れた日などなかった。
沖 美咲。それが僕の名前。世界で一番嫌いな僕自身の名前である。
僕が通う学校は、吸血鬼と人間が共に学べる学校を目指しているらしく、全国的に見ても珍しい吸血鬼と人間の学校である。
昔は、吸血鬼の存在は迷信だと言われていたが今では、吸血鬼が居るのは当たり前の世界。吸血鬼は美しい容姿をしている。例えば……僕の担任、天使 美影先生。
今日も銀髪の髪と碧の眼をして、教壇に立つその姿は絵の様だと思う時がある。だが、彼は吸血鬼だ。僕の憎むべき吸血鬼。今日も天使先生を観察する。いつか殺すために。だが、天使先生はその視線にすぐ気付いて僕の方を見てきて気まずくなって目をそらす。僕の席は窓際なので目線は自然に窓の外に向かって、暫くすると天使先生の視線も感じなくなった。疑問に思う事がある。どこかの本で吸血鬼は日光が苦手と書いてあった。だが、天使先生は日光に当たっても特に気にする様子はない。この校舎には採光の為の中庭があるのだが、天使先生はよくそこで本を読んでいる。日光が苦手ならば、そんな事はしない。僕ならの話なので絶対だとは言えないが。
「おーい沖くーん」
「は、はい!」
「ちゃんと先生の話は聞いてて下さいね」
「……はい」
僕にとってこの教室は、この学校は、吸血鬼に復讐する為だけにあるようなものだ。