第2話 エルディア国の闇と、守護天使の不在
本日2度目の投稿です。よろしくお願いします。
俺は、念入りに血を拭き取り部屋を綺麗にした。どうやら、この部屋は二人部屋だったらしく、ベッドが二つしかない。苦肉の策として、エルフ姉妹を一つのベッドに収め、鈴音さんを一人ベッドに寝かした。
三人とも幸せそうな寝顔だ。
まずは、状況把握が優先だよね。俺はまだ宿屋から一歩も外に出ていない。
丁度いいことに、外は夜、星が降ってきそうな満天の夜空だ。
「ディーネ、シルフィーナ。散歩がてら村見て回ろうか?」
精霊二人は、呼ばれたことに嬉しそうに返事をすると俺の傍らに姿を現した。
『ウフフ。お供致しますわ。コン様』
『あんたが寂しそうだからしかたがなく付いていって上げるんだからね』
ディーネはウフフ調のお姉様言葉、シルフィーナは・・・ツンデレ?ツンしかでてないような気がするが・・・で口調は決定したのだろう。火属性や、土属性とかはどうなるんだろうな?そんなくだらないことを考えながら、人外三人組は夜空へ飛翔した。
イエリスの村の上空に、俺達はいる。村の北側を森に囲まれ(後で聞いた話だがエルリカの森というそうだ)村の南側には街道が伸び、その先には首都エルディアがある。村の東西にも街道が伸び、東にいけば、ドワーフの国、西に行けば大きな山脈があってその先には人族の国があるそうだ。
俺の頭の中にある、聖書エテ公でもわかる大天使の仕事・・・・(悪意をフンダンに感じる本だ)によると、エルディアを守護する天使はアリエルと言って、エルディアを魔法大国に導いた格のある天使だそうだ。それがおかしいことに、天使の気配がしない・・・大天使になって、気配察知は格段にあがっているのだが?
『 告 主の言うとおり天使アリエルの存在を確認できません。気配の残滓のようなものは、首都エルディアの方角から微かに感じますが。』
存在を確認できないとは、どういうことだろう?天界に帰ったとかそいうことではないよね?
『 告 その通りです。考えられるのは消滅、もしくは封印・・・最悪の事態としては堕天化が考えられます』
うわぁ、なんだか怪しさ満点な展開になりそうだな~と思いながら、ディーネとシルフィーナに指示を出す。
「ディーネは村の水質を調べてくれるかい?シルフィーナは風に何か異物が含まれてないか調べておくれ。俺は村人の状態を見てくる。」
ディーネとシルフィーナは頷きながら俺達は散開する。
村の北側にある大きな二階屋の窓から室内に侵入する。個室なのだろうか?6畳程の部屋に、木製のベッドと、簡素な造りの机が一つだけある。ベッドの上には、
年の頃14~15歳くらいだろうか?少女が眠っていた。
少女に視線を移す。健康的な足、引き締まった身体、まだ幼さが残る顔。なのに凶暴的に自己主張する胸・・・・この世界は下着姿で寝るのが一般的なの?と疑問がムクムクと沸いてくるが、他にムクムクするものが無くなったためそうそうに疑問を打ち消した。
改めて、頭部に目をやると、頭の上に犬の耳のようなものがあり、今は元気なくペタンと倒れている。お尻を見ればフッサフサの尻尾がこれも元気なく垂れていた。
「ううぅ・・・・ラ・・・リ・・・めんね。リ・・・ラ・・・」
悪い夢でも見ているのだろうか?寝汗をびっしょりとかき、魘されている。
(ディーネ、シルフィーナ、何かわかったことはあるか?)
(風の中に小さな魔蟲が、潜んでいたわ。数え切れない数の魔蟲がここら一帯にいるわ。山の方から来てるみたいだけど・・・)
(村の水源である井戸から、高密度の瘴気が検出されましたわ。井戸の中というよりは水源が汚染されてる感じですわね。)
瘴気ということは、魔族繋がりと考えてよさそうだが、子供がいないというのは、聞き込みしないといけないよな。
それよりも、まずは空気の汚染と、水の汚染をどうにかしなくちゃだな。
「範囲・・・村全体・・・座標固定。魔法陣展開、聖域結界
『 告 数多いる水の精霊の中でも美しき女王よ。この地にいでて、聖なる水の恵みを・・・・召喚、ネレウス』
俺は上空に、聖域結界をはり、村全体を包み込む。叡智の書が水の聖霊ネレウスを召喚し井戸を浄化していく。
再び、少女を見やると穏やかな寝息をたてていた。その寝顔に微笑みながら俺は呟いた。
「おやすみ。今度こそいい夢を・・・」