第3話 邪悪な魂の器と囚われのエルフ
膨大な量の異世界の知識が頭の中に入り込んでくる中、今特に必要な知識を探す。
今、必要なのは魔法の知識と邪神についてだな・・・
彼女の記憶にある主犯の邪神の遣い・・・まずこいつをどうにかしないとだし、
魔法の知識を得たことで大きな疑問が浮かび上がってきた。
「白い魔法陣が鈴音さんの足元に展開したということは、穢れなき者による魂魄魔法陣ってことだろ・・・?邪神の遣いが使えるとは思えないし・・・ましては普通の
人間では100人集まってもできないらしいし・・・人間以上の穢れなき者?」
情報が少なすぎる・・・一度鈴音さんの所に戻ろう。
鈴音さんは壁を背にもたれたまま、浅い呼吸を繰り返している。大分苦しそうだ。
まだそんなに経っていないはずなのに・・・
「鈴音さん、もう少しだけ後もう少しだけ待ってくれな・・・必ずここから抜け出す
方法見つけてくるから」
鈴音さんの気流を吸い続けている黒い石に向かって飛び込んだ。
どのくらい下に下がったのだろうか。気流の流れに任せて進んでいくとだだっ広い場所にでた。東京ドーム丸々一個は入るんじゃないだろうか。
その真ん中には黒い魔法陣が描かれていて人間の臓器を思わせるもの・・・人間で言うところの胃があった。胃は何故か中身が見えていて、ものすごく大きな手と
生き物、それに魂が蠢いていた。そんな異様な光景に呆然としていると、胃の中央
付近に人がいるのを発見した。
エメラルドの綺麗な長い髪・・・長く尖った耳・・・目は苦しげに閉じられ額には
汗が浮かんでいる。鈴音さんよりはふくよかなむ・・・ゲフンゲフン、引き締まった腰と腹に刺さった剣・・・・剣!?
「アイヤーソレイタスギルアルネー」
思わずなんちゃって中国人になってしまった。
「だ・・・誰?誰かいるの・・・?」
エルフさんが苦しげに問いかけてきた。
「お?言葉が通じる・・・」
『告 この世界の知識を得たことで言語は認識できます。』
中々いいタイミングでぶっこんでくるね・・・叡智の書さん・・・
「俺は魂っていうしがない魂だけど、ここを脱出する方法を探してて
何か知らないですか?」
魂とか言ってる時点で怪しさ爆発ですが・・・それしか表現できないんんだもん。
「魂・・・あなた精霊じゃないの?そんな巨大な気流精霊は精霊でも大精霊並よ・・・」
あ、俺ってなにげにすごいのね?だけど生前?は彼女いなかったしな~って何故か
負のループにハマり落ち込み始めていると
「わ・・・私の名はセシル・・・セシル・レイクノルド・・・この先にある風と森を守護する国エルディアの守護騎士よ・・・」
話終えた途端、セシルは苦しそうに呻きだした。
「悪い・・・まずはその剣をなんとかしないとな。」
「なんとかって・・・」
セシルの言葉を手で制止、解析を発動させる。
*呪怨剣 グレゴール
一人の狂った剣匠が30人の乙女の血を使い鍛え上げた剣。苦しみ抜いた乙女の
憎しみが剣に宿り、この剣で傷つけられた者は30人の乙女が受けた癒えることのない苦痛を受け続ける。
「説明読むだけで胸糞悪い剣だな。叡智の書なんとかできそうか?」
『告 現在のスキルLvでは魂の浄化はできません。邪神の器内の魂を使えば可能です』
「なるほどね~Lv足りないか・・・ちょっくらLv上げしてくるから待っててねん。セシルちゃん」
「は?え?ちょっと・・・」
セシルが何か言ってるが無視して、邪神の器に飛び込む。
「なんか吸われてる吸われてる!!!!ソウルバリアー」
邪神の器の吸収をソウルバリアで防ぎながらソウルスティールを発動させる。
「待ってな。今俺を通して開放してやるからさ。ソウルスティール」
発動されると同時に次々に魂が俺の中に入ってくる。気を抜けば精神がおかしくなりそうだ・・・俺はマイエンジェル鈴音さんの笑顔を思い出しなんとかこらえ切った。
『告 聖属性魔法を取得しました。精霊魔法を取得しました。剣術、槍術、体術
投擲術、斧術、弓術、盾術を取得しました。気功法を取得しました。
魂の規定量の奪取により、魂の格が上がり天使となりました。天使となることで
精神体を取得しました。』
はい?天使とな・・・?お・・・俺は人じゃなくなったってことかな?
『告 記憶を元に精神体を形成します。』
おお?とうとう俺も人魂卒業か?ダンディな俺復活か?覚えてないけど・・・
部屋全体を埋め尽くすほどの光の中、俺の体が形成されていく。
青く絹のような髪、現世ならミスインターナショナルでグランプリがとれそうな
ほどの美しい顔、これからの成長が大いに期待できそうな身体、(胸は鈴音さんより少しちっちゃいって言っておこう)そして、そして男のシンボル息子さんが・・
ありませんでした。
「あえええええ、俺、女の子になっちゃったよ!!!!」
俺の魂の慟哭が響き渡った。
俺は、泣きながらセシルの前に降り立つ。セシルは俺を見て痛みすら忘れ恍惚の
表情で
「美の天使様・・・どうか私と妹をその御技にてお救いくださいませ」
俺は一筋の涙を溢しながら魔法を発動させる。
「えっぐ・・・彼の者達に魂の祝福を・・・聖魂回帰」
俺の中と邪怨剣の魂達が浄化され、輪廻の輪の中に加わっていく。とても荘厳で
美しい光景だった。願わくば来世は幸せになって欲しいな・・・
剣のほうは一人でにセシルから抜かれ、俺の手の中に来た。鑑定
してみると・・・
***聖剣カリーナ
呪怨剣グレゴールが浄化された際、聖女カリーナの魂が天使 魂の恩義に報いる為に剣に宿り、聖剣となった。魔に連なる者、邪なるものに対し絶大的な
効果を発揮する。
カリーナさん・・・・俺に恩義なんて感じなくてもいいのに・・・そう思っていると聖剣カリーナは嬉しそうに刀身を光らせた。
「その御技拝見させて頂きました。魂様」
セシルの言葉に、俺は苦笑いを浮かべて、回復魔法を掛けて手を貸す。
セシルと手が触れた瞬間・・・叡智の書が自重しらずのメッセージを頭に響かせた。
『告 ソウルネットワークが構築され、ソウルネットワークがLv2になりました。
下位の存在であるセシルは、天使魂の使徒になりました』
本日、これでラストになります。3日間ほど更新滞るかもしれません。