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俺の名は、牙原 隆。
いたって普通の男子高校生。
家族構成は、父と母。
だが、父さんも母さんもいない。
父さんは俺が7歳の時に行方不明になり母さんはまもなく病死した。
俺の知っている母さんは、弱々しくいつも寝ている…というイメージしかなかった。
父さんはそんな母さんをほっておいていつも白衣を着て何かを調べたりしている雰囲気でまったく家庭をかえりみないイメージだった。
だけど、俺が7歳になる前に一度父さんに呼ばれ手術台の上で寝転び何かを注射された事を覚えている。
10年はたったが、その記憶だけは鮮明だった…。
それにその傷だ…。
俺の腕には、少し大きな亀裂がある。
触れても痛くはないがひび割れている様な膨張している様な感じである。
その亀裂が大きくなりつつあるが特に気にもしなかった、あんな事がなければ…。
『やっ。おはよ。隆君。今日もギリギリ寝かい?この時間じゃトーストだけだけど良いかい?』
その声は、ゆいの父親である君彦さん…君彦おじさんだ。
何でも父さんとは古い仲間で母さんが死に父さんが行方不明になった後に俺を我が子同然に育ててくれている。
『…すみません。最近、ちょっと寝れなくて…』
俺は白々しい嘘をついた。