第4話 火竜討伐 獣人への説得
未だ、風邪が治らず中々本調子がでません。皆さん、体調管理をしっかりとして気をつけて下さい。
荒れ狂う火竜は、周囲に当たり散らすように、息吹を吐き散らす。復活への喜びか、封印した者に対する怒りか・・・正に怒りの炎を身に纏い大きく雄叫びを上げた。
神話級の怪物が目の前にいる。人間の頃の俺だったら、ひと睨みされただけで、恐怖で動けなくなり一瞬で殺されていただろう。だが、今は大天使の身体と知恵を授かり、同じ神話級の住人になった今、恐怖をまるで感じない。恐怖耐性でもあるんだろうか?
『 告 火竜ヴァリアントは復活したばかりというのもありますが、まだ力の封印の効力が生きていて、本来の力を発揮できていません。今なら再度封印することも
可能です。ただ、それは主がこの世界に深く関わってくることを意味します。』
そうだ。もし封印が成功すれば、俺はこの世界に深く関わっていくことになる。
未だこの世界の神達には干渉がないが、この件で何かしら、干渉してくることは予想できる。そうなれば、行動に制限がでてくるかもしれない・・・そうなれば、鈴音さんを元の世界に帰すことが大きく遅れることになるかもしれない。だが、まだ短い付き合いだが俺を慕ってくれるエルフ姉妹、文句を言いながらも俺達に付き合ってくれたり、微笑みながらサポートをしてくれる精霊達・・・俺は元の世界では心から助けたいと思える人はいなかった。それがこの世界では守りたいと思える仲間がいる。その仲間達を見捨てられる程、達観していない。
(今は逃げることを優先しよう。彼女達の為にも・・・)
俺は白猫少女に視線を移し、大きく翼を羽ばたいた。
一方、イエリス村では、セシル、セシリア姉妹が村人に囲まれ詰め寄られていた。
「お前達、エルフと人間が結託して俺達の子供達を攫っていったのはわかってるんだぞ!今更、エルフの言うことが信用できるか!なぁ、みんな!!!」
若い、虎顔の獣人が、大声でセシルに罵声を浴びせ、同調を促す。若い獣人達はそれに同調し、更に、セシル、セシリアに向かい罵声を浴びせる。
「どういうことだ?我らエルフの民が人間と結託しあなた達の子供を攫っているだと?我ら、エルディア王家はそんな事に加担するはずがない!何かの間違いではないのか?」
セシルはそう口にするが若い獣人達は最早、聞き耳を持たず、半ば暴徒と化していた。
セシルが、聖剣に手を伸ばし、セシリアが魔力を開放しようとした時、後ろに控えていた鈴音が光輝きだした。厳密に言えば、鈴音が抱きしめているコンの身体が輝きだしたのだが。その周りにはぐったりとした様子の白猫少女と四人の獣人の少女達が横たわっていた。
コンはゆっくりと目っを開け、静かに立ち上がる。そして、見た目可憐な少女が
背中から翼を出し、威嚇するように大きく拡げ、開口一番
「大の大人が女の子囲んで、ピーチクパーチクうるさく囀ってるんじゃねぇ!いいから、話を聞きやがれ!!!」
辺りが一瞬にして静まり返った。見た目、可憐すぎる少女から発せられるヤクザまがいの言葉、その身体から発せられる神秘性と威圧感。獣人達は知らない間に膝を折り祈るような態勢を取っていた。
「よし、これで落ち着いて治療できる。この五人はこの村の仲間達だろう?森を抜けた山脈の麓にある洞窟内で黒装束の者達と行動していた。そこで火竜の封印が破壊され、火竜が復活したというわけだ。詳しい話は治療してからだな。」
獣人達は静かに頷き、俺は魔法を発動させる。
「聖母の胎内にいるように、癒され眠れ。聖母の愛」
光が映し出す、聖母の鏡像から暖かな光が出て、獣人娘達を包み込む。先ほどまで苦しく歪んでいた顔が今、は穏やかな寝息を立てている。
「この術発動中は動けんから、このまま話を続けるぞ。彼女達は多分操られていたんだと思う。聖母の愛は精神系の異常にも効果があるし、瘴気による状態異常にも効果があるから安心しろ。俺は見たとおり、天使だ。だが
この世界の天使とはちょっと違う。火竜は俺が、再度封印するから安心して欲しい。それと、この件の関係者には大体の目星を掴んでいるが情報が足りない。
一つ頼まれてくれないか?エルディアで情報収集して欲しい。それが見返りだ。」
俺はそれだけ、告げると獣人達の答えを待った。交渉は簡潔に、これは元の世界で
三八年培った処世術だ。
すると、白い犬の獣人が前に出てきて、話し始めた。
「天使様、村の民を助けて頂いて、ありがとうございます。私はこの村の村長をと務めさせて頂いてる者です。火竜が復活すれば、この世界は、破滅に進んでいくでしょう。火竜に対してお考えがあることでしょう?黒装束というのが今回の黒幕ということですが・・・」
俺は言葉を遮り話をする。
「黒装束の者に、俺の羽をつけてある。今、そいつはエルディアにいるのは確かだ。そいつを探れば、誘拐された子とか色々とわかると思うんだ。」
「それに、首都に行くのは俺の、信頼する使徒に、何名か借りたい。できれば潜入とか工作に慣れているのがいい。他の者は、村の警備を厳重にしてもらうのと、最悪は村から避難してもらうからそのつもりで動いてくれ。」
「神託承りました。天使様」
そんな大したこのじゃないんだけどなぁと思いながら、村長にこの世界に関わると決めたことを行動に移すべく、目的の場所を聞いた。
「村長さん、この村に光の女神の教会があったら教えてもらいたいのだが。」