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校庭の片隅で東洋人らしき女が隆を見ていた。
ポケットから、小さな種子を出し土に植えつけ発芽を待っていた。
『もうすぐ…ね。ふふふ…。』とつぶやいた。
俺の中に眠る存在は、既に校庭の変化を察していた様だが、その時の俺は気がつくはずもなかった。
体育教師の関先生も無論、気がつくはずがなく点呼をしていた。
『え〜…今日の授業は、男子は来週体力測定があるから、その予行練習だ。予行と言ってもやる事は一緒だから気を抜くなよ!』
男子全員で大きな声を出し『はいっ!』と返事した。
関先生は、ほとんどの生徒から慕われている先生だ。
もちろん、俺自身も慕っている。
『関先生〜!女子は何をすればいいですか〜?』聴いたのは、何とゆいだった。
『そうだなぁ。女子はまだ体力測定の日まであるから…予行練習しても仕方ないしな…。じゃあ、やりたい事は人それぞれだから、見学以外は何やってもいいぞ』
関先生の良いところは、そこだった。
他の教師から何を言われてもあれこれと強制させない所だった。
土がボコッ、ボコッ…!!と隆起する。
音を立てて謎の女が植えた物が発芽した。
『ふふふ…。あと少し…』
不敵な笑みを浮かべていた。