第 9話 懺悔と許し
俺は、膝枕した状態で、改めてセシリアの顔を見る。戦闘中は、アモンに憑依されてるのもあって正直、怖かった。なんでって言われると困ってしまうが、そのね・・・
目つきがね・・・鋭すぎたのよ・・・目は口程に語るって昔の人は言ったけど、まさにその通り・・・目がね・・・殺す!!!!って言ってたのよ・・・
それが、今は可愛らしいお顔で眠ってらっしゃる・・・髪はエメラルドに輝く綺麗な髪を肩まで伸ばした感じで、綺麗に揃っている。目は戦闘のときとは違い、鋭さはなく今は瞑ってはいるが目尻が下がっていて可愛らしい。姉のセシルは美しい系に対して妹は可愛い系ですか・・・最強ですな!この世界にメガネがあったら掛けさせて
このセリフを言わしたい。
「もう・・・・魂君てば、今日だけだぞ・・・」
「デユフフフ・・・夢が広がりますな・・・」
「あ・・・主様、変な笑い声をあげて如何されましたか?」
怪訝な顔でセシルが俺に聞いてきたが、なんでもないと素っ気なく答えてしまった。
心の声を聞かれるのは幾つになっても恥ずかしいものですよね。皆さん。
気まずさを払拭させるため、俺の周りにみんなを呼び寄せ、魔力を集中させる。
「聖所の結界回復の円環」
半径5m程の白く輝く魔法陣が現れ、結界と回復魔法が発動する。
先ほどの戦いで大きい怪我自体は俺を含めてみんなないが、天使の武器の力が強すぎたのだろう。みんな疲労困憊であった。
「俺が見張りをしておくから、みんなは充分に休んで回復させておくように。これは主としての命令です。」
セシルが何かを言い出す前に釘を刺しておく。この子は自分のことは二の次にしちゃうからな・・・
渋々と言った感じで、セシルは俺の右隣に、申し訳なさそうな感じで鈴音さんが左隣に座り俺の両肩に頭を預ける。シルフィーナはさも当然のように俺の頭の上に座った。何この状態?これ、なんて陣形?俺はどうしていいかわからず、石像のように身体を動かすことができなくなった・・・しばらくの間。
「うぅ~ん・・・」
可愛らしい声が聞こえ、太ももに乗った頭が身動ぎする。俺はそっと、おでこに張り付いた前髪をかき分け、優しい声で語りかけた。
「おはよう。気分はどうかな?身体に異常はかんじないかい?」
私の頭を優しく撫でる手が気持ちいい。この手はなんと優しく暖かいのだろう。ひと撫で事に私の心を溶かしていくようだ。悪魔に憑依され、愛する姉を、私を慕い守ろうとした部下を私は攻撃し、姉を傷つけ、部下を痛ぶり死んだ部下の遺体を辱めた。憑依されている時、私は自分の身体の中で意識があった。アモンという悪魔が言うには私の魂を穢す楽しいショーの為だと言った。今でも死んだ時の部下達の絶望の顔が心に焼き付いている。私は次第に考えることを放棄した・・・
光から私を呼ぶ声がする・・・いつの間にか、悪魔の嫌な気配がなくなっていた。けど、私は起きたくない、話したくない、生きたくない・・・私はそれだけの事をしたのだ。私が生きていいはずがない・・・
けど、光は私を放っておいてくれず、私に語りかけてくる。
『うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
私は消えてなくなりたいの!!!!!!!放っておいてよ!!!!」
私は癇癪を起こした子供のように光に向って怒鳴り散らした。
すると、今まで優しく暖かい感じがした光から、凍てつき魂をも凍らせる波動が放たれた。
(自分の殻に閉じこもり逃げ続けるなら、それでもいい。だけど、お前さんの部下は無駄死にだな。こんなくだらない上司の為に死ぬ部下・・・部下は見る目がなかったな。)
その言葉を聞いた瞬間、私の魂に火が付いた。
『取り消せ!!!!!私の事をなんて言おうが構わない!!!!けど、部下のことを愚弄することだけは絶対に許さない!!!!今すぐ取り消せ!!!!』
私は水精霊を召喚し、私が持ちうる最強の魔法を光に撃ち放つ。
『我が敵を穿て!ハイドロプレッシャー!!!!』
魔法の水流は、一直線に光へと向っていく・・・が光の目の前で水流は霧散した。
更に、光は私の水精霊に向かい何かを言うと、
水精霊は掻き消えた。
私が驚いて光を見やると、光は無詠唱で水精霊を召喚していた。
(お?意外とできるもんだな・・・あっと、水精霊だから、君の名前はディーネね。ディーネ、悪いけどあの子、懲らしめてくれる?)
光が召喚された水精霊に話終えると、水精霊は光に包まれ始め、光が止むと、そこには美しい女神のような女性が姿を現した。
『あらあら~力が溢れてきますわ~。主様の神託をこのディーネ、実行致しますわ~』
『主様の敵を穿て・・・サウザウンドプレッシャー・・・』
私の全方位を100個もの水球が取り囲む。私の最強の攻撃魔法をいとも簡単に100個も一度に作り出し、しかも明確な意思をもって私と相対している。あれは・・・本当に水精霊なのだろうか?あれは、もしかしたら水の精霊王・・・私は死を覚悟して目を閉じた。
(おいおい・・・あれだけ、タンカきっておいて、かなわないとなると諦めるのかよ?本当に浮かばれねぇな・・・・)
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが弾けた。
『うわぁああああああああ』
気が付くと、私は素手で光に殴りかかっていた。
ただ、がむしゃらに、光を殴り続ける。手の骨が砕け、肉に食い込もうとも構わず・・・・
(そうだ・・・歩みを止めずがむしゃらに動け・・・お前が胸を張って部下達に
侘びと感謝できるように・・・もし、お前が歩みを止めそうになるなら、俺が発破かけてやるさ・・・・)
殴り続ける私の頭の中に声が響く・・・・声はまた優しい声に戻っていた。
(俺は、合格だと思うけど・・・みんなはどうだい?)
その声に、|私は殴るのをやめ、周りを見渡す。100個もの水球はいつの間にか消え、代わりに私の部下達がいた。
『やっと、私達の声に耳を傾けてくれましたね。セシリア様』
『話しかけていたのに、聞いてくださらないんですもん』
『でもやっと、聞いて頂けた・・・姫様はお優しすぎるからきっと、私達の死を
ご自分の罪と思われる・・・それだけが私達の心残りでした・・・』
もう会えないと思っていた仲間・・・絶対に恨まれていると思っていた仲間は皆が
涙を流しながら笑顔で話しかけてくれた。
|私《セシリアは声をあげて泣いた・・・恥も何かも捨てて・・・
『姫様・・・私達の為にこれ以上お心を傷めないでください。願わくば姫様のお心の安寧があらんことをお祈りしております。』
『姫様・・・・いえ、使徒セシリア。魂様とともに、世界に平和を・・・』
『使徒セシリア・・・私達はずっと見守っています・・・』
部下達の魂は微笑みながら、消えていった・・・
『私は許されたのかな?・・・』
光に向って、聞いてみると光は美少女の姿に変わった。背中の翼を広げながら
(大変なこと、託されちゃったな・・・な~に、心配すんな。俺もお前さんの隣で支えてやっから。)
(今は、何も考えずにおやすみ。)
美少女天使は、私を抱きしめ、翼で覆った。まるで愛子を抱く母親のように・・・私は不変の忠誠と愛を誓い再び目を閉じるのであった。
セシリアさんの懺悔の回です。普通に仲間になっただけじゃ面白くないなと、今回掘り下げて心の葛藤を書いてみましたがいかがでしたでしょうか?拙い文章で話が長くなってしまった・・・・セシリアさんはこれから色んな意味で化ける予定です。